BYDのBEVについて、イベントで聞いてみたことメモ

BYDへの質問と回答メモ
11/12(日) モーターファンフェスタにて
裏取りや確認ができていないのと、記憶で書いているので、個人の備忘メモと思ってください。間違ってるところがあったら、コメントで教えてね。

Q.バッテリー重量について
リン酸鉄系リチウムイオン電池(以下:リン酸鉄系)は三元系リチウムイオン電池(以下:三元系)に比べて重いという欠点がある。
CTP(セルトゥパック)、CTB(セルトゥボディ)での空間効率で、エネルギー密度が従来のモジュール型を採用した三元系と同等になったというが、重量に対するエネルギー効率で考えるとどうなるか。
また、車両重量は他社と差が無いように見えるが、バッテリー重量の差をボディ構造で吸収しているようなことはあるのか。

A.セルの重量を、回路の効率化で解消
確かに、リン酸鉄系は、セル本体が三元系より重くなる。一方、モジュール型では各モジュールにそれぞれ搭載されていた保護回路や冷却機構を、CTPの採用で一か所にまとめて配置することができた。回路系の部品点数が減ったことで、バッテリー全体での重量はかなり軽量化できている。
三元系バッテリーモジュールを採用した同スペックのBEV(バッテリーEV)より軽量化しており、しなやかで乗り心地の良いサスペンションを選択できた。

Q.中国他社との技術差
中国国内の同業他社である吉利汽車、長城汽車では、CTPやCTBの技術に、リン酸鉄に加えて、三元系やLMFP(リン酸マンガン鉄リチウムイオンバッテリー)も組み合わせている。
安全性を重視したリン酸鉄の選択意図は解るが、車両のスペックで差が出るのは必至。商品力でどう勝負していくのか。

A.総合的にベターな方法を採用していると自負
実は日本に入っていないが、BYDでもコバルト系のブレードバッテリーは研究が進んでいる。
ただし、安全性や、原料となるレアメタルの問題など、現状では総合的にリン酸鉄がベターな選択と考えている。

Q.バッテリーリサイクルへの見解
CTPやCTBのデメリットは、リサイクル性がモジュール型に比べて低い点にある。
日経新聞の記事で、BYDシールの分解が他社に比べて分解が難しく、リサイクル性で他社に劣るとの見解がしめされていた。中長期的な環境性能・持続性を考える上で、バッテリーリサイクルについての見解を聞きたい。

A.課題として認識しており、すでに対応を進めている
まさにその点は、課題として研究を進めている。
車両の分解ノウハウは自社で保有しており、回収ができればブレードバッテリー1本単位でのリサイクルも可能。
リサイクルスキームの確立、どう回収していくかといった点は現在取り組んでいる課題だ。

(※)余談だが、同会場で展示していたトヨタのBEV・BZ4Xは、法人向けリースとカーサブスクのみで展開し、バッテリーの回収・リサイクル体制のテストを行っていた。リサイクルスキームの見通しが立ったので、秋から一般販売を開始する。

Q.バッテリー交換式BEVの未来
確かにCTP、CTBは、単体でのエネルギー密度は高くなる。BEVはCTBのような単体での高性能化に進むだろうか。
モジュール型を共通化し、バッテリー自体を交換していくシステムが主流になる未来も、ありうると思うか。その場合、CTPのような設計は、むしろ不利にならないか。

A.行政を巻き込んだインフラ完備が課題として大きすぎる
確かに、CTBは、バッテリーパックを交換するような方式を採用するのは難しい。ただ、バッテリーパックの交換はインフラ面での課題が多く、特に行政の範疇になってしまう。一企業の方針としては考えにくい。

その他:
全個体電池が実用化されれば状況は大きく変わるだろう、という事は繰り返しおっしゃっていました。

所感。

まず、不躾な質問にも丁寧にご対応いただいたBYD説明員の方、ありがとうございました。
モータースポーツイベントの出展ブースで、ここまで詳しく回答してくれたのは嬉しい驚きでした。これだけ技術・経営方針についての知識を持った人材をイベント会場に配備しているのは、BYDの日本進出の本気度を感じ、素直に好感を持ちました。
リサイクルの方法で、中国では「とりあえずやってみてから考える」、日本では「全部考えつくしてからやってみる」という方針の違いが明確に出たのは面白かったです。
全個体電池をゲームチェンジャーととらえているのは日本も中国も変わらず。客観的に見て、BEVの技術に関しては、日本企業は、中国企業に大きく溝をあけられています。今後、全個体電池が日本企業の切り札になるのは間違いないでしょう。
業界からの注目度の高さを感じました。

用語解説メモ
●BEV
バッテリー電気自動車。少し前はピュアEVとか呼んでたよね?
ガソリンエンジンを積んでるけど電気だけでも走れるプラグインハイブリッド(PHV)や、ガソリンエンジンで発電して電池で走るシリーズハイブリッドと区別するために、トヨタが言い出した。(日産がシリーズハイブリッドを「新しいEV」とか言い出したせいかな?)

●セル
電池の最小単位。

●モジュール
セルを複数まとめて、出力を安定させたもの。

●パック
モジュールをたくさん並べたバッテリーユニットの塊

●CTP、CTB(CTS):セルtoパック、セルtoボディ(セルtoシャシー)
モジュールを中継せず、パックや車のボディそのものにセルを詰め込んだ構造。中華系EVで多く採用されているほか、フォルクスワーゲンやテスラも一部採用している。空間効率が高いが、設計が難しく、バッテリーのリサイクル性が下がるといった課題も。

●リン酸鉄系リチウムイオンバッテリー
比較的古い技術のリチウムイオンバッテリー。発火リスクは低く、比較的安全とされており、劣化も少ない。ただし発電効率が低く、重量もめちゃくちゃ重い。

●三元系リチウムイオンバッテリー
レアメタルのコバルトを使用する。発電効率が高く、現状ほとんどのBEVに採用されている。異常発熱や発火の危険がリン酸鉄系より高く、保護回路や冷却機構がより重要になってくる。

●LMFP(リン酸マンガン鉄系リチウムイオンバッテリー)
リン酸鉄系の改良版で、三元系に匹敵する発電効率と、リン酸鉄系並みの低コストを実現したとされる。

●全個体電池
液漏れや発熱の危険が少なく、軽量で、高速充電ができ、劣化もしない、今までのリチウムイオンバッテリーの欠点を全て補う夢の電池として期待されている。2027年の実用化を目指してトヨタが開発中。

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