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初めての自活は22歳 in London

厳密に言うと、一人暮らしではない。
自活はしていたけど、一人暮らしと言っていいのかわからない。
フラットシェアは、一人暮らしのくくりに入れてもらえるのだろうか。

私が人生で初めて自活を始めたのは22歳の時。
ロンドンへ行って、最初の3ヵ月はホストマザーのところで過ごし、
その後、英日カップルの住む家へ Lodger として一緒に住むことになった。
Lodger というのは、いわゆる下宿人とか、間借り人という意味だけど、
そう書くと何だか急に『坊ちゃん』風な世界になりそうだったのでカッコつけさせてもらった。
イギリスではホームステイとは違う、Lodger という住み方もあって、
私の場合は一部屋をもらって、キッチンやバスルームは日英夫婦と共同。
掃除や備品なんかの買い出しは順番となった。
これは私が一番好きな暮らし方だった。

なぜか。

それは、学生同士でフラットシェア(英: Flat/ 米: Apartment)をすると、
誰も家に対して責任がないせいか、往々にして汚いことが多いのだ。
色々な国から色々な文化やバックグラウンドを持った人々が集まってきて、
そのほとんどが学生やワーキングホリデーで滞在中の若者だった。
その中でバスルームやキッチンの使い方に様々あって、見学に行った際さすがの私もひっくり返りそうになった物件もあった。
自慢じゃないが、私は綺麗好きでも何でもない。
片づけは大の苦手だし、「散らかってる」の線引きはわりと高い方である。
その私ですら、ここは無理!と早々に退散した。
ところが、Lodger という住み方であれば同居人がその家に対して責任を持っているので、つまり家はかなり奇麗なことが多かった。
それに日英カップルの同居人であれば、英語の練習ができると同時に日本語で助けてくれる人もそばにいるし、現地の人とも仲良くなれるチャンスがかなり増えるのだ(留学生同士、語学学校生同士だと、現地の友人はなかなかできにくいものなのだ。現に私も、語学学校からの友人にはスペイン人やオランダ人、ベルギー人などがダントツ多い)。

ただし、Lodger という住み方はちょっと淋しくなる時もある。
それは同居人たちはたいてい家族であるからだ。
同じ家に住んでいるのに自分だけ単体で、同居人は家族というチーム。
一緒に住んでるけど、私だけ家族じゃない。
私だけよそ者。
学生同士のシェアだと、それぞれが独立した“個”である分、あまりそういう孤独感はないように思うのだ(実際経験したことがないのでわからないが)。
でも、私が同居した最初の日英カップルはよく遊びに誘ってくれて、クリスマスや日曜日のブランチ、休日のお散歩、日々のお買い物なんかはしょっちゅう一緒に出掛けた。
その次に一緒に住んだインド系イギリス人夫婦は完全に全てが別々で、あんまり交流はなかったし、その後フランスで間借りした家の女主人は魔女みたいな人で怖かった。
というわけで、結局は「誰と(あるいは一人で)どうやって住むか」なのだろう。

とにかく私は、その日英夫婦との暮らしがとても好きだった。
毎朝ピカデリーサーカスにある紳士服屋に出勤し、通訳の仕事をしていた。
今ではすっかり観光地化して下品にピカピカしてしまい、本当に悲しい。
当時はピカデリーサーカスのあたりも、ちょうど裏にあるリージェントストリートのような風景が見られていた。
そこで毎日働いて、テスコという安いスーパーか、たまにはM&Sというちょっとお高めのスーパーで買い物をして帰った。
帰るとイギリス人の旦那さんの方が家で仕事をしていて、その日あったことをしゃべった。
そうすると奥さんが間もなく帰ってきて、旦那さんをほったらかし状態で2人で飽きもせず色んなことを本当に楽しく話したものだ。
だから、2人がホリデーで2週間ほど留守にしたときは、後半の1週間は淋しくて孤独死するかと思うほどだったのを覚えている。
「完全に一人暮らしは私には無理だ」とそのとき思ったので、以降(というかそれ以前もだが)、私は現在に至るまで完全に一人暮らしをしたことがない。

ただし、後で発覚したことなのだが、そのイギリス人の旦那さんの方が結構な変態だった!
本性を現したときはビックリするのと面白すぎるのと、友達に大爆笑しながら話したことを覚えている。
でもそれから一緒に生活するのには私も若すぎたこともあり、ちょっと気持ち悪かったので、私はその家を出て、先に述べたインド系イギリス人夫婦の家へ引っ越すことになる。
学生同士のフラットシェアも、Lodger も、完全なる一人暮らしも、一長一短、誰と住むか、どのように住むかということが問題になると言ったのは、そういう意味だ。
だけど、イギリス変態夫も含め、22歳のあのときは私の黄金期ともいえるくらい絶好調に充実した日々で、だからこそ、24歳でインド系イギリス人夫妻のところへ引っ越す原動力となった。

楽しさと、淋しさと、奇妙な同居人と、充実した日々。
自活、独立、成長、経験。
そんなものが詰まった、私の初めての一人暮らしだ。

こっちも見てね↓↓

『人生で一番怖かった日 in London』

https://note.com/ellie_ythier/n/n0c4a32231ecb


#ひとり暮らしのエピソード

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