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貿易実務検定A級について

ご無沙汰しております。
去る10月に、貿易実務検定A級を受験し、無事に合格しました。
なかなか情報の得づらい試験で(受験者数も多くなく)、勉強方法の模索に苦労したので、情報の1つとしてnoteに残せたらと思います。ご参考まで…

1.貿易実務検定A級の特徴

・全体的に記述問題が多い。
・実務における書類作成問題のウェイトが大きい(85点/200点)
・英語における英作文のウェイトが大きい(30点/150点)
・B級、C級とも共通するが、1科目ずつの足切りがあるわけではなくトータル点数で勝負。A級の合格基準は非公開だが3教科合計で6割程度と言われている(あくまで合格者による噂です、確証なし)

2.(参考)私の受験スペック

・通関士合格済(2020年)、貿易実務検定B級合格済(2017年)、TOEIC915(2019年)
・千代田区のキリスト教系大学出身、メーカーとフォワーダーの双方で合計5年ほど貿易事務経験あり。海外顧客との英語交渉、L/C開設、B/L作成、運賃計算、カーゴ代・滞船料精算など一通りはどちらかの会社で実務経験済

・本試験自己採点結果(第20回/2021年10月)※記述はざっくり採点です
 ・貿易実務:155/200
 ・マーケティング:73/100
 ・貿易英語:85/120(英作文除き)
 ⇒69.5%(英作文を0点として計算した場合)

3.勉強時間

4ヶ月間×2~3時間/日(受験回数1回)
0歳児を育てながら、毎週末注文住宅の打ち合わせに追われながら…の勉強でしたので、正直なところあまり時間がなく。子どもの昼寝中と夜寝かしつけた後に勉強しました。

4.使用した教材

貿易実務ハンドブック アドバンスト版 第6版 「貿易実務検定」A級・B級オフィシャルテキスト(日本貿易実務検定協会)
:公式が出しているテキスト。実務とマーケについて主に説明がされていて、実務で点数比率の高い貿易書類についても事例を多く収録。ただし、英語については未カバー。
サクッとわかる貿易実務(池田隆行)※テキスト・問題集別売り
:B級受験時に購入し使用していたもの。応用的な内容は書かれていないが、図解が多くわかりやすい。特にインコタームズの説明に関する章がわかりやすく、フォワーダー勤務時も何度も参照していました。
貿易実務検定® A級対策問題集〈第1版〉 準A級3回分×2周
:10年近く前の過去問が、A級3年分、準A級3年分収録されています。
貿易実務検定®A級本試験問題 15回~19回 直近5年分×2~3周
:1年分ずつ公式で別売り。1年分につき4千円弱。高い。個人の所感としては、16回と15回が難しかったので、何年分遡るか迷っていらっしゃる方はこのあたりまで遡られるといいのではないかと思いました。
⑤マウンハーフの通関士関連法改正情報
9月中には上記のHPで最新年度の法改正情報が出る。特にEPA関連の最新情報は貿易実務で頻出なのでチェックしておくとよい
※アフィリエイトとか入れてませんので、安心してリンク先に飛んでください笑

5.勉強の流れ

①貿易実務ハンドブック通読→③過去問題集からA級の過去問を過去3年分解く→②(基礎の抜け漏れを痛感し)サクッとわかる貿易実務の問題集を1周する→④直近の過去問3年分を解く→③準A級の過去問を解く→④直近の過去問をさらに買い足し、繰り返す→⑤法改正情報をサラッとチェック

私は上記の流れでしたが、お勧めするのは下記です。

①貿易実務ハンドブック通読→④直近の過去問を解く→④それを何周か繰り返す→⑤法改正情報をチェック

いかんせん直近の過去問が1年ずつのばら売りかつ、単価が高い上に、あまりメルカリの市場にも出てこないので、ついまとめて収録してある公式問題集に手が伸びがちなのですが、収録されている過去問が古すぎて、問題傾向が大きく変わっています。直近の過去問で対策したほうが無駄がないです。

それでも、公式問題集で勉強される方は、準A級の3回分をひたすら繰り返したうえで、A級実務の計算問題部分を繰り返されるのが一番効率的かと思います。(過去問収録のA級はざっくりした投げ方の記述問題が多く、今のA級の問題に比べて難しすぎるため)

6.科目別勉強方法⓪総括

全体に言えることは、とにかく過去問を丸暗記する勢いで繰り返すのが◎
この試験は通関士と併願される方も多いですが、通関士と違って、過去問と聞き方まで全く同じ問題が出まくりますので、過去問を攻略するのが吉です。

7.科目別勉強方法①貿易実務

・通関士受験者は関税法等で出題されるトピックと類似している問題もよく出るので有利。A級受験予定がある通関士受験生は、通関士で覚えた知識を忘れないうちにA級を受けたほうが覚え直しの範囲が少なくて良いと思います。

・書類作成問題は同じような書類が毎年のように出題されるので、過去問の問題を丸覚えすれば得点源に。
荷為替手形、信用状開設依頼書、売買為替予約票、B/L、海上保険申込書、L/G、保険会社への損害求償状、輸入取引申込票あたりが頻出。
輸入取引申込票だけは公式ハンドブックに記載がないのでとにかく過去問の出題内容を何度も解くことで攻略。

・課税価格の計算問題は、通関士合格者なら対策不要。通関士未受験者で対策されたい方は、日本関税協会が出している『計算問題ドリル』で対策されるのがいいと思います。

・船積運賃と航空運賃の計算問題は、過去問をひたすら繰り返せば問題なし。海上運賃算出時に必要になるので、アメリカの主要都市の位置はなんとなく覚えておくと良い。ニューヨーク、ダラス、シアトル、ヒューストンあたり。航空運賃の計算は、フォワーダー勤務者なら常日頃からお馴染みと思われるが、AS取りが頻出。

8.科目別勉強方法②マーケティング

・過去問をひたすら繰り返して用語を覚える。第1・2問の選択問題で出てきた用語を問う問題が、別の年度では第3問の大記述問題で出題されることも多いので、自分の言葉で説明できるようにしておくと良い。プロダクトライフサイクル、製販同盟と流通系列化、アンゾフモデル、PPM分析、バランススコアカードあたりは頻出。

・第5問の計算問題は、リサイクル問題が多いので、こちらも過去問で出たものについては確実に解けるようにしておくと良い。

9.科目別勉強方法③貿易英語

・英語が得意な人はあまり対策しなくても(貿易に関する知識のインプットが足りていなくても)初見で7割くらいは解ける。英語が苦手な人も、正直、A級の貿易英語に特化した問題集がなく、過去問を繰り返す以外に対策のしようがないため、過去問演習を繰り返せば確実に点が取れる実務とマーケで稼いだ方が良いと思われる。

・第1・2問の和訳・英訳選択問題については、一見同じような選択肢が並ぶが、単語レベルでの誤訳ひっかけも多いので、選択肢を速読というよりは精読をしていく必要あり。
例:「再交渉」なのにnegotiationsになっている(正:renegotiations)、「一覧払手形」なのにdraftとしか書いていない(正:sight draft)など。

・長文問題は、パラグラフリーディングがマスト。1段落読んだら1問解くようにすると、何度も英文を行ったり来たりしないで済んで良いと思います。

・英作文は、採点基準がまったく公表されていないので、ライティングに苦手意識をお持ちの方は、捨てるのもありだと思います…一応私は、過去問の模範解答でこの表現は使える、と思ったものだけTwitterでメモしていました。

10.おわりに(以下は私見です)

通関士と貿易実務検定A級はどちらが難しいか、という話題を時折見かけます。これは私個人の意見ですが、通関士のほうが難しいと思いました。通関士では過去問と全く同じ聞き方の問題が出ることはほとんどなく、本質を確実に理解して自分の頭で考えて解かないと正解を導くことができないからです。貿易実務検定のA級は記述問題も多いですし一見すごく難しそうに見えますが、過去問さえ攻略してしまえば確実に点を取れる試験です。興味のある方は、あまりビビらずぜひ挑戦してみられるといいと思います。

貿易実務検定A級と通関士、どちらを(先に)とるか迷っていらっしゃる方へ。
前提として通関士は国家試験で、貿易実務検定は民間の検定試験です。貿易実務検定1回の受験料で通関士試験が4回受けられます(笑)
現在メーカーや商社勤務で、業務内容の知識とスキルをブラッシュアップしたい、という方には貿易実務検定をお勧めします。より業務内容に近いことを勉強できるからです。(ただ、貿易実務検定の問題内容は荷為替手形やL/Cなど、TT送金でない決済関連の出題がすごく多く、L/C比率の低い現在の貿易実務の実態と乖離しているという説もあるため、資格で勉強したことがそっくりそのまま仕事で活きるかと言うと…?です。私はメーカー時代L/Cこそ経験はあるものの荷為替手形は見たこともありませんでしたし、フォワーダー時代は数多くのお客様とお仕事させていただきましたが、TT送金でない取引をされるお客様はごく僅かでした)
乙仲勤務の方には通関士をお勧めします。でも乙仲のCS志望なら業務内容に活かせる部分もあるので、貿易実務検定も有効だと思います。
近いうちに転職をしたい方も、通関士をお勧めします(これはたとえメーカー・商社志望であっても)。大手メーカーであっても民間の貿易実務検定の知名度はあまり高くない一方、国家試験に合格していると言うと一目置かれるためです。就活生の方も、同様の理由で通関士を優先されることをお勧めします。

以上です。少しでも受験を考えていらっしゃる方の参考になれば幸いです。長くなりましたが、最後までお読みいただきありがとうございました。

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