見出し画像

気持ちの盛り上がりと脱ぎ捨てた制服について

定時がきた。事務所を飛び出し、いつもより長く感じる廊下を小走りで、階段を駆け上がり、ロッカールームに制服を脱ぎ捨て、職場を飛び出す。やっと、ひゅーいさんのライブに行ける!気持ちは身体より先走りで、ときめきという電車の乗り継ぎをこなせば逢える!渋谷で5時的心境。

ライブ前に気持ちが盛り上がっちゃって、パルコのイシバシ楽器で赤いギターを衝動買いした前回のひゅーいさんのライブの日からおおよそ3年が経った。あんなに私の気持ちは盛り上がっていたのに、しばらくの間、赤いギターは部屋の隅に眠っていた。楽しみにしていたフジロックが中止になるという知らせを聞いたとき、失意を紛らわすための「フジロックが開催されないなら私がフジロックをする」という発想で近所のギター教室へ通い始めた。この3年間、ギターに対する数回の気持ちの盛り上がりを原動力に弾けるようになったのは、ZIGGYの「グロリア」のAメロのみ。夢いっぱいで赤いギターを購入した3年前のことをふと思い出して、地道に練習しなければギターは上達しないという現実を噛み締めたりしながら、ひゅーいさんのライブへ向かう。

新幹線を降りてタクシーに飛び乗るも、帰宅ラッシュに巻き込まれ、会場になかなか辿り着かない。ひゅーいさんを一目見ん一目見んとぞただにいそげる斎藤茂吉的心境を抱えながら、やっと辿り着いたライブハウスの扉を開けると、かすかに聞こえてくるひゅーいさんの歌声。嬉しかったな。とびきり嬉しかった。ほんとうに嬉しかった。

「デビューしてから10年、大変なこともあって、あきらめそうになったこともあった」というMCには胸が締め付けられた。ほんとうに続けてくれてありがとう。心から!そう思う。インスタライブでフジロック出演が決まったことについて、「ちゃんと見ててくれてる感じがして嬉しい。一歩一歩頑張ってきた甲斐があった。」としみじみと言っていたのが思い出されて、またグッときている。

相変わらず、ひゅーいさんの音楽は、余白があって、距離感が優しい。それでいて、胸に刺さる。想像力が豊かなんだろうな。ライブ後、心満たされて優しい気持ちで駅に向う。帰り道に知人を見かけて声をかけている自分がいた。普段なら遠くを見つめて通り過ぎてしまうところだけど、なんだかとても気持ちがよくてついそうしていた。ひゅーいさんの音楽の魔法である。この余韻を胸に、退勤時に急いで脱ぎ捨ててきた制服を拾って明日からまた粛々と働きたい。時にアグレッシブに時にマイルドに。

「命削ってる?」
9年前、場所はROOMS。ひゅーいさんの虜になったアルバム「独立前夜」のリリースイベントでひゅーいさんが放ったこの言葉をその時の表情も含めてなぜか忘れられない。ひゅーいさんが生みだす音楽が日々の生活に在ることを有り難く思う。少し照れるフレーズで言い直すと、"ひゅーいさんの音楽がある時代に生まれた奇跡"。10周年おめでとう!ありがとう!これからも、"おちゃめにぶち壊して"いってください。

ちなみに、今、ギターに対する気持ち、盛り上がってます。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?