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143 学校祭の取組まとめ2009→2023

僕の学校祭で担当したものは、
1校目
2009大道芸
2010大道芸
2011大道芸
2012校内装飾;不思議の国のアリス
2013校内装飾;ハローウィーン
2014校内装飾;スイーツデコレーション
2校目
2016ステージ発表;オムニバス形式の劇
2017ステージ発表;ディズニーランド(トイストーリーマニア)
3校目
2020生徒会;フェス(アラフェスに影響を受けて)
2021生徒会;和(昨年度の逆をいこう)
2022;諸事情で参加できず。
2023校内装飾;ライブ(推しの子に影響を受けて)でした。

2009年〜2011年大道芸
初任校は、1学年1学級で生徒数100名弱の片田舎にある学校でした。学校祭はステージ発表、合唱コンクール、部活動発表(吹奏楽部による演奏)で構成されていました。学級という単位で取り組むものは合唱コンクールのみで、よさこいや演劇などのステージ発表は、各学年7、8名ずつ総勢20数名で縦割り班をつくって活動する。準備期間は3週間くらいでした。
ジャグリングやシガーボックス、カップス、ディアボロなどで技を磨いて披露するステージ発表の担当でした。この頃は、自分も生徒と一緒になってひたすら練習して技の習得のためのコツを伝えることをしていました。
3年目からは、大道芸の見せ方を工夫しました。帯広の勝毎花火大会のように音楽に合わせて大道芸を見せることにチャレンジしました。毎年同じ技を見せられても、観客が飽きてしまうことと、メンバーの運動能力によって取得できる技のレベルが高いとはいえないときもあって、そういう場合でも「見映え」する方法を模索した結果、そういう方法に行き着きました。

2012年〜2014年校内装飾
 「設営展示」は、メイン会場となる体育館と玄関から体育館までお客さんが通る通路の装飾をする班です。異動してきた教職員が口々に「ここまで大規模で丁寧な装飾活動を行う中学校はない」と驚くほど特色ある活動でした。また、学校祭テーマを模造紙16枚分の大きさにする作業も毎年行う仕事の一つとして位置付けられていました。その他、当日の仕事がないためステージ発表のすべての音響・照明も担当していました。そのため、ステージ発表のグループや吹奏楽部との音響・照明のリハーサルを行う必要があり、学校祭直前の1週間は半数以下の人数で作業しなければならない制約があります。予算は4万円強割り当てられていました。
 僕の分析では、縦割り班ごとに集まるメンバーの気質は、毎年だいたい決まっていました。運動が得意で体育会系のノリな生徒は「よさこい」「大道芸」に集まり、お笑い好きや自己主張することが得意な生徒は「演劇」に集結する。私の担当する「設営展示」には、モノづくりや絵を描くことが得意な生徒というよりは、表舞台に立つことが苦手で消去法で選ぶ生徒が多い傾向にありました。

2 「何をつくるか」は綿密に計画する

教室展示は実際に活動する前の方が、活動の成否における大きな比重を占めている。そこで、「何をつくるか」を決める準備段階において、留意したことを書き記していく。

(1)「何をつくるか」は綿密に計画する
①事前に教員間でテーマを話し合い、「何をつくるか」のアイディアを具体化する
生徒たちと相談する前に、教員間でしっかりシミュレーションしておくことが活動の成否を決める。流行りや生徒の嗜好を想定し、「何をつくるか」を決める大きなテーマ設定を2、3個決めながら、次のようなシミュレーションをしておく。
・狭すぎず広すぎないテーマは何か。
・そのテーマは何をつくるかをイメージしやすいか。
・3つの担当区域(玄関・廊下・体育館)のリーダーは誰になりそうか。
・リーダーの嗜好は何か。
・担当区域ごとの班編成はどうするか。
・想定される小さな問題は解消できるテーマ設定か。たとえば、集中力が継続できない子も長い作業期間を飽きさせずに作業できる工夫が可能か、手先が不器用な子も作業することができて達成感を味わうことができるかなど。

②モノづくりが得意ではない生徒でも「何をつくるか」をイメージしやすいようテーマを設定する
 教職員で事前にテーマになりそうなものを考えておくが、基本的なスタンスはゼロから3年生リーダーたちに「何をつくるか」のテーマを考えてもらっている。しかし、何もないところから生徒たちだけでテーマを設定することは非常に難しい。必ず話し合いが行き詰まる場面が出てくる。
そのとき、事前に教員間で決めたテーマ設定を2、3個提案し、選択肢を与えることにしている。その際、「何をつくるか」をできる限り具体的に提案することがポイントである。少し表現が強引かもしれないが、「とりあえず先生のアイディアでいってみよう」と思えるよう説得する。
私が担当した平成21年度は「ハローウィン」、平成22度は「不思議の国のアリス」(本稿に掲載されている写真のテーマ)、平成23年度は「スイーツデコレーション」がテーマになった。
テーマが決まれば、担当区域ごと(玄関・廊下・体育館)に「何をつくるか」を教員とリーダーで詰めた話をする。
インターネットサイトで、「学校祭」「教室展示」と画像検索すれば、たくさんの参考資料を見ることができる。たとえば「折り紙」「切り絵」という検索ワードはバリエーションも豊富で参考にしやすいものが多い。また、YouTuberが投稿している「〇〇をつくってみた!!」という動画はとても参考になる。生徒たちは好きなYouTuberの真似をしてみたいという願望をもっているため、学校祭活動のモチベーションアップにもつながる。動画を見ることで、どんな材料を使って作業工程にどれくらいの時間がかかるのかを具体的に見通すことができたり、生徒自身が自分の力量を考慮して作品をつくることが可能かどうかを判断しやすいことも利点だ。実際に、水溜まりボンドという2人組のYouTuberが段ボールでコスプレの衣装をつくっていた。その動画を参考にし、1年生が完全再現することに成功した。学校にないものはどうすれば代用できるか、費用を抑える方法は他にないかなど試行錯誤しながら楽しそうに段ボール工作に取り組んでいる姿が印象的だった。
また、幼稚園・保育園の保育者向け総合雑誌「PriPri」(世界文化社)や「Piccolo」(学研マーケティング)等は、毎回重宝している。簡単に作ることができ、可愛く、そして綺麗で見栄えするものが多いため重宝している。
これらを参考に3年生リーダーの「やりたいこと」を最大限表現した形を考え、「自分で考えた感」を演出した。

③「何をつくるか」は、教員の考えが入る余地を残し、作業が遅れても出来栄えへの影響が少ないよう配慮する
3年生リーダーが「やりたいこと」以外は、教員で決める。予算や作業人数、制作時間等を想定し、「やりたいこと、できること、やるべきこと」を最終調整しなければならないからだ。この調整はとても時間がかかる。そのため、教員自身の「やりたいこと」も入れ、楽しみながら考える心の余裕をつくることをお勧めする。教師自身の「やりたいこと」を入れることで、3年生にとって少しハードルの高いことに挑戦させることにつながり、より一層達成感を味わうことができる。
 私がどうしてもやりたかった3Dのバラである。色画用紙のジャンボロール画用紙を使って、折り紙で作る花弁が八枚のバラを12倍のスケールにした。画用紙は折り紙よりも固くねじったり折り曲げることがとても困難で、本番までに作業が間に合うかどうかハラハラしたり、紙の一部を裁つ工程は失敗が許されない緊張感がある中で、3年生リーダーと二人三脚で作業した。お客さんが体育館に入った瞬間、割れんばかりの歓声が3年生リーダーに向けられ、満足げな表情を浮かべた彼の表情が今でも忘れられない。

④見た人が「すごい!」と思わず声を上げてしまう工夫する
1年生は、お花紙で花作りやはさみで同じ形のものを切り抜く作業など量で勝負させる。その理由は4つある。
・簡単につくれるものだとしても、たくさん並んでいるだ
けで見た人たちは「すごい!」と言ってくれやすい。
・徐々に作業効率が上がる。
・制作した数によって多少微調整が可能。
・制作したものは随時飾り付できるため、周囲から「かわ
いい」「すごい」などの反響をもらいやすく、モチベー
ションアップにつながる。
特に3つ目の理由が重要だと考える。例えば、右の写真で、うさぎの数が1つの窓あたり3匹ずつ貼られている。仮に、当初の予定とは変更してうさぎの数を2匹ずつにしても、見ている側からすれば何ら違和感はない。

(2)「どのようにつくっていくか」はモチベーションの維持を第一に考える
①できる限り異学年でグループをつくり、作業を進める
できる限り異学年でグループをつくり、作業を分担する。つい弱音を吐いても励まし合えたり、「次は何をしますか?」「これ手伝おうか?」という声かけが自然と起こり、作業せずにだらだらと過ごしてしまうことを最小限に抑えることができる。
また、異学年でグループを組むことで、周囲からの反響は3年生リーダーに向けられ、その喜びを独り占めすることができるのではないかと考える。

②休憩時間中は、互いに褒め合うことを意識させる
「わぁ、すごい!」「もうこんなに作業進んだの!?」などと感嘆する声が飛び交う状況を生み出すため、担当区域の休憩時間を揃え、他の区域を見に行くよう声をかける。また、管理職や担任の先生が写真撮影で来たときは、誰がどのように頑張っていたのかを説明し、ここぞとばかりに褒めちぎってもらう。

③音楽を流しながら作業させる
単純な作業が続き、飽きと疲労感が起きやすい。そこで、音楽をかけることで、集中して作業できるよう助長する。

④予算を少しだけ残し、日程の中盤で使用する
 作業を進めると、当初の予想とずれが生まれる。例えば、糊やテープなどの接着や固定に使うものの量は予想しにくい。また、作業が早すぎることもしばしばある。臨機応変に対応できるよう、予算を少しだけ残しておくことをお勧めする。

2校目
2016年は、ステージ発表;オムニバス形式の劇を実施した。前任校の校内装飾では、一人一人のやりたいことを大事に活動してきました。また、担任と副担任合わせると3人いるので、活動の同時性を大事にしながら所属教員の多さのアドバンテージを生かす方法を探し、札幌の堀裕嗣さんのオムニバス形式の劇をすることにしました。
2017ステージ発表;ディズニーランド(トイストーリーマニア)でした。劇よりもエンターテイメント性のある演目で、さらに一人一人の個性を生かしたものを模索していました。そして、1月にディズニーランドへ家族旅行に行ったばかりだったこともあり、ディズニーランドをモチーフにした演目にしました。ダンスを習っている子がいたので、その子を中心にタップダンスをしてもらい、ピアノが得意な子がいたのでピアノ連弾と歌が得意な子にアナ雪の歌を歌ってもらいました。その他には、トイストーリーマニアをモチーフにしてボールのプールのカラーボールを観客に配布し、ダンボール等で作ったバズのコスチュームやコスプレしたキャラクターが出てきたら観客がその的をめがけて投げてもらい、観客も参加型のステージ発表にしました。

3校目
僕が赴任した頃は、学校祭という名の学習発表会でした。社会見学や宿泊研修、修学旅行での出来事を劇化するというものでした。訪問先や体験内容が毎年同じなので、学年が変化するだけで発表内容はほぼ同じでした。それでは、子どもたちの個性を生かし、能力を伸ばすことにはつながらないな、と思っていました。今思い返すと、赴任してまず考えていたことは「学校祭を変えたかった」ということだったような気がします。
赴任して3、4年目はたまたま生徒会担当(自動的に学校祭の全体統括にもなる)になったことと保護者がいないコロナ禍のアドバンテージをもらえたことで、少しずつ生徒たちの心が解放されるプログラムづくりを進めることができました。
当時、僕が提案しようと思った学校祭の目的は、次の(1)〜(3)でした。
(1)さまざまな文化的活動を通して個性を伸ばし、自主性、創造性を高める。
(2)一人一人が人間的な触れ合いを深めながら、目的に向かい協力してやり遂げることにより「頑張ってやりきった実感」や「誰かの役に立てた実感」を経験し、責任と協力の態度を養う。
(3)人前で発表する能力を育てたり、他者の発表等を見たり聞いたりする際の望ましい態度を養う。

「個性」「自主性」「創造性」「人間的な触れ合い」「頑張ってやりきった実感」「誰かの役に立てた実感」といった情景を、同僚と共有したかった。当時を振り返ると、「人間的な触れ合い」「頑張ってやりきった実感」「誰かの役に立てた実感」といったギュッとした熟語を使わずに噛み砕いて丁寧にイメージを共有したかったのだと思う。けれど、この文言は日の目を浴びることはありませんでした。
過去の記録を見ると、そもそも当時のうちの学校には、総合的な学習の時間も体育祭も学校祭にも話し合い活動がほとんど位置づけられていなかったようです。プログラムの順番を考える作業も生徒会の役割になり、裁量権が与えられ流ことになったことを伝えると、「先生、そういうことがしたかったんですよ、僕たちは」と声を出して喜んでいる姿が目に焼き付いています。
コロナ1年目は、日本各地で音楽ライブやフェスが中止になっていたこともあって「音楽フェスのような雰囲気をつくりだしたいね」ということになり、みんなでタオルまわししたいよね、ライブのチケットのようなものを発行してみんなに配ったり、チケットの代わりになるリストバンドをみんなに手首につけてもらうなどはどうか?というアイディアが出ていました。この学校で、どこまで実現できるか、僕らのネゴシエート勝負が始まったのでした。管理職や同僚と何度も何度も擦り合わせをしてきました。生徒に「”10提案して3通す作戦”でいくからね!たくさんできないことはあるけれど、少しずつできることを増やしていこう!」と生徒会の子たちと話していたことがとても懐かしいです。

「コロナ禍で生徒は我慢を強いらているので、どうか学校祭だけは」「コロナ禍で保護者が来れないので、どうか子どもたちの思いを実現させてもらえませんか」とたくさん交渉したと思う。


コロナ2年目は「和」がテーマだった。去年とちがった珍しいテーマでいきたいね。それが和やお祭りでした。クールジャパンといった感じでしょうか。落語風生徒会長挨拶と学校祭公式グッズを作りたい、を実現することが命題だった。この実現も本当に大変だった。2年間を通じて、有志発表(誰とメンバーを組んでもよくて、ダンスや歌などをステージで披露できる)に出られる人の基準を低くしたことと衣装の制限を少しだけ緩くしたことだ。これまでは、夏休み明けのオーディションの日に、ほぼ完璧なものを披露できないと出場停止になってしまっていたが、僕がついてからはグダグダでもいいからオーディションに参加してくれたらOKにして本番までに練習するように少しだけサポートしてあげて、当日ステージで発表する人を増やしていった。

今年は装飾班の担当でしたが、僕が生徒会担当だった頃の学校祭を知ってる子たちが中3にいて「あの時のような盛り上がりを自分たちもしたい」と言っていて、そのときの精神が受け継がれていきました。
生徒会からライブ感を!と発注されたので、ライブ感の演出方法を考えていきましたね。やっていないけれど、キラキラ紙吹雪を見ながら「きれいだね」と言い合いたいよね、とか無謀なアイディアも含めてどんどん出していきました。
僕ら大人は、ライブや野外フェスに参加したことがあるけれど、生徒たちはそういう経験がありません。ライブを一度も体験したことのないのにライブ感をどうしたら演出できるかが、今回の最大の命題でした。
体育館入り口にゲートをつくることはすんなり決まりましたが、そのほかが全然決まりませんでした。

とりあえず、韓国でライブが始まる前に撮影する人生4カットというのがあるそうなので、それをモチーフにフォトフレームを作成することにしました。

ただ、メインとなるものがなかなか決まりませんでした。
フェス会場では、よく大きなフェスのロゴがあり、その前で写真を撮ったりしてフェス気分を楽しむ人が多いですが、そういうものをつくろう、までは決まっていたのですが、どの場所にどのくらいの大きさのもので、どうやって光らせるかまでは決まっていませんでした。アイディアが決まらず1ヶ月半が経った頃、たまたま旭川の買い物公園で見たハートのモニュメントがありました。

それに目を奪われて、これだ!と思い、西村公一さんのハートをつくってみることにしました。また、TVでドット絵が流行っているというのを見て、ドット絵を検索すると付箋紙でドット絵アートがあることを知り、簡単で可愛いのでそれもやることにしました。

装飾係の難しいところは、時間とお金の調整でした。今回も大人が作業するわけではないので、生徒でも作業が進められて、時間内に終わるかどうかの見極めには今回もとても労力が裂かれました。尚且つ、予算内に収まるようにしなければいけないのは、とても骨が折れる作業です。今回は特にギリギリで、最後の購入物は学校祭前日に到着しました。


今年の学校祭は、生徒会からサイリウムなど光り物を手に持って振り回したり、「小さな恋のうた」をバンド演奏に合わせて歌ったりした。全校生徒が席に座らず密になってうじゃうじゃしながら楽しんでいる姿が印象的でした。とても良い表情をしている姿を見て、これまでの苦労がすべて吹っ飛びました。そして、今日の学校祭で普段あんなに大人しい子たちが、楽しそうにしていて、子どもが子どもらしい表情を過ごしていて、僕の見たい姿がこうやって目の前に現れている気がしました。僕一人の力だけではないですが、6年間がんばってきたことが報われた気がして、何度も何度も泣きそうになってしまいました。僕にとっても、とても感慨深い時間でした。