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『エルフの工房物語』スマホカバー4

 店の奥、
 様々な道具を丁寧に並べた作業場にて、

「糸は静岡、和紙は美濃、帆布は倉敷」

 解らない単語もある、けれど、今、エルフが、様々な形をしたあらゆる工具で仕上げている物が、

「材料を目利きするのも一苦労で、現地に飛んだり、同業者のお話を伺ったり」

 日本各地のあらゆる場所から集めたものの結晶だという事は解った。
 ――最初はただの一枚の革でしかなかったはずである
 それが、今述べられた材料と供に、目の前で、切られ、貼り付けられ、結ばれて、
 どんどん見覚えのあるものになっていく。
 店に入ってからそうとうな時間が経っているはずなのに、貴史は、目の前で出来上がっていくものをただみつめていた。

「それじゃ、縫いますね」

 そして、ほぼ最後の工程、皮と皮を、糸で結ぶ作業。一定のスピードで、丁寧に縫い上げられていくその様は、見惚れるのに十分で、
 ただ、そこで、

「手縫いってめんどくさくないっすか?」

 そう、全く、無意識に貴史は聞いてしまった。発言してから、その言葉のまずさに気付く。

「あ、いや」

 ミシンの方が早く済みそうなのにと、そんな事をいちいち聞いてしまって、
 ごめんなさいと謝ろうとした時、

「手縫いの方が、ミシンより頑丈なんですよ」
「え」

 そこで、エルフは、二本の糸を取り出した。
 余った革の切れ端二つそれぞれに、菱目という工具で穴を幾つかあけた。

「手縫いの場合、こうやって」

 一本の糸の端に針を通す、だけじゃなく、
 もう一方の端にも針を通した。
 両端に、針。

「こうしてから、2本の針で交差させて縫う事で、螺旋状に糸を絡ませる事が出来ます」

 X字に交差していく線――いくらかそうやって縫い合わせてから、それを卓上の端に置いて、

「けれど、ミシンの場合、ピンと伸びた一本の糸に、山型に糸が絡む形になる」

 もう片方の革の切れ端にも、エルフが言うとおりに、糸を組み合わせたものを作った。。

「手縫いの場合、例えば一カ所が切れても、他の部分が、クロスして噛むように絡まってるからそう簡単にほどけないのですが、ミシンで縫った場合は」

 そこで、エルフは、ピンと伸びた方の糸をハサミで切った。

「あっ」
 
 すると糸はするすると抜ける、
 そうすると、穴に山形に通された糸の方も、引っ張ると簡単にするすると抜けていってしまった。
 実際に見て解る、手縫いとミシン縫いの違い、

「という事で、手縫いの方が頑丈なんです」
「……そっか」

 男は、素直に感嘆し、

「ゆずれない、こだわりなんですね」

 そう、素直に称賛した、が

「……いえ、正直なところ、革細工用のミシンを買うお金がないっていうのが実情でして」
「え?」

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