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時差通勤って意味ある? 国土交通省の資料を調べてみた

新型コロナウイルス対策として、テレワークや時差出勤を推奨する会社が増えているようだ。2月19日(水)午前中には、Twitterトレンドに「時差出勤」が浮上。ユーザーの所感が次々と投稿された。

私が勤めている会社では早々にテレワークの命令が下ったのだが、諸事情によりパソコンを会社に置いていたため、昨日に限り出社することに。

会社から「ラッシュ時は避けてね~」とのお達しがあり、いつも9時15分くらいの電車に乗るところを、今日はそれより30分ほど遅い電車に乗ることに決めた。

人がまばらな駅のホーム。電車もきっとすいているだろう。何なら座れるかも――しかし、電車が到着したとたん、愕然とした。

いつもより人、多くない...?

気のせいかもしれない。でも気のせいじゃないような気もする。たぶん多い。いや、絶対多い。

Twitterを開いた私は、冒頭で紹介した「時差出勤」のトレンドを発見。ついでに、検索窓で「時差出勤」と打ってみた。すると、「時差出勤 意味」との候補が。心を見透かされたようだった。みんな、「時差出勤 意味ない」と感じ、同士を探していたのではないだろうか。

でも、この時差出勤は本当に意味がないのだろうか。疑問に思った私は、簡易的にだが、混雑率のデータを調べてみることにした。

まずは乗車率の目安から

混雑率の目安

これは、国土交通省発表「三大都市圏における主要区間の平均混雑率・輸送力・輸送人員の推移」に記載されている、電車の乗車率の目安だ。以下、引用。

100% 定員乗車(座席につくか、吊革につかまるか、ドア付近の柱につかまることができる)
150% 広げて楽に新聞を読める
180% 折りたたむなど無理をすれば新聞を読める
200% 体がふれあい、相当圧迫感があるが、週刊誌程度なら何とか読める
250% 電車がゆれるたびに体が斜めになって身動きができず、手も動かせない

この後に引用する乗車率のデータと照らし合わせると、「いつも私が使っている路線、もっと混んでない?」という気がしないでもなく、体感としては30%くらい差があるように思うのだが、いったんはこれを念頭に置いて読み進めてほしい。

路線別の混雑率 平均は?

続いて、国交省発表「平成29年度 東京圏における主要区間等の混雑の見える化」から、首都圏の主要区間の乗車率を見てみよう。

調査対象は首都圏の31路線・37区間。ピーク時とその前後1時間=3つの時間帯の混雑具合を算出している。この3つの時間帯は、路線や区間によるが、だいたい

■時間帯1 6~7時にかけての電車
■時間帯2 7~8時にかけての電車(※ピーク時)
■時間帯3 8~9時にかけての電車

というイメージ。

国内で最も多い始業時間は「9時(36.9%)」(マイナビ調べ)で、東京都の平均通勤時間は「43.8分」(エイブル調べ)なので、始業に間に合うよう7時台後半の電車に乗り、8時台後半には到着するという計算なのだろう。

では、それを踏まえて主要区間の乗車率を確認してみよう。

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37区間×3つの時間帯=全111パターン。この乗車率を愚直にならせば、平均乗車率は139%ということになる。

そして、赤字は通常時の平均乗車率が139%を下回っているところ。時間帯1については37区間中24区間、時間帯3については37区間中31区間が該当する。

もし、通常はピーク時(時間帯2)に出勤していた人たちが、早めの出勤(時間帯1)、もしくは遅めの出勤(時間帯3)に移行したのだとしたら? 時間帯1・3で出勤していた人々は、いつもより乗車率が高い電車に乗らなければいけないということになる。

ちなみに、私は時間帯3の人間(始業時間は10時ごろと遅め)。駅のホームで愕然としたあの風景には、いつもはピーク時に出社していた人が含まれていた可能性がある。Twitterで「時差出勤 意味ない」と呟いていたのも、もしかすると時間帯1・3の人々だったのかもしれない。

とはいえ、実際は、時差出勤の"時差"のレンジが~12時くらいということも考えられるし、リモートワークが行われている企業もあるはずだ。平均乗車率は139%を下回っているだろう。2月19日(水)はまだ時差出勤が始まったばかりで、通常は9時出社の人がいきなり12時に出社するのはかなり勇気が必要だったかもしれないし、今後もう少し分散されることも考えられる。

それでも、幼い子どもがいる家庭などでは、自分の都合だけでスケジュールを決められないので、ずらせたとしても30分~1時間くらいが限界かもしれない。何より、リスクの総量は変わらないのではないだろうか。乗車率がならされ、ある区間の混雑率が200%から150%になったとしても、その分が別の時間帯に流れるのであれば、ピーク時出社の人のリスクが減った分、その前後の時間帯に出社している人のリスクが上がるだけだ。

ものすごく簡易的な計算をもとにした安直な結論だが、私は、時差出勤の効果はないように感じた。というわけで、2月いっぱいはリモートワークしまーす!

恐怖のおまけ...

「時差出勤」で検索したときのGoogleの強調スニペットには「特に8~9時の間は公共交通機関が混雑しがちですが、この時間を避けることで通勤へのストレスも軽減きる」との情報が。

時差出勤

ピーク時に出社していた人(というか企業)がこれを鵜呑みにし、安直に1時間程度しかずらさなかったら、本当に平均乗車率139%だな…恐怖…。

TOP PHOTO: ©Hugh Han on Unsplash