見出し画像

変圧器の最大効率


効率の式

効率は、入力と出力から定義され、システムの性能を表す1つの指標である。

$$
\begin{align}
&\notag\\
効率 &= \frac{出力}{入力} \tag{1}\\
\end{align}
$$

入力は出力と損失を足したものであるから、式(1)は、次のようにも表せる。

$$
\begin{align}
&\notag\\
効率 &= \frac{出力}{入力} \notag\\
&=  \frac{出力}{出力+損失} \tag{2}\\
\end{align}
$$

変圧器の最大効率

変圧器の損失は無負荷損と負荷損に大別される。そこで、無負荷損を$${P_{i}}$$、負荷損を$${P_{c}}$$、変圧器の定格出力を$${P_{n}}$$とすれば、変圧器の効率$${\eta}$$は、

$$
\eta = \frac{P_{n}}{P_{n}+P_{i}+P_{c}}\tag{3}
$$

となる。
ここで、単相の場合を考える。
定格出力$${P_{n}}$$は、定格電圧$${V_{n}}$$、定格電流$${I_{n}}$$、定格力率$${\cos(\theta)}$$を用いて、

$$
P_{n} = V_{n}I_{n}\cos(\theta) \tag{4}
$$

と表せる。
また、定格時の負荷損$${P_{cn}}$$は抵抗$${r}$$による損失であるから、

$$
P_{cn} = r{I_{n}}^{2} \tag{5}
$$

となる。負荷が変化した場合、電力系統では、電圧は一定に保たれている。また、負荷力率は一定として考えると、電流の変化率と負荷の変化率は等しい。よって、定格からの変化率を負荷率$${\alpha}$$として定義し、次のように求める。

$$
\alpha = \frac{I}{I_{n}} \tag{6}
$$

これにより、負荷が変化した場合を考えた一般的な変圧器の出力$${P}$$と負荷損$${P_{c}}$$は、

$$
\begin{align}
P &=  V_{n}I\cos(\theta) =V_{n}I\cos(\theta)\times \frac{I_{n}}{I_{n}} \notag\\ 
&= \alpha V_{n}I_{n}\cos(\theta) = \alpha P_{n} \tag{7} \\
P_{c} &=r{I}^{2}=r{I}^{2} \times {\left(\frac{I_{n}}{I_{n}}\right)}^{2} \notag\\
&=  \alpha^{2} r{I_{n}}^{2} =  \alpha^{2} P_{cn} \tag{8}\\
\end{align}
$$

となる。無負荷損は、定格電圧が変化しない状況では、励磁電流が一定になるので、定格時および負荷が変化した場合も等しく、

$$
P_{i} = P_{in} \tag{9}
$$

となる。よって、一般的な効率の式として、

$$
\eta = \frac{P}{P+P_{i}+P_{c} } = \frac{\alpha P_{n}}{\alpha P_{n}+P_{i}+\alpha^{2} P_{cn} } \tag{10}
$$

を得る。ここで、式(10)で最高効率となる条件を考えていく。式(10)で定格となっているものは、変化しないので、変化するのは負荷率$${\alpha}$$である。
そこで、式(10)の負荷率$${\alpha}$$を分母のみに集めるために、分母分子に$${\frac{\alpha}{\alpha}}$$をかけると、

$$
\eta = \frac{ P_{n}}{P_{n}+\frac{P_{i}}{\alpha }+\alpha P_{cn} } \tag{11}
$$

を得る。最高効率ということは、分母が最小であれば良い。これから3通りの証明方法を紹介する。理解しやすい方法で理解すると良い。また、三相の場合は、出力$${P}$$に$${\sqrt{3}}$$がつくだけなので、三相でも成り立つ。

方法1 微分

分母の最小を求めるには、分母を負荷率$${\alpha}$$で微分して、$${0}$$となる値を探せば良い。よって、

$$
\begin{align}
\left(P_{n}+\frac{P_{i}}{\alpha }+\alpha P_{cn}\right)^{\prime}&=0 \notag\\
-\frac{P_{i}}{\alpha^{2}}+P_{cn}&=0 \notag\\
\frac{P_{i}}{\alpha^{2}} &= P_{cn} \notag\\
P_{i} &= \alpha^{2}P_{cn} \tag{12}
\end{align}
$$

を得る。式(12)で、$${\alpha^{2}P_{cn} }$$は式(8)で負荷の変化を考えた場合の負荷損$${P_{c}}$$である。よって、最高効率となる条件は、無負荷損$${P_{i}}$$と負荷損$${P_{c}}$$が等しい時である。また式(12)より、最高効率となる時の負荷率$${\alpha}$$は、

$$
\begin{align}
P_{i} &= \alpha^{2}P_{cn} \notag \\
\alpha &= \sqrt{\frac{P_{i}}{P_{cn}}} \tag{13}
\end{align}
$$

となる。

方法2 相加相乗平均

相加相乗平均を用いる。
式(11)において、損失が最小となれば、効率は最大となるはずである。 また、損失はどちらも$${0}$$以上の値であるから、相加相乗平均を用いることができ、

$$
\frac{P_{i}}{\alpha }+\alpha P_{cn} \geqq 2\sqrt{\frac{P_{i}}{\alpha }\cdot \alpha P_{cn}} \tag{14}
$$

となる。等号成立は、$${\frac{P_{i}}{\alpha }=\alpha P_{cn}}$$である。式変形により、式(12)と同じ形の$${P_{i}=\alpha^{2} P_{cn}}$$を得る。よって、最大効率となる条件は、無負荷損と負荷損が等しい時である。

方法3 最小定理

最小定理は以下に示すような定理である。
2つの正の数があり、その積が一定であるとする。2つの数が等しい時、2つの和が最小になる。
今回の問題では、損失を最小にするため$${\frac{P_{i}}{\alpha }}$$と$${\alpha P_{cn} }$$の積が一定であれば良い。2つの積は、$${P_{i}P_{cn}}$$である。定格時の負荷損および鉄損はどちらも一定なので、最小定理が使える。
よって最小定理より、

$$
\begin{align}
\frac{P_{i}}{\alpha }&=\alpha P_{cn} \notag\\
P_{i}&=\alpha^{2} P_{cn} \tag{15}
\end{align}
$$

となり、無負荷損と負荷損が等しい時、損失が最小となる。よって、最大効率の条件は、無負荷損と負荷損が等しい時である。

サイト

https://sites.google.com/view/elemagscience/%E3%83%9B%E3%83%BC%E3%83%A0

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?