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自由応答が状態遷移行列になる理由について 現代制御


自由応答の解

関連記事の状態方程式の自由応答の中で、自由応答を求める際に、

$$
\mathcal{L}^{-1}[\left(sI-A\right)^{-1}]=e^{At}\tag{1}
$$

と置いた。しかし、なぜこの等式が成り立つのかについては、触れていなかったため、この等式が成り立つ理由についてみていく。
関連記事と同様に、$${n}$$次元1入力1出力システムの状態空間表現を

$$
\begin{align}
\dot{\bm{x}}(t) &= A\bm{x}(t)+\bm{b}u(t)\tag{2}\\
y(t)&= \bm{c}\bm{x}(t)+du(t)\tag{3}
\end{align}
$$

で与える。ここで、
$${\bm{x}(t)}$$:状態ベクトル $${n\times 1}$$の列ベクトル、
$${A}$$:係数行列 $${n}$$次正方行列、
$${\bm{b}}$$:入力ベクトル $${n\times 1}$$の列ベクトル、
$${\bm{c}}$$:出力ベクトル $${1\times n}$$の行ベクトル、
$${d}$$: スカラー、
$${u(t)}$$:入力 スカラー、
$${y(t)}$$:出力 スカラー
である。
入力$${u(t)}$$がない状態の状態方程式は、

$$
\begin{align}
\dot{\bm{x}}(t) &= A\bm{x}(t)\tag{4}\\
\end{align}
$$

となる。式(4)の解を初期値$${\bm{x}(0)}$$として、

$$
\bm{x}(t)=e^{At}\bm{x}(0)\tag{5}
$$

と仮定する。式(5)が解かどうかは、式(4)と初期条件を満たしているかで確認できる。式(4)に式(5)を代入すると、

左辺

$$
\begin{align}
\dot{\bm{x}}(t)&=\frac{{\rm{d}}}{{\rm{d}}t}\bm{x}(t)\notag\\
&=\frac{{\rm{d}}}{{\rm{d}}t}e^{At}\bm{x}(0)\notag\\
&= Ae^{At}\bm{x}(0)\tag{6}\\
\end{align}
$$

状態遷移行列の性質①を用いている。詳細は、関連記事の状態遷移行列を見てほしい。

右辺

$$
\begin{align}
A\bm{x}(t)&=Ae^{At}\bm{x}(0)\tag{7}\\
\end{align}
$$

これより、式(4)を満たしていることが分かる。次に初期値についてみていく。
式(5)において、$${t=0}$$とすると、

$$
\begin{align}
\bm{x}(0)&=e^{A0}\bm{x}(0)\notag\\
&=I\bm{x}(0)\notag\\
&=\bm{x}(0)\tag{8}
\end{align}
$$

となり、初期条件も満たしている。よって、式(5)は、式(4)の解となる。
なお、$${I}$$は単位行列であり、状態遷移行列の性質②を用いている。
ここで、関連記事の状態方程式の自由応答の中で求めた、

$$
\bm{x}(t)=\mathcal{L}^{-1}[\left(sI-A\right)^{-1}]\bm{x}(0)\tag{9}
$$

と式(5)を比較すると、

$$
\mathcal{L}^{-1}[\left(sI-A\right)^{-1}] = e^{At}\tag{10}
$$

の関係が成り立つことが分かる。

関連記事

状態方程式の自由応答 現代制御
https://note.com/elemag/n/nefe0c09cccb2?sub_rt=share_pw

状態遷移行列 現代制御
https://note.com/elemag/n/n6bacce03f98a?sub_rt=share_pw

サイト

https://sites.google.com/view/elemagscience/%E3%83%9B%E3%83%BC%E3%83%A0

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