等価回路でみる直流電動機
直流電動機の直巻、分巻、他励の3種類について、等価回路から読み取れることをみていく。式はもちろんのこと、式から読み取れることも多くある。等価回路を理解して、暗記を減らしましょう。
定義されている式
逆起電力$${E}$$
$$
E = \frac{p}{a}Z \Phi \frac{N}{60} = K_{g}\Phi N \tag{1}
$$
トルク$${T}$$
$$
T= \frac{p}{2 \pi a} Z \Phi I_{a} = K_{T} \Phi I_{a} \tag{2}
$$
$${p}$$:極数 $${a}$$:並列回路数
$${Z}$$:電機子導体数 $${\Phi}$$:毎極の磁束
$${N}$$:回転速度 $${I_{a}}$$:電機子電流
直巻電動機の等価回路
図1に示した直巻発電機の等価回路から導かれる式をみていく。
電流の関係
直巻の場合、電機子電流$${I_{a}}$$、界磁電流$${I_{f}}$$、負荷電流$${I}$$は、図1から明らかなように、次式が成り立つ。
$$
I = I_{f} = I_{a} \tag{3}
$$
端子電圧$${V}$$
$$
\begin{align}
V &= E+R_{a}I_{a} + R_{f}I_{f} + v_{b} \notag \\
&= E+\left(R_{a}+R_{f}\right)I +v_{b}\tag{4}
\end{align}
$$
分巻電動機の等価回路
電流の関係
分巻の場合、電機子電流$${I_{a}}$$、界磁電流$${I_{f}}$$、負荷電流$${I}$$は、図2から次式が成り立つ。
$$
\begin{align}
I &= I_{f} + I_{a} \tag{5} \\
I &\propto I_{a} \tag{6}
\end{align}
$$
界磁抵抗$${R_{f}}$$を変化させないとき、界磁電流$${I_{f}}$$は変化しないので、式(5)において、負荷電流と電機子電流は比例する。
端子電圧$${V}$$
$$
\begin{align}
V &= R_{f}I_{f}\notag \\
&= E+R_{a}I_{a} +v_{b}\tag{7}
\end{align}
$$
他励電動機の等価回路
電流の関係
他励の場合、界磁電流$${I_{f}}$$は外部電源から作られる。電機子電流$${I_{a}}$$と負荷電流$${I}$$は、図3から次式が成り立つ。
$$
I =I_{a} \tag{8}
$$
端子電圧$${V}$$
$$
\begin{align}
V &= E+R_{a}I +v_{b} \tag{9} \\
\end{align}
$$
界磁電圧$${V_{f}}$$
$$
V_{f} = R_{f}I_{f} \tag{10}
$$
各式から読み取れること
速度特性曲線
速度特性曲線は、端子電圧および界磁回路の抵抗を一定にして運転した時の負荷電流と回転速度との関係を表したものである。
式(1)より、電動機の速度$${N}$$は、次式で求まる。
$$
N = \frac{E}{K_{g}\Phi} \tag{11}
$$
直巻
直巻は、式(4)より式(11)が、
$$
N = \frac{E}{K_{g}\Phi} = \frac{V-(R_{a}+R_{f})I_{a}}{K_{g}\Phi}\tag{12}
$$
となる。なお、ブラシの接触電圧降下は無視する。また、式(3)より、電機子電流は負荷電流と等しく、界磁磁束は、界磁電流に比例するので、比例定数を$${K_{\phi}}$$とすれば、
$$
\Phi = K_{\phi}I_{f} = K_{\phi}I \tag{13}
$$
となるから、式(12)は
$$
\begin{align}
N &= \frac{V-(R_{a}+R_{f})I}{K_{g}\Phi} \notag\\
&= \frac{V-(R_{a}+R_{f})I}{K_{g} K_{\phi}I} \notag\\
&= \frac{V}{K_{g} K_{\phi}I}-\frac{(R_{a}+R_{f})}{K_{g} K_{\phi}} \tag{14}
\end{align}
$$
となる。式(14)より、回転速度は、負荷電流に反比例しているので図4のようになる。図4からも分かるように負荷電流が小さいと、回転速度は大きくなりすぎてしまう。そのため、直巻電動機を無負荷にすることは危険であり、常に負荷をかけていないといけない。また負荷電流がある程度大きくなると、界磁磁束が飽和するため、反比例の式に従わなくなる。界磁磁束が飽和した時は、式(12)で$${\Phi}$$が一定となるので、負荷電流の増加に比例して、回転速度はやや小さくなっていく。
分巻および他励
分巻は、端子電圧と界磁抵抗が一定なので、他励と同じような特性となる。
他励と分巻は、式(7)および式(9)から、式(11)は次のようになる。なお、ブラシの接触電圧降下は無視する。
$$
N = \frac{E}{K_{g}\Phi} = \frac{V-R_{a}I_{a}}{K_{g}\Phi} = \frac{V-R_{a}I}{K_{g}\Phi}\tag{15}
$$
よって、図5に示すように負荷電流に比例して、回転速度は小さくなる。また、電機子反作用を考慮すると、負荷電流が増加したときに、回転速度の下がり方は小さくなる。
トルク特性曲線
トルク特性曲線は、端子電圧および界磁回路の抵抗を一定にして運転した時の負荷電流とトルクとの関係を表したものである。
直巻
式(2)と式(3)から、直巻電動機のトルクは、負荷電流の2乗に比例することが分かる。
$$
T= K_{T} \Phi I_{a} \propto I_{f}I_{a} \propto I^{2} \tag{16}
$$
よって、図6に示すような特性になるが、負荷電流が大きくなると界磁磁束の飽和により、負荷電流の2乗に比例しなくなる。
他励
他励は、式(2)と式(8)を用いて、
$$
T= K_{T} \Phi I_{a} = K_{T} \Phi I \tag{17}
$$
となるから、トルクは、図7に示すように負荷電流に比例することが分かる。また、電機子反作用を考慮すると、負荷電流が大きいときは、比例ではなくなる。
分巻
分巻は、端子電圧と界磁抵抗が一定なので、図8に示すように他励と同じような特性となる。しかし、分巻の場合は、負荷電流を0にすることは出来ない。なぜなら、界磁抵抗には端子電圧が常にかかっているため、界磁電流は常に流れる。そのため、負荷電流の最小値は、界磁電流になる。
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サイト
https://sites.google.com/view/elemagscience/%E3%83%9B%E3%83%BC%E3%83%A0
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