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Δ結線


Δ結線

図1 Δ結線

図1に示すような結線方式をΔ結線という。デルタ結線や三角結線と呼ばれる。単相のものを三相交流に用いる場合に主に用いられる。特徴として、各単相の端子をそれぞれ別の相に接続するため、三角形が形成される。このことからΔ結線では、結線が一筆書きできる。Y結線では、一筆書きできない。Δ結線はベクトル図を書くことで、その特性を理解できる。今回は、単相変圧器をΔ結線した場合を例に見ていくが、抵抗やインピーダンスなどのΔ結線も特性は同じである。

Δ結線のベクトル図

Δ結線のベクトル図を書いていく。
図1において、相電圧$${\dot{V_{a}}}$$を基準ベクトルとする。三相交流なので、$${\dot{V_{a}}}$$、$${\dot{V_{b}}}$$、$${\dot{V_{c}}}$$は図2に示すように$${120\degree}$$の位相差を持つ。なお、相順は$${a→b→c}$$とする。
Δ結線の場合、図1から相電圧と線間電圧は同じ電圧である。そのため、電圧の大きさは等しく、位相差もない。よって、図2のようなベクトルになる。

図2 Δ結線の電圧ベクトル

次に電流のベクトルを見ていく。相電流$${\dot{I}_{ab}}$$を基準ベクトルとする。三相交流なので、$${\dot{I}_{ab}}$$、$${\dot{I}_{bc}}$$、$${\dot{I}_{ca}}$$は図3に示すように$${120\degree}$$の位相差を持つ。

図3 Δ結線の相電流ベクトル

次に線電流$${\dot{I}_{a}}$$を見ていく。線電流$${\dot{I}_{a}}$$から見た回路は、図4に示すように相電流$${\dot{I}_{ab}}$$と相電流$${\dot{I}_{ca}}$$の2つのベクトルを足せばいいことがわかる。

図4 線電流から見た回路図

したがって、線電流$${\dot{I}_{a}}$$は、

$$
\dot{I}_{a} = \dot{I}_{ab} + (-\dot{I}_{ca}) \tag{1}
$$

で求められる。ベクトルの足し算は矢印の方向を揃えれば良い。図4で相電流$${\dot{I}_{ca}}$$が逆方向を向いているので、マイナスをつけて図5のようにする。

図5 相電流のベクトル向きを揃えた図

式(1)の結果を図3のベクトル図に書き加えると、図6になる。まず相電流$${\dot{I}_{ca}}$$がマイナスなので、$${-\dot{I}_{ca}}$$を書く、その後相電流$${\dot{I}_{ab}}$$と相電流$${-\dot{I}_{ca}}$$をベクトル合成する。その結果として得られるベクトルが線電流$${\dot{I}_{a} }$$である。

図6 Δ結線の線電流ベクトル1相分

ここで、相電流$${\dot{I}_{ab}}$$と線電流$${\dot{I}_{a} }$$の間の角度$${\theta}$$を求める。図6に緑色で示した$${\angle \alpha}$$は、$${\dot{I}_{ca}}$$と$${-\dot{I}_{ca}}$$がなす線分の角度が$${180\degree}$$、$${\dot{I}_{ab}}$$と$${\dot{I}_{ca}}$$の間の角度が$${120\degree}$$なので、

$$
\angle \alpha = 180\degree-120\degree = 60\degree \tag{2}
$$

となる。相電流$${\dot{I}_{ab}}$$と相電流$${-\dot{I}_{ca}}$$の大きさ(矢印の長さ)は等しいので、破線で示した図形はひし形になる。ひし形の半分を抜き出したものを図7に示す。ひし形の場合、対角線は図7に示すように垂直に交わる。図7は二等辺三角形であるため、底辺に垂直に交わる線は、$${\angle 60\degree}$$を2等分する。よって、$${\theta}$$は$${30\degree}$$となる。このことから、相電流$${\dot{I}_{ab}}$$と線電流$${\dot{I}_{a} }$$の間には、$${30\degree}$$の位相差があることが分かる。

図7 ひし形を抜き出した図

次にベクトルの大きさの関係をみていく。図8に直角三角形の三角比を示す。オレンジ色の部分の大きさ$${I_{0}}$$は、赤色の相電流$${\dot{I}_{ab}}$$の大きさを$${I_{ab}}$$とすれば、

$$
\begin{align}
I_{ab}:I_{0} &= 2:\sqrt{3} \notag \\
I_{0} &= \frac{\sqrt{3}}{2}I_{ab} \tag{3}
\end{align}
$$

と求まる。$${I_{0}}$$は半分を抜き出したものであるから、線電流$${\dot{I}_{a} }$$の大きさ$${I_{a} }$$は$${I_{0}}$$を2倍すればよい。よって、

$$
I_{a} = 2\times I_{0} = 2\times\frac{\sqrt{3}}{2}I_{ab} = \sqrt{3}I_{ab} \tag{4}
$$

となり、線電流は相電流の$${\sqrt{3}}$$倍となっていることが分かる。

図8 ベクトルの大きさの関係

最後に他の線電流のベクトルも同様に、

$$
\begin{align}
\dot{I}_{b} &= \dot{I}_{bc} + (-\dot{I}_{ab}) \tag{5} \\
\dot{I}_{c} &= \dot{I}_{ca} + (-\dot{I}_{bc}) \tag{6}
\end{align}
$$

の関係から、ベクトル図を書くと図9のようになる。

図9 Δ結線の電流ベクトル

相電圧と相電流を同相とした場合のベクトル図は図10(a)のようになり、相電圧と線電流を同相とした場合のベクトル図は図(b)となる。

図10 Δ結線のベクトル

Δ結線の相と線間の関係まとめ

最後にΔ結線の重要事項をまとめる。
Δ結線では、相電流と線電流の間に$${30\degree}$$の位相差をもつ。
相電流を基準に見れば、線電流は$${30\degree}$$遅れており、
線電流を基準に見れば、相電流は$${30\degree}$$進んでいる。
また、線電流の大きさは、相電流の大きさの$${\sqrt{3}}$$倍である。

電圧のベクトルは、相電圧と線間電圧は大きさが等しく、位相差もない。

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