社内の協力者をつくることがコミュニティ活性化への近道
コミュニティを社内に広めると良いことがある?
こんにちは。イーライフのアドバイザー水野です。
先日、とある企業のコミュニティマネージャーの方とお話をする機会がありました。その方のお悩みは、「社内の理解や協力を得られない」でした。
企業コミュニティの多くは、宣伝や広報部門がお客様との関係を深めるために運営していると思います。その目的にまい進しているなかで、孤軍奮闘はつらいですね。特に、経営者や販売部門、各ブランドの責任者といった、マーケティングに関連する部署とはしっかり連携したいものです。
では、なぜ社内にコミュニティ協力者が必要なのでしょう。コミュニティに多くの社内の人や部署が関わることで、次の3つの「良いこと」があると考えています。
まずひとつめは、「コンテンツの奥行き」です。コミュニティを活性化するためには、企業からの継続的な情報発信が重要です。発信する頻度や量も大切ですし、何よりも「テーマ」が豊富であることが、会員であるお客様の興味を惹き、関心を高めます。継続的なコンテンツを生み出すには、企業全体からの「ネタ」の収集が必要となるわけで、社内の協力を得られないと、コンテンツを生成するうえで制約のある状態となってしまうのです。
ふたつめは、「コミュニティの声を有効活用できる」です。企業コミュニティは、会員と企業が双方向で意思疎通を行うことに価値があります。コミュニティで生まれる会員の声(いわゆる「UGC」)が運営部署だけに留まってしまうのは、せっかく集めた声を価値として変換する機会を逸しているといえます。コミュニティの運営部署では何の価値も感じない会員の声でも、普段顧客と接点のない部署では貴重な判断材料となることもあります。多くの部署に共有すれば、価値を高める場面も増えることになるでしょう。
みっつめは、「会員と企業への親近感が増す」です。社内でのコミュニティの理解が進み協力を得られれば、それぞれの部署から持ち込まれるコンテンツや企画、イベントなども増えます。各部署の熱意や思いをダイレクトに発信したり、時にはそれを持った当人がリアルに登場したりすることもあるはずです。コミュニティ会員は、こうした企業との接点に「特別」を感じ、企業に対する親近感も増すでしょう。
コミュニティの社内循環事例
実際に社内にコミュニティの協力者をつくり、複数の人や部署でコミュニティを盛り上げている例を紹介しますね。
まずひとつめは、ロート製薬が運営する「ココロートパーク」です。「社員とトーク!」というコーナーでは、月ごとにテーマにあわせた社員が登場して、会員と相互にコミュニケーションを楽しんでいます。メニューがスタートした2023年9月以降、月当たり2名程度の社員がテーマを投げかけ、多いときには500件を超えるコメントが付くものもありました。
次は、マルハニチロの「Oishiine!!(おいしいね!!)」内の「マルハニチロのお仕事紹介」です。コミュニティ担当者が社内の各部署を訪問し、インタビュー形式で記事化したコンテンツです。この形式は、多くの企業コミュニティで採用されていますね。でも、マルハニチロさんのお仕事紹介は「中身が濃い!」んです。1本あたりのボリュームも、仕事に踏み込む深さもすごい。採用するテーマも非常にマニアックで、企業色が出ています。例えば、カップゼリーの商品紹介にはじまり、魚のすり身の製造工程、豊洲市場のマグロのセリ市、魚の養殖センターのお仕事まで詳しく紹介されています。それぞれの記事には100件を超えるコメントが投稿されており、関心の高さがうかがえます。
最後に、私が前職で運営に携わっていたカゴメの「&KAGOME」から紹介しましょう。カゴメの特別なトマトの苗をコミュニティで一緒に栽培する「トマコミ」には、社内のトマト栽培の専門家である「博士」が登場しています。2024年の「トマコミ」では、さらに活動の範囲が拡大。社内に写真投稿キャンペーンへの参加を呼びかけ、会員に交じって社員が写真投稿を行っています。ハンドルネームに「カゴメ社員」とつける社内ルールを周知して、一般の会員と同じ投稿を公募したそうです。社員の投稿をまとめて特集記事化できるのも利点かもしれませんね。
コミュニティで社内から協力を得るには?
では、社内から快く「コミュニティに協力するよ」と言ってもらえるには、どのような働きかけをすればよいのでしょうか?まずは、コミュニティを運営していることを社内で認知させなければなりません。社内報やイントラネットなどで、取り組みを紹介してもらうのが手っ取り早い方法ですね。社内の人目につくような場所に、掲示物を掲載するのもよいでしょう。例えば、森永製菓のコミュニティ「エンゼルPLUS」では、投稿型の川柳企画の優秀作品を、社員の投票で決めたそうです。
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コミュニティの認知が獲得できたら次は、コミュニティが社内の各部署にどんなメリットをもたらすかを考えてみてはどうでしょうか。先ほどの「ココロートパーク」の事例が代表的だと思いますが、登場する社員の投げかけるテーマへのコメントは、すべて商品やサービスの仮説形成や改良のアイディアとなっています。「&KAGOME」のトマコミに栽培の専門家の社員が登場したきっかけは、家庭菜園のリアルな実態データの収集でした。研究開発、製造、物流など、社内の多くの部署はお客様の声に直接触れることができません。コミュニティのUGCは、販売やマーケティング目的で使われるものと思いがちです。しかし、企業のあらゆる部署において、顧客の声は自身の業務を顧客目線で見直すきっかけになる可能性があります。それもまた、コミュニティの価値だと思うのです。
「企業コミュニティQ&A」第9回まとめ
今回は、社内のコミュニティ協力者の必要性や、コミュニティに直接携わらない部署でのコミュニティのメリットについて考えてみましたが、いかがだったでしょうか。かくいう私自身も、カゴメ時代の大半はマーケティングではなく、お客様の声に触れることが皆無の情報システム部という組織におりました。そうした部署では、企業がお客様にどのような価値を提供し、どんな声が返ってくるのかを知ることは、仕事の質を高めるうえで非常に重要なことだと、今回の記事を通して改めて感じました。
次回もお楽しみに。