162 僕にインクルーシブ発想の授業づくりの大切さに気づかせてくれた2人のことを思い出していた。
都市部では、私学やフリースクールなど多様な選択肢がありますが、私たちが勤務する北海道北部には、もちろんそういう選択肢はありません。だからこそ、踏ん張って「ここ」を変える以外に方法がない。そういう使命感をもって仕事しています。
インクルーシブ発想の授業づくりの大切さに気づかせてくれた2人とのエピソードを紹介します。
1人目は、A さんは数学がとても苦手でした。連立方程式の計算をすると、自分の字が乱雑なこともあって途中で計算ミスをしてしまいます。ある日、A さんに「黒板を使って計算していいよ」と伝えて黒板で計算させると、正答率が上がりとても喜んでしました。
2人目は、数学が少し苦手な B さん。猛暑の 7 月、中1の数学は方程式の学習です。文字式の計算でつまずいていた B さんにとっては、学習へのモチベーションが保てなくなってくる時期です。猛暑だということもあり、「今日は好きな場所で学習していいよ。ただし、たくさん練習してね」と伝えると、B さんは廊下の一番涼しいところで学習していました。
終了のチャイムが鳴って B さんが屈託のない笑顔で私にこう言いました。「先生、見てください。今日はこんなにやりましたよ。初めて1時間の授業で、こんなに練習しました。」。
2人との出会いによって、これまで以上にインクルーシブ発想を大事にして数学の授業をしなければならない、という思いを強くしました。
インクルージョン研究者である野口晃菜氏は、著書の中で『同じ学年の子どもたちが同じペースで同じ内容を同じ方法で学ぶという学校の構造が、社会的障壁を生み出すことにつながっている。』とおっしゃっています。子どもたちが大人になったとき、多様な人たちが出入りする中で、ゆるやかにつながり、なにかあった時にはすぐ動く。そういう町になっていることを願って、今後もインクルーシブ発想を大事にして授業づくりしていきたい。