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【日記】高原での皆既月食は、宇宙の中を歩いてる気分

2022年11月8日、皆既月食の日のこと。

ちょっと前だね。
もう1週間以上も前だ。

あの日、僕も皆既月食を見た。
いいカメラは持っていないので、いい写真は残っていない。

僕が住んでいる村は標高1000mもある。
超高い。
田んぼがずっと広がっているから空がひらけているんだ。

「星降る里」とかそんな大袈裟なことを言っている。

日没前、僕がいる村から、東の方面には雲のかかった八ヶ岳が見えた。
不安だった。
八ヶ岳の方面から月は登る。

そんな心配は杞憂だった。
雲は減り、眩しい月が露わになった。

村には外灯がほとんどないから、月が天然の外灯のように村を照らす。
冗談抜きで、月明かりがあれば懐中電灯がいらないくらいには明るかった。


皆既月食が始まる。
最初は部分月食だ。

寒いけど、外で過ごすことにする。
自宅の北側に庭がある。

やや荒れた庭だ。

庭にキャンプ道具を出す。
キャンプ用のテーブルとイスとレジャーシートを出す。

月明かりでも組み立てられるくらいだ。

雰囲気を出すために安いキャンドルに火を灯した。
ロウソクの火があるだけで、だいぶエモさが増す。

味噌汁を耐熱ガラスのマグカップに入れて、腰掛ければスタンバイOKだ。

部分月食がどんどん進む。
何十分もかけて、少しづつ月がかけていく。

肉眼でもよくわかる。


今日はひとりで夜を過ごすことになったから、軽く料理をした。
焼肉と冷凍ハンバーグとキャベツを適当に熱を通して、米と一緒にどんぶりに入れた。

そのどんぶりを持って外で食べる。

流れ星が頭上に流れる。
今まで見た中でもかなり大きな軌跡を描いて流れた。

やっぱり寒い。


下に八ヶ岳、上に月

しばらくして、村を散歩することにする。
かなり着込んで行って、村を歩く。

静寂だ。

赤くなってきた月を見つめながら、夜の村の曲がりくねった道を練り歩く。

おばあさんが路上に出て月を眺めていた。
黒い服しか着ていない僕の姿に少し驚きつつも、お互いに「こんばんは」と会釈をした。



すごいな。

ずっと山のほうに歩く。
地形的に15kmくらいのながらかな坂になっている村だ。
坂の上に向かって歩を進める。

去年までほとんど縁のなかった農村の風景と満点の星空と赤い月が、非日常空間を演出する。
別の世界にきたみたいな気分にさえなる。

山のシルエットが黒くあり、その上には少しだけグレーの星空が後ろに重なっている。

紅葉に照らされたところがあった。
もう冬になるのか。

北西の方向にある、街が光を放っている。
街の光が白いモヤのように見えた。

ポイジャーという太陽系の外を飛ぶ探査機のこととか、天王星のこととかをぼんやり考えながら、農道を気の向くままに歩いていた。

宇宙の中にいるみたいだ。

時々車が通りすがるものの、ほとんど誰もいない。
静寂だ。

トータルで3時間も外で星空を眺めていた。
宇宙の中を散歩している気分を素敵な夜を味わえた。