マローのブログ翻訳:ナドゥの状況に関して

ナドゥの状況に関して
今週、この件がコミュニティで大きな話題になっているので、議論に私の考えを加えたいと思った。私の焦点は禁止ではなく、禁止に至った舞台裏のプロセスにある。私は首席デザイナーなので、この状況のデザイン要素に焦点を当てたい。

我々がMTGを作るとき、それを最高のものにするために行うことがいくつかある。まず最初に、我々は反復ループと呼ばれる方法でデザインを行う。つまり、何かを作り、それをテストプレイをし、フィードバックを得て、そのフィードバックに基づいて変更を加え、次の反復ループを始めるのだ。私たちは、セットがロックされる(別名「これ以上変更できない」)前に、できるだけ多くの反復ループを行うようにしている。

そのラインをどこに設定しても、変更を加える最終日がある。その最終日を早めても、物事を改善するための反復ループが少なくなるだけで、何も変わらない。また、私たちは直前に沢山の変更を加える。その大半はゲームをより良くするためのものだ。私たちがミスをした時に焦点が当てられるのは理解できるが、それは変更の本当に小さな割合に過ぎない。

また、カードをデザインするときはいつも、このカードは誰のためにあるのかと自問する。ゲームプレイを最高のものにしようとするなら、誰がそのカードを使うのか、どこで使うのか、そのカードで何をするのかを理解することは助けになる。もちろん、MTGのようにモジュール化されたゲームでは、プレイヤーが予想に反して動くことも多いが、一般的に、このプロセスは最良のデザインに繋がるのだ。

我々は2つのプレイデザインチームを持っており、1つは競技プレイに重点を置き、もう1つはカジュアルプレイに重点を置いている。競技プレイデザインチームは、どのカードが競技プレイを狙えるかを決定する(覚えておいてほしいのは、我々は環境の行く末を予想しているということで、何千万人ものプレイヤーを楽しませるだけの複雑な環境を作る必要がある。) そして、カジュアルプレイデザインチームは、競技的な役割を果たさないカードがどのようなカジュアルな役割を果たせるかに注目する。

今週人気のあった台詞にいくつか答えておこう:

「統率者戦のためにカードをデザインするのをやめろ」
-競技フォーマットの性質上、関連のあるカードは限られている。より競争力のあるカードを作り始めると、それは既存の関連カードの中で最も弱いものを置き換えることになる。それがTCGの仕組みだ。つまり、セットの内の全てのカードが(あるいはコモンやアンコモンがリミテッド環境を機能させる大きな役割を持っているので、レアや神話レアだけが)競技的な役割を持っているわけではない。そのため、よりカジュアルな環境でどのように活躍するかを検討する。

そうしない理由はないのだ。カジュアルを考える際に統率者戦を考慮しないのは間違いだ。統率者戦は最もプレイされ最も大きな支配力を持つフォーマットなのだ。我々が競技的には有効だと感じなかったカードのカジュアルな影響を考慮したことが、そのカードを壊したのではない。我々がゲームの構成要素との相互作用を見逃し、壊れていると考え、やめてしまったもの(コスト0の起動型能力)が、古いフォーマットではまだ生きていたのが原因なのだ。

「直前の変更をやめろ」
-ニュースで飛行機を見るときはいつも何か悪いことが起きている。墜落したり火事になったり、緊急着陸したり、ドアが外れたり。なぜ我々がまだ飛行機を作っているのか?飛行機はとても便利で、クローズアップされるのは最悪の事態だからだ。焦点は人々を誤った仮定に導く可能性がある。もし、我々が直前の変更をやめたとしてもMTGは良くならないだろう。より多くの(我々が発見し変更した)壊れたカードが通り抜け、より多くのカードがプレイできなくなるだけだ。最後の最後まで修正し続けるという我々のプロセスは多くの良いことを行っている。もしかしたら失敗の焦点にはならないかもしれないが、最後の最後まで修正することはより良いデザインに繋がるのだ。

「何事にもプレイテストは必要だ」
-私や我々のチームの仕事は白紙の状態から存在しないものを存在させることだ。それは簡単なことではない。プレイデザインの仕事は更に難しいと思っている。彼らは1年先、何千ものピースが動くバランスの取れた環境を作ろうとしている。そして、我々の側でそれを解明できたとしたら、プレイヤーたちが同じものを遊んで1分後に解明してしまうということを意味する。ちなみに1分というのは、MTGの全プレイヤーが我々ができる限りセットでプレイしたのにかかるのと同じ時間である。何千万人のプレイヤーとほんの一握りの我々だ。1日に全てをテストする時間はないので、プレイデザインチームは問題になる可能性が高いと思われるものをテストするのだ。彼らは(長年の経験に基づき)計算されたギャンブルを行い、問題を引き起こす可能性が最も高いものをテストする。何かがすり抜けることはあるのだろうか?ないはずがない。だからといって、ミスの可能性を低くするためにプロセスを継続的に改善しないという意味ではない。

MTGのデザインは難しい。私は来年でこのゲームに携わって30年目になるが、これまでで最も才能のあるチームに恵まれていると思う。更にセットの反復デザインをするように、マジックを作るプロセスも反復デザインする。現在のMTGの作り方は私が始めた頃のMTGの作り方とは何光年も違っており、より良いものになっていると私は信じている。("私がより遠くを見てきたとすれば、それは私が巨人の肩の上に立っているからである。")

最後に一つ。私はMTGのデザインにおける透明性を常に推し進めてきた。この地球上に私以上に書いたり/話したりしてきたものはいない。MTGがゲームとしてより良いものになるのは、MTGを作っている我々が何をしているのかをプレイヤーが理解する洞察力を持っているからだと、心から信じている。

その見返りとして、1つだけお願いしたいことがある。MTGの舞台裏を分かち合うために時間を割いてくれているデザイナーたちをどうか優しく扱ってあげて欲しい。私たちは誰もが感情を持った1人の人間だ。フィードバックをすることは悪いことではないが、礼儀正しく伝えることができるはずだ。


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