Tea Cafeの専門店「ゴンチャ」
コーヒー好きが楽しめるカフェは数多とあるが、コーヒーを飲めない人も楽しめるカフェがある。
台湾発祥のTea Cafe専門店「ゴンチャ(Gong Cha)」だ。
熱烈なファンが増えているゴンチャ。
人気の秘密は「ゴンチャファン」をつくる5つの戦略と、その立役者の存在にあった。
・ゴンチャを利用したことがない
・Tea Cafeで飲めるドリンクにはどんなものがあるか知りたい
・私はコーヒー派だから、Tea Cafeはあまり利用しないかも…
そんな方に知ってほしい「ゴンチャの魅力」を書きました。
熱烈な「ゴンチャファン」をつくる5つの戦略
まずは、5つの戦略からみていく。
①火を使わないオペレーション
ゴンチャカフェのオペレーションは、電気が基本だ。
ドーナツなどのフードメニューもあるが、火は使わない。
駅構内や地下では、火災の恐れから火を使うカフェの出店を制限している地域があり、出店を断念せざるをえないケースがある。
電気でのオペレーションが基本のゴンチャは、火を使うカフェに比べ、それだけ出店可能なエリアの幅が広がるのだ。
②「Tea専門店」へ舵を切った方針の転換
もともとコーヒーやカフェオレも提供していたゴンチャだが、2024年4月にほとんどの店舗でコーヒーの提供をやめた。
やめると売上が下がるのでは…という心配をよそに、1店舗あたりの売上はアップしているという。
日本には、昔からお茶を楽しむ文化があった。
家庭で飲む緑茶や夏場に活躍する麦茶、外食した店で出てくるほうじ茶など、さまざまなお茶が私たちの生活に溶け込んでいる。
お茶を楽しむ土台がある日本では、お茶を楽しめる「Tea Cafe」が受け入れられるのに、ハードルはなさそうだ。
③豊富なカスタマイズの組み合わせ
ゴンチャでは、100gで7,000円の高級台湾茶である「阿里山ウーロン」や発酵度の高いブラックティーなどが楽しめる。
ストレートだけでなく黒糖シロップで甘みを加えたり、フルーツソースをミックスしたフルーツティーを楽しんだりと、いろいろなカスタマイズができる。
氷の量や4種類から選べるトッピングなど、豊富なバリエーションも人気の理由だ。
季節ごとの限定商品も提供し、常連客を飽きさせない工夫もある。
④カフェでは珍しい学割
10~20代に人気のゴンチャは、学生の客も多い。
実は、ゴンチャにはカフェとしては珍しい「学割」のシステムがある。学生証を提示すると割引になるので、学生が多いのも納得だ。
⑤おしゃべり歓迎の文化
ワイワイガヤガヤしているゴンチャの店内。
それもそのはず、ゴンチャでは「おしゃべり歓迎」をうたっている。
カフェのイメージといえば、ほどよい音量でBGMが流れる比較的静かな空間だ。それゆえ、仕事や読書をしている客も多い。
そんな大人な雰囲気の店には、10代の学生は入りにくいし、入っても居心地が悪いだろう。
ゴンチャの「おしゃべり歓迎」というスタンスは、確実に若者の支持につながる理由の一つだ。
熱烈な「ゴンチャファン」を生んだ戦略の立役者
熱烈なゴンチャファンを生み出すきっかけをつくったのが、株式会社 ゴンチャ ジャパンの代表取締役社長 角田氏だ。
①モットーは「楽しむこと」
角田氏のモットーは「楽しむこと」。
ゴンチャが、楽しい時間や体験を届ける場所でありたいと願う角田氏だが、その思いの対象は、客だけにとどまらない。
②理由を説明できないルールの撤廃
以前、ゴンチャで働くスタッフの髪色には「この色からこの色まで」という制限があった。そこからはみ出した色にはできなかったのだ。
しかし、「なぜそうでなければいけないのか」明確な理由を説明できないと感じた角田氏は、そのルールを撤廃する。
その結果、スタッフが「楽しく働けること」につながっていった。
③現場の声に耳を傾ける姿勢
角田氏が現場スタッフの意見を聞こうと、店舗に足を運んだときのこと。
スタッフから「BGMが聞えない」という声があがった。
すると、角田氏はBGMのボリューム調整に対応する。
スタッフがBGMを聞きながら、より楽しく働ける環境を実現したのだ。
新商品の開発では、スタッフからアイデアを募集し、意見が採用されたアルバイトスタッフを本社に呼び試飲会を行った。
自分のアイデアが商品化され、「私が考えました」の認定バッジをつけてカウンターで接客する彼女の笑顔は、働く楽しさを物語っている。
④ゴンチャファンが働きたくなる職場づくり
楽しんで仕事ができる環境やスタッフを大事にする職場づくりは、熱意あるスタッフの採用へとつながっていく。
飲食店の人員不足が深刻だと言われる中、ゴンチャの新店舗スタッフ30人
募集のところに、なんと400人もの応募者が殺到したのである。
角田氏いわく、求人募集のサイト掲載など通常1人当たりの採用コストは
約6万円。それが、ゴンチャは1人当たり5000円ほどと、コストはわずか1/12だ。
ファンの拡大は、多くの企業が頭を抱える優秀な人材の確保につながる、それを証明してみせた。
2018年のタピオカブームから2年でブームは去り、コロナ禍でさらに
苦境に立たされた彼の取り組みが、今のゴンチャにつながっている。
やるべきは楽しめる仕事
2021年7月に国内で100店舗あったゴンチャは、2023年5月で122店舗、カンブリア宮殿の番組が放送された2024年8月には162店舗と、着実に出店のスピードを速めている。
休日には自らも泥んこになって、子どもたちと全力で遊びを楽しむ角田氏。
「どんな仕事であっても、楽しくなければやらない方がいい」
そう断言する角田社長の言葉には、説得力がある。
「楽しい時間を過ごすため」
「楽しく働くため」
その輪の中心にあるゴンチャ。
『カンブリア宮殿』を見てゴンチャの魅力や角田氏の想いを知った50代の私も、その輪に入って「ゴンチャファン」を公言したくなった。