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2度目のP5R、そしてあの人について【ネタバレあり】

はじめに

2022年10月21日、主に私待望のペルソナ5 ザ・ロイヤルのNintendo Switch移植版が発売されました。長かった…本当に長かったです…。そもそもSwitch版を出すのが3年遅かった。でもこれで、ペルソナのファンコミュニティにもご新規さんが増えることでしょう。

それはいいとして。
オリジナルとなるPS4版でも1度P5Rを真エンドまで終わらせている私ですが、待ち焦がれたSwitch版発売にあたり、当然のように再び真エンドまでクリアして参りました。
以下、3学期を含むゲームの重大なネタバレを含みます。
3学期未クリアの方、あるいはプレイ予定の方は閲覧をお控え下さい。

また、初回プレイとなるPS4版の時に書き殴った感想と考察めいた文章は以下の通りです。よろしければそちらも合わせてご覧ください。

「芳澤かすみ」、そしてジョゼ

特にこれといった理由はないのですが、P5をプレイする際には何となくその周回での目標を決めて遊ぶ、という癖のようなものがあります。
Switch版で1周目を遊ぶにあたり、何となく決めた目標が2つあって、それが

  • 芳澤さんコープ(信念)MAX&恋人にする

  • 隠しボスであるジョゼの撃破

でした。
一つめの信念コープMAXは割とはっきりした理由がありました。
前回であるPS4版では3学期に入ってから何となく放置してしまい、そのままだったこと。また、主人公であるジョーカーの二つ目のShow Timeが信念コープをMAXにしないと解放されないこと。
あとどうでもいいことですが、サントラに収録されていた「あいつはトリック☆スタ→」というタイトルからしてインパクトありまくりの楽曲が結局どこに使われていたのか分からず、もしかすると信念コープではないか?と睨んだこと。

Show Timeについてはもう…ストーリーの進行に従って解放されますってシステムメッセは嘘だったの?って感じですね。主人公なのに3学期に入って特定コープをMAXにしないと全部は解放されないって…。
これでようやく全種類解放できました。
もう一つの「あいつはトリック☆スタ→」ですが、結論から言うとコープ関係なくとあるリクエストのクリア報酬みたいなもので、しかもイベントに使用されるでもなくマイパレスにひそやかに追加されるというものでした…。

芳澤すみれについては、初見時からその立ち位置の重要性の割には何となく「薄味」なキャラだなぁというのが私の印象だったのですが、コープMAXにしてもあまりその印象は変わりませんでした。すごく頑張って、でも挫折して、そこからまた頑張って、というキャラなのですが、もっとそれ以外のキャラクタ性を掘り下げてほしかったなぁと。ファンの方には申し訳ない。

大目標の二つ目であるジョゼ撃破。これは初回プレイ時、そもそも戦えることを知らず、ラスボス直前のセーブしかなくなってしまい、泣く泣く見送った要素でした。
もちろん目的は彼の口からその謎を(多少なりとも)説明してもらうこと。
そのために序盤から意識してスタンプを集めたりしました。
ただ、事前に分かっていたことではあるのですが、明かされたその正体や目的はあまりにも抽象的で、はっきりしたことは分からないまま。明らかに今後の伏線を張ったという感じでした。いいのか、これで…?

ぼんやりした説明から私が予想したのは、ベルベットルームとはまた別の勢力が存在し、ジョゼはそこに所属しているのではないかということ。
あと、ジョゼとその周りはおそらくピノキオをモチーフにしており(明らかに人形めいた容姿、人の願いを叶えるホシ=「星に願いを」はディズニー版ピノキオの主題歌で有名、など)、人間のことを勉強して最終的には人間になるのが目的では…と予想していたのですが、この予想は外れそう。どうでもいいです。

丸喜拓人という男、その救済のようなもの

長くなりましたが、ようやく本題です。

3学期のシナリオを通してみて、今回スタッフが一番書きたかった人物というのは丸喜先生だったのではないかと思うのです。

彼は作中でも指摘されている通り、これまでとは違って悪人ではない。
その手段はどうあれ、この理不尽な現実を心から世の中のため、みんなのためと信じて、みんなが幸福になる(≒都合の良い)現実に書き換えようとしている。

これはいつかどこかで書こうと思ってそのままになってしまったのですが、スピンオフであるP5SとP5Rは全く関係のない位置付けでありながら共通項があって、それは「現実を前に挫折し、道を踏み外して苦悩する大人」を中心に据えたところだと勝手に考えています。

P5Sだとそれは各ジェイルの王であったり、(道は踏み外さないものの)仲間となる長谷川善吉だったりするわけですが、P5Rで一番力を入れて書かれているのは、やはり苦悩する大人であるところの丸喜拓人であると思うのです。次点が明智吾郎。

その人知れず苦悩する描写には妙に生々しさがあり、例えばアダムカドモン戦の後、ジョーカーを引き留めて吹っ切れたいと殴り合いまでやるシーン。
シンプルな実力行使でもジョーカーに敗れ、心の底から叫び声をあげる場面は声優さんの本領発揮といったところですが、そこまでしてようやく「吹っ切れた」という諦めの悪さ。
そこまで己の信念は固かったということでもあるし、一方でそこまでしないと諦められない…という生々しい描写に、ライターさんの力の入れようを感じずにはおれません。

もう一つ、電撃からPS4版当時に発売された攻略本には、スタッフにあれこれ深いところまで訊いたインタビューが掲載されているのですが、その中で丸喜に予告状を出すルブランでのシーン、丸喜が最終的に明智の生死を引き合いに出してしまうことを彼の弱さだと表現していて、何かリアルな描写だな、と思ったものです。

※私の書き方では語弊があると思われるので、原文(公式コンプリートガイド)を確認することを強くお勧めします※

…とまあ、ここまでは3年前も同じような印象でしたし、今回もその感想は変わっていません。
でも一つだけ、ちょっと考えが変わったところがありました。

丸喜先生に対する改心です。

怪盗団は丸喜先生のオタカラを奪うことに成功し、結局改心は為されます。
認知を、欲望を強く歪ませることになった元凶が具現化した姿は、一枚の新聞記事の切り抜きでした。
それはもうその通りで、丸喜先生がこんな極端な手段を使ってまで人々を幸せにしようとしたきっかけ、それは何より犯罪被害に遭って苦しむ恋人(だった)の存在に他なりませんから。

ただ、ここでこれまでの悪党のオタカラについて振り返ってみると、鴨志田はオリンピックのメダル、班目は「サユリ」、金城はスーツケース(の中の札束)、奥村パパは子供の頃欲しかったプラモデル、獅童は議員バッジ、冴さんは警察手帳だろうと言われていますが、彼女はおそらくオタカラを盗まれていません。

何が言いたいかと言うと、これまでのオタカラはほぼ全て本人にとって非常に自慢になるものであったり、あるいは強烈に憧れたものだったりするわけです。少なくともネガティブなものではありません。

一方、丸喜先生の切り抜き記事は、思い出すのも苦痛と言っていい記憶の象徴のようなものです。これまでの悪党が自負や憧れによって歪んでしまったというのなら、丸喜先生は苦痛と苦悩によって歪んでしまったと言ってしまってもいいのかもしれません。

そして、怪盗団によってそんな苦悩の象徴を盗まれ改心させられたというのなら、あるいは怪盗団による改心は、丸喜先生にとってある種の救済だったのかもしれない…と、今回エンディングを見て考えてしまいました。

丸喜先生の現実を受け入れる選択をした場合、ジョーカーをはじめ全員とりあえず幸せそうな現実を生きていくエンドになります。
以前、誰かがツイートしたのを見かけたのですが、その場合でも丸喜先生は幸せになっていない。怪盗団メンバーも全員丸喜先生のことを忘れ、一人静かに去っていく姿はとても幸福には見えません。
大衆の現実を書き換える力を手に入れたのなら、恋人の留美さんから自分の記憶はそのままに、彼女と彼女の家族に降りかかった犯罪そのものをなかったことに出来るはず。そうすれば自分も恋人も幸せになれるのに、このエンディングでもおそらくそうはしていないのです。
口では彼女は幸せに過ごしていると言いながら、自身のパレスの最深部には留美さんの立像があるくらい彼女のことを忘れられないのに。

あまりにも拡大解釈だとは思うのですが、欲望、というか執着の核を奪われることで、都合よく現実を書き換えるという極端な手段での幸福や彼女への執着をいい意味で手放し、改めて前を向いて生きるようになったのかな…とも思えるのです。都合のいい考察だとは思いますけどね。

ところでアザトースはペルソナに化けた何か別のもの説、まだ諦めていません。というか開発途中までそうだったんじゃないかなって思ってます。そっちの方が3学期の設定の矛盾点を色々と説明できるので…。

おわりに

ぐだぐだ意味不明なことを色々と書いて来ましたが、つまるところ3年ぶり3度目のP5、やっぱり大変面白うございました。
Switchへの移植もかなりの良移植で、PS4版と大差ない感覚で120時間超一気に駆け抜けましたし、この勢いで(時間さえあれば)2周目も始めたいなと考えている次第です。

正直に言うと、ペルソナシリーズの今後について私なりに思うところもあるのですが、出来ればこれからもこのクオリティを維持しつつ、ご新規さんもたくさん招きつつ、シリーズが続いて行けばいいなと勝手に願っております。

でも頼むからオン機能ありでSwitch版の画面が暗くなる不具合は放置しないでくれ。

それでは、もし機会があればどこかでまたお会いしましょう。

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