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哲学思想日記 2023-W20 — 抱かれたい男ランキング; 平日夜に駅前で抱き合うカップル

2023-05-15/21


性愛

「抱かれたい男ランキング」という表現は通常暗黙のうちに「(私が) 抱かれたい男ランキング」であると解釈されるが, しかし文法的には「(誰かに) 抱かれたい男ランキング」という解釈も可能. つまり, 誰かに抱かれたいという欲求の最も強い男がそのランキングの1位になるということ.

平日夜に駅前で抱き合うカップルを見ると, 「ああ, あの2つの瞳を原点として開闢している世界の中心には恋人の瞳があって, 街の明かりや通行人は世界の背景なのだなあ, 人それぞれの生きる世界は価値に彩られた遠近法なのだなあ」と, 思います.

倫理

「生命倫理」という語は形容矛盾ではないか? というのも倫理とは生命に対する「Nein!」であるから.

道徳教育って「人間の自ら招いた啓蒙からの脱却」を目指している気がする.

倫理学を精神的自傷行為にしている人って絶対いると思う. 自分は道徳的に無価値な人間なんだと確かめて傷つくことで生きてる実感を得ようとする人.

倫理が「相対的か普遍的か」じゃなくて「在るか無いか」の話をしたい. あと倫理の普遍性も, たまたま地球上に今ある各社会に共通して見つかる規範を探すとかだと a posteriori で偶然的なんだから, 相対主義と対峙したいなら経験的普遍性じゃなくて a priori な必然性を持ち出さないと意味なくないか?

破っても罰がないのに倫理倫理って叫ぶのもなんかむなしいことだ.

単純すぎる考えかもしれないけど道徳性を維持するために自由意志ってそんなに大事なのか疑問に思う. だって (Max Weberによれば) カルヴァン派って予定説信じてても「私の救いが予定されてるなら私は悪いことをするはずがない」と考えてすごく倫理的な生活を送るわけでしょ?


Aristotelēs

Aristotelēs は『ニコマコス倫理学』(EN) の中で観想が倫理的実践よりも幸福だとした. もちろん倫理的実践も2番目に幸福とはしたのだが, しょせんは2番目なんだよね. 古典古代人は幸福主義だから徳福一致を前提とするんだけど, 徳福分離の萌芽が EN にはあったのかも.

近世

近世概念普及委員会の一員なので世界史における近世 (early modern) という概念がもっと広まってほしいと思っている. 哲学史でも Descartes は近世最初 (ただしルネサンス哲学は除く) だし Kant は近世最後かつ近代最初って考えると意外と綺麗に対応している.

Kripke

Saul Kripke『名指しと必然性』を読んで,「B. Russell の確定記述って Hegelian だなあ」と思った. Russell はもともと Hegel 研究から転向して数学と論理の哲学者になったとされているけど, 可能世界を認めない指示とかは絶対知と, 反実仮想をしないところは歴史哲学とよく似てる.

言語哲学史における「固有名」の議論は, 固有名の代表例を人名にしてしまったために, ⟨私⟩ 問題が不用意に入り込んでしまっている. 腕時計の製造番号とかが最も典型的な「固有名」であって, デカルト的問題を挿入するのは問題をややこしくしすぎ.

21世紀の日本人としては Kripke の考え方の方がむしろ常識的で, Russell の「アリストテレスとはアレクサンドロスの教師なのだ!」という確定記述の世界観の方が哲学的驚きを感じる.

「名付け」は baptism だけに「覆水盆に返らず」なのですね.


Image by Michael Pointner from Pixabay

聖書

古い本だと聖書の引用が文語訳だったりするけど, おれ文語訳ってあんまり好きじゃない. 聖書っていうのは我々と同じ言葉で, 同じ目線でイエス様が語ってくださるところに意味があると思うので, いかめしいお経みたいな文体はあまり適していないと思う.

Franklin

意識を高めるために中公クラシックス『フランクリン自伝』を読んだら意識が高まりました. 自己啓発本の発祥ってこれなんですかね?

『フランクリン自伝』を読んで印象に残るのが当時のアメリカにおけるアルコール依存症の蔓延. なんでなんだろう? 中世〜近世前半までの身分制社会と異なり「好きなときにお酒を飲める市民階級」が登場した過渡期だから? 都市では村社会の監視がないぶん自制しなければならないという環境変化のせい?

Nietzsche

Nietzsche が『Der Antichrist』とかでやろうとしたのはナザレのイエスの仏陀化 (buddhification) だよね.

ほっぺ

「ほっぺたをつねっても痛くないなら夢」という俗信があるが, ほっぺたをつねったとき痛いのはいつも私だ!

水槽脳って現象界にはなくて物自体の世界にしかあり得ないよね? そうだよね?

日本語

「乗っける」の「っける」ってなんなんだろう? 自動詞は「乗る」でしょ? 「乗せる」なら「させる」の類推でまだ語幹と語尾の関係がわかるんだけど, 「乗っける」以外に「っける」で終わる (使役) 動詞なんかあったっけ? 「させる」は 「* さっける」になんかならないのに.

「しよう (勧誘)」の「よう」ってなんだろう? 「動く」は「動こう」, 「見る」は「見よう」, 「下げる」は「下げよう」になるから五段活用だけ語幹末子音 + /-oː/ なのか. あと「よう」も「おう」も普通 /-oɯ/ にはならないよね?

「した」と「したい」って1文字違いで大違いだよね. しかも「したい」は話し言葉の文末では「した(⤴︎)」になりうるし. 「やりた⤴︎」「やった」や「書きた⤴︎」「書いた」なら音便で区別可能だけど「した」は文脈か助詞がないと判別不可能なのかな? まあ「い」の省略自体まれかもだけど.

その他

【愚者愚者】愚者しかいなくて世の中がぐしゃぐしゃになること.

2ch のせいで道徳観が死滅した可能性はあるね.

もっと勉強したい哲学: 分析哲学, メタ倫理学, ドイツ観念論 (Fichte, Schelling, Hegel), フランス現代思想, イギリス経験論 (Locke, Hume), 現代政治哲学 (Rawls, Habermas).

なんか Kant って「お調子者」の匂いがするんだよなあ. 特に『永遠平和』とか批判期以後の著作. Nietzsche がお調子者なのは言うまでもないしその元祖が Platōn なのもそうだろうが, Wittgenstein も特に『青色本』とかは軽妙. 哲学じゃないけど Max Weber も典型的なお調子者の文章だと思う.


2023-06-16
BGM: Nina Chuba feat. Juju „Wildberry Lillet Remix“


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