時の鐘を打つ人ジャケット

時の鐘を打つ人

コミックマーケット92で頒布した4曲入りEPだ。お立ち寄りいただいた皆様、お買い上げいただいた皆様、ありがとうございました。

このEPは、非常に暗く重い歌詞になってしまい、あまり受けは良くないかもしれない、と少しだけ思っている。もともとそういう傾向にはあるのだけれど、いつもはメタファーのオブラートに包むように努力はしている。ただ今回は2つの時期的な物事が影響していたらしいと感じる。

ひとつは春先に見た映画。劇場版 相棒。もうひとつは夏コミの開催時期。制作期間中にこのふたつに共通して、第二次大戦のことが少なからずちらついていた。歌詞を書きながらなるべく表に出さないように相棒の映画のテーマをどうやって表現するか、ということに気を遣った。

1曲め、Northtrilia pt.2 。コードウェイナー・スミスの人類補完機構シリーズにインスパイアされている。pt.1 は前に作ったインストゥルメンタルだったが、当時は続きを作るつもりでタイトルを適当につけたために、pt.2をどうしようと思っていた。今回変拍子のリフで作った曲に人類補完機構にインスパイアされた歌詞が乗ったのでpt.2とした。人のあるべき姿とは?ということがテーマになっている。

2曲め、時の鐘を打つ人。デモはかなりに昔に作ってあって、ようやく日の目を見た。イメージとしては平沢進の白虎野とかラジアントヒストリアとかそのあたりのことがベースになっていると思われる。過去と現在と未来と、その分岐。間奏が長いが、転調を続けて一周させるという実験でもある。ポップスの皮を被ったプログレッシヴロックと思っていただいて差し支えない。

3曲め、極夜。白夜の対義語で常に夜の時期のこと。闇の時期には恐怖や後悔、悲しみが記憶にあっても、光のある場所に出ていくとその時のことをきれいに忘れてしまう。個人だけではなく集団や文化として絶対に引き継いでいかなければいけない記憶というものがある。歌詞についてはミームという言葉がうまく使えた。曲もdelay lama という坊主の声をシミュレートした坊歌ロイドがうまくはまったと思う。

4曲め、星月夜。最後くらいは聞きやすい曲を、ということで、シンプルなアレンジとシンプルな歌詞を目指した。夏なので夜の浜辺で…みたいなイメージだったのだが、スピリチュアルな感じになった。PINKの人体星月夜IIとYMOのLotus Loveがイメージのベースか。ギターソロはいつもの感じで。

これを書いているのは日本の終戦の日。その前には広島と長崎に原爆が落とされた日があった。ウィキペディアによると戦争状態が終結したのはもう少し後のようだけれど、玉音放送は8月15日にされたので、この日を区切りとして終戦と見てもいいかと。

そういう忘れてはいけないことをコミケの熱に浮かされながらも、年に一度は思い出すことが、戦争を直接経験していない我々の役目なのではないか、とそう感じる。


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