見出し画像

コミュニティの運営は大変?有効な運営体制の構築方法


企業コミュニティはどの組織が主管しているのか?

こんにちは。イーライフのアドバイザー水野です。
「Q&Aコーナー」第3回目のテーマは、「コミュニティの運営は大変?有効な運営体制の構築方法」です。前職で実際にコミュニティの運営に携わった私の経験を交えながら、この疑問を解き明かします。

すでにコミュニティを運営している企業では、一体どんな組織が主管しているのでしょうか?これは、コミュニティを立ち上げる目的によるところも大きいのですが、多くの企業では「マーケティング部門」「広報部門」といった、お客様に対し商品やサービス、企業自体のイメージアップを図る部署が担当しています。そのマーケティング組織的な部署が営業組織や営業部門を担当することもあるでしょう。

また、顧客が成功体験を得られるように伴走する取り組み、いわゆる「カスタマーサクセス」を重視する企業では、そのものずばりのカスタマーサクセス部門やお客様相談部署がコミュニティ運営を担当することもあります。こちらはBtoBの企業に多いかもしれません。

何が言いたいかというと、コミュニティ運営だけを専任で行う部署を持つ企業はないということです。少なくとも、私は聞いたことがありません。前回のQ&Aで、コミュニティ運営はマーケティング戦略全体で考えて相乗効果を狙うべきと提案した通り、コミュニティ運営はマーケティング施策のひとつであり、他の施策とセットで運営することが望ましいのです。

コミュニティ運営に割ける社内リソースは限られている

では、そのコミュニティ運営担当者が所属するマーケティング部門の人数は大体どれくらいなのでしょう。もちろんサントリーやソニーのようにマーケティング専門の別会社を持ったり、100人以上の大規模な専任組織を持ったりする企業もありますが、一般的には数名から数十名の組織でプロモーションからコミュニケーション、さらにはパッケージやクリエイティブなどのブランド管理まで、広範囲な業務を行っているはずです。

社内リソースは“潤沢ではない”という状況なので、コミュニティを立ち上げたとしても、ほとんどの企業は1~2名、多くてもせいぜい5~6名で運営しているのではないでしょうか。

コミュニティを安定的に活性化させるためにはやることも多い

では、別の角度から考えてみましょう。コミュニティ運営で企業側がやらなければならないのは、どのようなことでしょうか?具体的な作業をランダムにあげてみますね。

1)コミュニティ全体の戦略策定
2)運営施策の企画立案・スケジュール化・費用の確認
3)企画の設計・準備
4)Web記事の執筆・画像の制作
5)Web画面構築
6)メルマガの作成・配信
7)会員投稿コメントの閲覧・コメント返信
8)会員からの問い合わせ対応
9)運営の評価(KPIなど)まとめ、報告資料作成
10)システム運用やトラブルへの対応

やらなければならないことがたくさんありますね。
『7)会員投稿コメントの閲覧・コメント返信』は、会員の自走型コミュニティの場合は運営側がノータッチのケースが多いかもしれません。しかし私の経験から言うと、ここを丁寧に取り組むことがコミュニティへの信頼を高め、活性化に繋がる大きなポイントとなるのです。また、日々の投稿のチェック・コメント返信は、会員間のトラブルや炎上を未然に防ぐ役割も担っています。

過去のエピソードをひとつ。私が運営に携わっていたカゴメ株式会社のコミュニティサイト「&KAGOME(アンドカゴメ)」には、カゴメ商品を使ったレシピをはじめ、トマト・野菜に関する会員からの多くの投稿がたくさん寄せられます。

「健康」にまつわる話題も多く、そうなると「効果効能」に関する投稿はどうしても避けられません。効果効能の表現については、実際の体験談であっても、薬機法で認められたもの以外は謳ってはいけないという決まりがあります。

「&KAGOME(アンドカゴメ)」では、この薬機法の規制に企業として正しく取り組むために、効果効能に触れる投稿は断腸の思いで削除していました。この削除対応が遅れると投稿に対して返信コメントがついてしまうため(そうなると返信コメントも含めすべて削除しないといけません)、投稿のチェックは毎日行い、削除が必要なコメントに対しては、翌朝早々にアクションを起こしていました。

マーケティング部門以外の人的リソースをうまく活用する

このように、戦略策定や企画立案はもちろんのこと、日々のこまごまとした作業がコミュニティの活性化と安定的な運営に繋がります。社内のコミュニティ担当だけで円滑に回していくのは難しいですし、かといってテーマの投げかけやイベント企画の本数を減らしてしまっては、コミュニティにとってマイナスになってしまいます。

そんなときに頼りになるのが、社内の関連部署です。前述の「&KAGOME(アンドカゴメ)」の薬機法対応の例では、品質保証部門が相談に乗ってくれました。また、会員間同士のトラブル・炎上の恐れがあるような場面では、法務部門やお客様相談部門が相談に乗ってくれるでしょう。まずは、社内の専門家に目を向けてみるとよいと思います。

具体的なWeb記事の作成・公開、コメントのチェック・取りまとめなどは、予算に応じて社外のリソースを活用するのもいいかもしれませんね。私がアドバイザーを務めるイーライフも、コミュニティの立ち上げから運営まで、手厚くサポートするスタッフが揃っています。社内・社外双方を見渡して適切な専門家の支援を得ることが、コミュニティを活性化させ、最終的には自社のマーケティングの成果に繋がるのではないでしょうか。

最後に、未来に向けて夢を語っておきます。
昨今流行りのChatGPTをはじめとする生成系AIの活用は、コミュニティ運営を劇的に進化させる可能性を秘めています。戦略・企画アイディアは自社で立案したとしても、テキストや画像といったクリエイティブの生成、そして投稿コメントのチェックは、技術的にはすでに実現可能なレベルに達しています。自然言語処理の精度がさらに向上すれば、会員の投稿の文脈理解もできるようになるでしょう。コミュニティのなかで、会員とAIのやりとりが双方向に盛り上がれば、そのやりとりから商品やサービスに関するヒントをAIが導き出してくれるかもしれませんね。

「企業コミュニティQ&A」第3回まとめ

コミュニティを活性化させ安定的に運営するためには、不適切な投稿内容のチェックやコメント返信といった日々のこまごまとした作業が重要なポイントとなります。限られたコミュニティ運営人員だけで回すのではなく、社内・社外のさまざまな支援先を検討してみましょう。テクノロジーの進化により、自動化できる作業は今後も拡大することが予想されます。業務効率化に役立つ運営ツールにも目を向けるとよいと思います。