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火力発電所の熱サイクル


基本サイクル

図1に火力発電所の基本的な熱サイクルを示す。

図1 ランキンサイクルの基本図

火力発電所の基本的な構成は、蒸気を発生させるボイラ、蒸気を過熱蒸気へとする過熱器、蒸気を機械的エネルギーに変換するタービン、タービンの機械的エネルギーから電気エネルギーへと変換する発電機、蒸気を液体の水に戻す復水器、水をボイラに供給する給水ポンプである。

図1における$${T-s}$$線図を図2に示す。

図2 T-s 線図

図1の①の場所からスタートして、このサイクルを1周することを考える。
①の場所からスタートすると、給水ポンプを通る。給水ポンプでは、圧力が加えられるため、水の温度が上昇するが、外部との熱のやり取りはないので、エントロピーは変化しない。このような変化を断熱圧縮過程という。
次に②の位置から③の位置においては、ボイラと過熱器を通る。ボイラや過熱器では、燃料を燃焼させることで水に熱を与えている。そのため、エントロピーが上昇する。また、水が沸騰して蒸気になるとき、温度が一定のまま変化するため、図2において②から③への変化で温度が一定の部分ができる。
水から蒸気になるとき、各状態に応じて次のように呼ばれている。

・飽和水
水が沸騰を始めるときの状態

・湿り飽和蒸気
飽和水の状態から蒸気が発生した状態

・乾き蒸気
飽和水が完全に蒸発し、蒸気のみになった状態

・過熱蒸気
乾き蒸気をさらに過熱し、温度が飽和温度以上となった蒸気の状態

ボイラの加熱によって飽和水になるときの変化を等圧加熱過程といい、
飽和水が湿り飽和蒸気から乾き蒸気になる変化を等温等圧膨張過程という。また、乾き蒸気が過熱蒸気になる過程を等圧過熱過程という。

次に③から④を考える。過熱蒸気はタービンを通る際に、タービンの羽根を回転させる仕事を行うため、温度が低下して湿り蒸気となる。この過程では、外部との熱のやり取りがないので、エントロピーは変化せず、温度だけが下がる。これを断熱膨張過程という。

最後に④から①をみる。タービンで仕事をした蒸気は復水器を通る。
復水器では、海水などを用いて熱交換器により蒸気を冷却する。したがって外部から熱を吸収する操作を行っているため、エントロピーが変化する。しかし、蒸気から水へと状態が変化する過程なので、温度は一定のままとなる。飽和水から湿り飽和蒸気へと変化した場合の逆を考えることと同じである。
復水器のこの過程を等温等圧凝縮過程という。

図1のように、断熱圧縮、等圧加熱、断熱膨張、等圧放熱を繰り返す熱サイクルをランキンサイクルといい、火力発電所の基本的な熱サイクルとなっている。

再生サイクル

ランキンサイクルのままでは、実運用上は熱効率が低い。そこでランキンサイクルをもとにして熱効率を高める取り組みがなされている。

図3 再生サイクル

図3は再生サイクルと呼ばれる。タービン蒸気の一部を給水の加熱に使用することで、ボイラで加熱するのに必要な熱量を減らすことができる。これにより、ボイラ燃料の低減が可能となる。また、復水器へ送られる蒸気が減少するため、復水器において放熱される熱量が減少し熱効率が向上する。しかし、タービン蒸気が減少するので、タービン出力はわずかに減少する。

再熱サイクル

図4に示すサイクルは再熱サイクルと呼ばれる。

図4 再熱サイクル

高圧タービンで仕事をした蒸気をボイラへと戻し、再熱器で再加熱することで、湿り蒸気を乾き蒸気にする。この蒸気を中圧や低圧のタービンで再度仕事をさせることでタービン効率が上昇する。

再熱再生サイクル

現在の火力発電所で多く採用されているのは、再熱サイクルと再生サイクルを組み合わせ再熱再生サイクルである。

図5 再熱再生サイクル

再熱再生サイクルは、再熱サイクルと再生サイクルを組み合わせたサイクルであるため、熱効率は最も高い。

サイト

https://sites.google.com/view/elemagscience/%E3%83%9B%E3%83%BC%E3%83%A0


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