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【社会実装】JR西日本グループ様のコンタクトセンター業務にELYZAの言語生成AIが導入されました

株式会社JR西日本カスタマーリレーションズ様(以下JWCR様)のコンタクトセンターにおける通話内容要約業務に、マイクロソフト社のAzure OpenAI GPTシリーズをベースとしてELYZAが開発した言語生成AIが導入されました。GPTシリーズを組織的に実用化した国内では希少な事例となります。ぜひご一読ください。

本note記事はこちらのプレスリリースと同内容です。
JR西日本カスタマーリレーションズとLLM DXパートナー ELYZA、通話内容要約業務に言語生成AIを導入(2023年9月21日)
https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000035.000047565.html


サマリー

  • 2023年5~8月、JWCR様の通話内容要約業務で実証実験を実施

  • 現場活用に足る生成精度・業務短縮効果が確認できたため、2023年9月19日より実際の電話応対業務で言語生成AI活用が開始された

  • 今回の言語生成AIは、基盤にGPTシリーズを援用。本AIサービスは商品化も視野に入れて、今後も開発・検討を進めていく

JWCR様と共同でLLM DXプロジェクトを推進

2022年より、ELYZAはJWCR様の顧客対応業務の品質向上・業務負荷削減を目指し、システム及び業務フローのあり方を言語生成AI起点で一から見直すLLM DXのプロジェクトを実施していました。
端緒として、2023年3月にはメール問い合わせの内容要約業務において言語生成AIの提供を開始していました。今回の「通話内容要約業務」への言語生成AI導入も、本プロジェクトの一部となっています。

編集注:2023年3月16日のプレスリリースはこちら。
言語AIのELYZA、JR西日本グループのDXを推進。”二刀流”でGPT/国産AIを使い分け多領域で高速DX推進。顧客対応業務の半自動化に成功。
https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000026.000047565.html

今回の対象業務は、電話問い合わせの通話内容要約業務

JWCR様の案内コンタクトセンターには月間で約7万件の電話問い合わせを受け付けており、お客様へのスムーズで正確な応対やサービス改善に結びつけるためにその応対記録を全てテキスト化して保存しています。
その際、対話ログのままのテキストデータは情報を共有するには非効率なため、オペレーターによる要約処理を行ったうえで保存していました。一方で、この要約処理自体に非常な労力がかかっていたほか、オペレーターによる要約品質のばらつきも存在する状況でした。 
この要約の素案作成に言語生成AIを活用することで、要約業務の品質向上と業務負荷削減を目指したのが、今回の取り組みの概要となります。

構築したAIサービスの詳細

本AIサービスの導入以前は、ご意見対応の場合、オペレーターが電話応対後に応対結果を要約し、スーパーバイザーが実応対音声や音声認識により書き起こされたテキストを確認してダブルチェックする運用で応対記録の保存を行っていました。
今回、電話要約AIを搭載するアプリケーションを業務に導入したことで、オペレーターが電話応対後に音声認識により書き起こされたテキストを貼り付けさえすれば、自動で要約結果が出力される状態となりました。これにより、オペレーター及びスーパーバイザーにおける要約作成・チェック負荷の軽減、及び要約品質の均質化によるVOC(顧客の声)分析への効果を見込んでいます。

図1:AIサービス導入前後の業務フローの変化

図2:電話要約AIの利用画面

※内容はサンプルです

実証実験の結果

実証実験ではAIの精度検証のほか、電話要約AIの利用有無による後処理時間の比較を行いました。
結果、後処理時間が長い3つの業務領域 (お問い合わせ、ご意見・ご要望、介助申込) に対し、電話要約AIを利用すると後処理時間(※)が18%〜54%効率化できたことがわかりました。この評価を受け、JWCR様は正式に本AIサービスを通話内容要約業務に導入することを決定しました。
※後処理時間:要約作成以外の事後処理時間も含む、オペレーターにかかる応対後処理時間

図3:電話要約AIの実証実験結果

実際のオペレーターの声(一部抜粋)

実証実験に携わったオペレーターの定性評価を一部抜粋し掲載します。
・商品、制度などの簡単なものはほとんど手直しなしで反映されているので助かります
・とりとめのない内容を物語のようにまとめてくれた生成結果があった
・AIを育てていくのが楽しい
・複数の内容を抽出して日本語として上手くまとめていることには感心した

取り組み成功の要点

今回の取り組みはJWCRとELYZA間の強固な連携と工夫により実現しました。要点は以下のとおりです。

AIサービス自体の工夫

(1)基盤にGPTシリーズを選定・援用
ELYZAではお客様からいただくLLM活用テーマを経済性・経営課題や業務との親和性・実現性等観点で見極めを行い、その時点での最先端LLMモデルや自社開発モデルなど幅広く選択肢に入れながら、最適な技術選定を行っています。既存データ総量や解くべきタスクの性質を加味した結果、今回は基盤となる大規模言語モデルにGPTシリーズを援用することとしました。なお、問い合わせ内容によってGPT-3.5とGPT-4を使い分けることで、精度を大きく毀損することなくコスト最適化も図っています。

(2)入力データの前処理・後処理の設計
要約処理の前に音声データからフィラー(不要語)除去などを行い、LLMが要約しやすい形式にデータを整える前処理システムや、要約出力後にJWCRの表現や表記のルールにしたがって記載を修正するような後処理システムを一気通貫して設計しました。

体験設計・運用の工夫

(3)現場主義で密に情報や知見を連携
ELYZAのコンサルタント・機械学習エンジニアがJWCR様の現場に赴き、実業務を直接見学しつつ、オペレーターとの対話やフィードバックの回収を行いました。かたやJWCR様もELYZAまで赴き、多くのディスカッションを通じてAI活用の勘所についてインプットを進めていただきました。密な連携を通じて、ELYZAは現場の課題感や理想のあり方の解像度が高まり、実用に足るAIサービスや運用フローの構築をスピーディに行えたほか、JWCR様はAIサービスを活用するための全社的な知見の獲得を一気に進めることに成功しました。

(4)「言語生成AI起点」で運用から変更
AIサービスで要約することを前提に、電話応対フローの一部を組織的に変更しました。AIがひとや業務に合わせるだけでなく、ひとや業務からAIに寄り添うことで、精度や成果の向上に大きく貢献しました。

今後の展開について

JWCR様より

本AIサービスについて、2023年9月19日より利用を開始しております。JWCRは中期経営計画において、戦略拠点としてお客様センターのありたい姿を掲げ、コンタクトチャネルの拡充、オペレーション支援、VOC分析の深度化を進め、顧客体験の向上を目指しております。これらの実現のためには言語生成AIを活用した業務の高度化が不可欠であり、本取組みはそのスタートと位置付けています。
今後、コンタクトセンターの標準的な業務フローについて言語生成AIによる開発を行い、先端技術によるDX化を加速させたいと考えています。また、言語生成AIによる本取組みや今後の開発は、コンタクトセンター業界や他の領域についても大きく貢献できるものと確信しており、ELYZAとの協業による商品化も視野におきながら社会へ貢献してまいりたいと考えています。

ELYZAより

GPTの登場以降、言語生成AIの注目度は高まり続けています。一方で、各社が研究開発を通じて模索を進めつつも、実業務への実装というかたちでの企業活用事例は、まだまだ少ない状況です。ELYZAは、言語生成AIの社会実装を推し進める専門家集団として、この技術の価値を社会が実感し、活用可能性が追求され続ける市場に成長させる責務があると自負しています。
そのためには、個人利用だけではなく、企業という集団活動のなかに言語生成AIを位置づけ、実現場で多くの方に活用いただける状況を増やす必要があると考えており、今回のJWCR様との取り組みもその一端となります。 ELYZAは今後も、各社が解決を諦めていた未踏課題に対し、最先端技術とビジネス実装力をもって取り組み、実益のあるかたちで社会実装を行ってまいります。

株式会社JR西日本カスタマーリレーションズ
代表取締役社長 堤 恵理子氏 コメント

JR西日本グループをご利用いただくお客様との重要な接点であるコンタクトセンターは、お客様の問題解決だけでなく、「お客様の声」の分析など任される業務は複雑多様です。さらに、駅係員の無人化など新しい駅サービス・運営体制への移行に伴い、コンタクトセンターは益々重要な役割を果たすことになりましたが、複雑化するサービス内容、オペレーターの採用難などの課題に直面しています。
この変化に適応するために、私たちはELYZA社と提携し、言語生成AIを導入して業務の省力化に取り組んで参りました。最初は要約業務から始めるスモールスタートですが、今後もAIを活用できる領域を検討し、AIのサポートによる効率的な業務運営と、人間らしいお客様への親切で丁寧な対応の両立を目指していきます。また、AIによって要約されたお客様からの貴重なご意見を分析し、サービスの改善につなげ、顧客体験の向上に貢献したいと考えています。

株式会社ELYZA 代表取締役 曽根岡 侑也 コメント

LLMを業務で本格的に使うには、LLM・情報処理フロー・UI/UXと各レイヤーごとに最適化を行うことが肝要ですが、今回はまさに各レイヤーをバランスよく改善することができた事例です。JWCR社は「言語生成AI起点」での業務内容・業務フロー変革を本格的に進めている日本でも数少ない先進企業であり、今回の成果はJWCR様・ELYZA両社の強みを最大限発揮し得られた賜物です。ELYZAでは引き続き、コンタクトセンターをはじめとしたホワイトカラー業務のDXに向け、言語生成AIの取り組みを進めてまいります。

ここまで読んでいただき、ありがとうございました。
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