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デジタルIDウォレットアプリ「PASS」ー新しい地域創生をカタチに。

こんにちは!ELEMENTS採用広報担当です。

今回は、私たちELEMENTSのグループ会社、株式会社Liquidが開発・提供しているデジタルIDウォレットアプリ「PASS」について、開発部メンバーにインタビュー!
昨今、EUをはじめ世界的に普及拡大が見込まれ、その取り組みや今後の技術開発に注目が集まる「デジタルIDウォレット」。そんななか誕生した「PASS」の開発背景や実現する世界について、たっぷりとお話いただきました。

<インタビュイー>
・渡邉さん(2016年入社)/ VPoE・「PASS」開発責任者 ※写真右
・大西さん(2024年入社)/「PASS」事業責任者兼プロダクトマネージャー ※写真左


個人情報を安全に管理・提供するデジタルIDウォレットアプリ「PASS」

─ まずは簡単に自己紹介と、この「PASS」における業務や役割について教えてください。
渡邉:2016年5月にWindowsアプリケーションエンジニアとして入社し、今年で入社9年目を迎えました。2023年にVPoEに就任し、2023年2月からPASSチームに参画。開発責任者として、システム全体の大枠の設計や仕様の整理、チームメンバーへのタスクの割り振り、進捗管理などを行っています。

大西:私は2024年2月に入社し、現在4ヶ月ほどが経ちました。前職でスマート農業や中小企業支援による地域活性化に携わっていたこともあり、入社後すぐにPASSチームへ。事業責任者とプロダクトマネージャーの兼務という形で、お客様や代理店との折衝からウェブマーケ、企画業務全般、要件定義などに取り組んでいます。

─ お二人が携わる「PASS」とはどのようなプロダクトでしょうか。
大西:PASSは、氏名や住所、生年月日、経歴、資格、決済、資産、健康情報などの自分自身に関するあらゆる情報を、スマートフォンで一元管理できるようにするデジタルIDウォレットアプリです。職場や銀行、病院、ライブ会場、SNS…といろいろな空間があるなか、その空間ごとに必要とされる個人情報は異なってきますよね。にもかかわらず、現状は過剰な個人情報を提供しているケースも少なくありません。PASSはユーザーの個人情報を安心・安全に保管して、必要なサービスに必要な情報だけを簡単に連携できるプロダクトで、マイナンバーカードや顔認証であらゆるシーンにおける“認証”をスマート化させます。

─ この「PASS」の開発、リリースに至った背景を教えてください。
渡邉:数年以上前から「デジタルIDウォレット」の構想が世界的に議論されはじめ、現在ヨーロッパでは法整備も始まっています。このデジタルIDウォレットは自身の情報を自分で管理し、必要に応じて他者(第三者の組織)に提供できる仕組みで、我々も当時から民間によるデジタルIDウォレットの開発を検討していました。とはいえ、コンセプトの認知度も低い中どのように広めていこうか…?と手探り状態だったんです。そんななか、まずは足掛けとして2022年にワクチン接種証明のためのアプリをリリースしました。これはユーザーがワクチンの接種証明を保持・提供できるもので、宮城県で開催された音楽フェス「ARABAKI ROCK FEST.」で使用されました。その後、同じ“個人情報を管理する”という概念の延長線上にあるプロダクトとして、電子チケット管理アプリ「PASS for Music」を開発。こちらも2023年と2024年の「ARABAKI ROCK FEST.」で導入いただき、来場者の電子チケットの受け取りや分配・表示を可能にしました。
このようにデジタルIDウォレットの基盤を作りつつ、自治体向けにも利用できる形でさらに進化させたのが、今年リリースに至った「PASS」です。こちらは、石川県加賀市の「加賀市版スマートパス構想*」に採用いただき、2024年の3月に本格稼働を開始しました。

* プレスリリース:顔認証で様々なサービスを“手ぶら”で利用できる「加賀市版スマートパス構想」を始動


スマホや顔認証を活用した仕組み

─ 開発のきっかけのひとつには、グループ全体として認証技術を強みとしているというところもあったのでしょうか?
渡邉:そこに関してはそういうわけではないですね。Liquidでは「認証を空気化し、滑らかな世界をつくる」というビジョンのもと、これまでさまざまなプロダクトを開発してきました。この「空気化」という言葉は、「いつ、どこででも」「無意識のうちに」あらゆるサービスを安全・簡単に利用できることを指しています。そして、いわゆる“スマートシティ”の実現においても「そういう社会であるべきだよね」といった私たちの想いが根底にあるわけで、自社技術云々のもっと手前にある、長年抱いてきたビジョンの存在によってこのデジタルIDウォレットが生まれています。

─ なるほど。 まさにそのビジョンを体現するように、加賀市ではすでに稼働が始まっているとのことですが、実際にどのような場所で使われているのでしょうか。
大西:たとえば、有事の際に市民の皆さんが集まる避難所で、防災訓練の一環としてPASSによる顔認証受付を実施しました。この訓練では、紙を使った手書きの受付に比べて40%の受付時間削減が叶っています。その他、子ども向け屋内遊戯施設「かがにこにこパーク」ではPASSアプリの利用者は1,000名を超えており、2024年3月のサービス開始以降、施設を利用される方の約50%が顔認証を利用しています。


加賀市での「PASS」活用の様子
 (左:加賀市医療センター、右:かがにこにこパーク)

渡邉:ここではこれまで紙の利用券を発行していたのですが、PASSの導入を機に従来の方法は廃止としました。それによって、紙のパスポートの発行等にかかる事務手続きの簡素化はもちろん、利用者にとっても手ぶら、かつ受付時間の短縮化というメリットが見込まれています。また、加賀市内にある総合病院「加賀市医療センター」の受付にも導入され、PASSを使った受付による“診察券レス化”を目指しています。病院の利用者には高齢の方も多いので、顔認証って受け入れてもらえるんだろうか?と思っていたんですが、実際は意外と反応が良く、非常に大きな可能性を感じています。

>> 加賀市の取り組みについてはこちら

技術+UXへのこだわり。目指すのは“誰一人取り残さない”プロダクト

─ では次に技術的なお話になりますが、PASSの開発技術において特徴的な点はどのようなところでしょうか。
渡邉:大きく顔認証技術とマイナンバーカードの2点がありますが、まず顔認証技術においてはそのアルゴリズムや機械学習といった“技術面”での知見に留まらず、「正しく撮影してもらうにはどのような指示を出せば良いのか?」といった“運用面”にもノウハウがあります。たとえば、ただ単にユーザーが撮影した顔写真を使うのではなく、認証に悪影響のある撮影条件を判別しながら撮影方法の修正をアナウンスするといったことですね。
一方マイナンバーカードにおいては、法令に関するドメイン知識が社内に蓄積されていますし、NFC通信の処理も内製化できています。実際に、マイナンバーカードの「券面事項入力補助AP」という機能を使って情報を取得する開発は、iOSとAndroidそれぞれ1ヶ月で完了することができました。仮にマイナンバーカードの法令や仕様を調べるところからはじめたとしたら、このスピード感ではなかなかできないと思うので、これは我々ならではの技術だと感じています。

大西:難しい技術を要する認証の領域ですが、いかに“toC向け”のプロダクトとして作っていくか?となると、やはりUXもとても大切になってきますよね。単に技術があるだけではなく、しっかりとUXを考えながら開発を進めていけているという点は、このチームの強みになっているのではないでしょうか。

─ そのUXに関しては、かなりこだわりもあるようですね。
大西:そうですね。セキュリティレベルを維持しながら、いかに“難しい”を“簡単”に変換してユーザーに届けるか。使い勝手はもちろん、アプリ内で使う言葉もなるべくわかりやすいものや表現を心がけ、どうみなさんの生活に溶け込ませるか?を考えています。現状、加賀市では自治体や施設の方がユーザーさんへレクチャーしてくださることもありますが、目指すところはそういったサポートがなくても“みんなが簡単に”使えるもの。小さなお子さんやお年寄りにも使ってほしいアプリケーションなので、その方たちにどのような体験を提供できるか、とUXには特にこだわって要件を決定しています。

渡邉:国が“誰一人取り残さない”デジタル化の推進をしており、今回も自治体向けということもあって、そういった全世代に受け入れられるUXはチーム全体のこだわりでもあります。ただ実際はまだまだ至らないところもあって、例えば、メールアドレスを持っていないお年寄りが登録できなかったり、小さな子は動きまわってしまいうまく顔写真が撮れなかったりと、すでに見えている課題も。こういった一つひとつの課題に向き合う時間もしっかりと取っていきたいと考えています。

─ 開発責任者の渡邉さんと事業責任者の大西さん。それぞれが感じるこのプロダクトの魅力はどのようなところでしょうか?
渡邉:PASSは「認証の空気化」という私たちが目指すビジョンのど真ん中にあるプロダクトで、そこが大きな魅力だと思っています。とはいえ、先ほどにもあったように現時点では課題も多い。つまり空気化するにはまだまだ自動化すべき部分があるということで、そういう意味では大きな可能性を秘めているとも言えるのではないでしょうか。また、ユーザーの暮らしをダイレクトに変えることができるところも、エンジニアとしては大きな魅力。インターネットに閉じたプロダクトでは、ここまでのインパクトはなかなか与えられないと思っています。

大西:私の感じている魅力は、まずはこのように地域創生を掲げ、さまざまな自治体と連携しながら地域の便利化・活性化につながる取り組みができているところです。一方で全世代の活用を目指しているものなので、実はtoG以上にtoCの要素が強い。つまり、より日々の暮らしに必要な機能を盛り込んでいくことで、プロダクトの可能性はどんどん広げられるとも感じますね。そしてビジョンの達成という側面でも、渡邉さんと同じように感じています。徐々に使われはじめお引き合いもいただいているので、ここに関しては少しずつ近づいているのではないでしょうか。

渡邉:以前加賀市へ行って、市民の皆さんがPASSの登録をされている様子などを現場で見たことがあったんですが、実際にPASSが生活に溶け込んでいるのをこの目で見ると、何とも言えない感情が湧いてきたんですよね。思い描いていたビジョンが目の前でカタチになっている感動というか、とにかくグッとくるものがあって…。ぜひ他のチームメンバーにも、あの景色は見て欲しいですね。我々はひとつのビジョンに向かってこのプロダクトに向き合っているんだ、ということが再確認でき、今後の取り組む姿勢にも大きく影響するのではないかと感じています。

ユーザーファーストの道を選びながら、誰もが必要とするアプリケーションへ

─ お二人が描いている、このプロダクトの目指す世界はどのようなものでしょうか。
渡邉:スマホを持っている人なら誰でもインストールしているような、そんな“当たり前"のアプリにしたいです。と同時に、スマホを持っていなくても顔ひとつで利用できるものにしていければなと。たとえば、市役所でマイナンバーカードを受け取る際に顔写真を撮って、そのままPASS登録することで市民の方が使えるようになる ──。そんな世界を目指したいです。

大西:私は、まずはやはり自治体向けのソリューションとして成長して、PASSによる地域創生をどんどん実現させたいと考えています。車の運転ができないお年寄りが多かったり、バスが一時間に1本しか来なかったり、そんないわゆる移動困難者が多い地域もあるので、このPASSを使って病院予約をして、ライドシェアで病院に行き、そのまま買い物をする…など、PASSを通して一気通貫で生活を豊かにできる世界がつくれたらいいですね。

─ 本当に可能性は広がりますね。そんな未来のために、お二人が大切にしていきたいことを教えてください。
渡邉:現地に読み取り機などが設置されるプロダクトなので、言ってみれば設置されてからがスタート。そのまま何もしなければ全く使われないプロダクトにもなりかねないので、稼働率の最大化を目指し、より多く使っていただけるような工夫や機能追加への意識を大切にしていきたいです。
また開発していると、実際に作りたいものとそこにかかる工数のシーソーゲームになることがありますが、大変な道でもユーザーファーストを心がけたいと思っています。

大西:たしかに、私もそこは同じように感じています。難解な認証やデジタル技術を、いかにして全世代型のサービスとして提供するか。ユーザー目線で取り組んでいきながら、このすばらしいプロダクトをより多くの方に知っていただくことにも力を注いでいきたいですね。

渡邉:このユーザーファーストの考え方は私だけではなく会社としての方針でもあり、チーム全体に浸透している文化とも言えます。うちの開発メンバーは"使い勝手"には本当にこだわりが強い。例えばデザイナーやプロダクトマネージャーが提案したものでも、開発側から「これは使いにくいのでは?」「こういう技術を使えばもっと使いやすくなるかも」と意見が出ることもあるほどです。

─ 一人ひとりがそれぞれのプロダクトに“自分ごと”として向き合っているとも言えますね。
渡邉:そうですね。自発的に考えられる人が多いチームですし、その積極性や自律性があるからこそ、このチームで活躍できているんだと思います。

大西:私も入社したばかりですが、積極的に手を挙げ、ダメだったらやり直す。そんな姿勢を受け入れてくれる環境だな、と感じていました。実際そういうメンバーが多いですしね。

─ 現在、新しい仲間を絶賛募集中ですが、ぜひそんなマインドを持った方にジョインしてもらいたいですね!
渡邉:はい。ときにはそれまで積み上げてきたものをすべて壊さなければいけなくなることもある、不確定要素の多い環境です。でも、このマインドを持った方ならそんな環境も楽しみながら取り組めると思います。

大西:自分が手掛けるプロダクトで、国や社会を良くしていきたい。だからこそ「壊すことで良くなるならぜひやろう!」と言えるような方、ぜひ一緒にビジョンを実現していきましょう!

一歩ずつビジョンをカタチにしながらも、可能性や実現させたいことはまだまだたくさん!
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