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Tom Richmond Music commentary

【Elekibass - Paint it white楽曲解説】
Hiya!
2008年11月の寒空の下、Elekibassの待ちに待った新譜が届いた。何気ない封筒に入った何気ないサンプル盤。しかしそれは私にとって、本当に待ちに待ったアルバムなのだ。何しろ彼らは4年間、アルバムをリリースしなかったのだから。私はさっそくアルバムを聴いてみる。

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「ハロー、ようやく、やっと、ついに、何とか仕上がったこのアルバム。どうぞ楽しんで聴いてください。そして最高のコメントを書いてください。ロックンロール。」

Elekibassがサンプル盤とともに書いてよこした短い手紙には、だいたいのところ、そんなことが書いてあった(そう、彼らとのコミュニケーションが私はとても好きだ。彼らはいつでも"だいたい"なのだ。私がもし、万が一、ほんのわずかでも日本語を理解したなら、それでも彼らはきっと"だいたい"なのだろう。それは彼らのある種の魅力でもある)。

さてアルバムタイトルは、、と。
Paint it white!!!!
悪くないね。そう、悪くない。ついでに言えば、彼らのさらなる次作品のアルバムタイトルは、Paint it blackだと言う。これには参ったね。Paint it blackもすでにレコーディングは終わっていて、しかもそっちは、私達にもようやく理解できる(そう、"だいたい"ね)英語の曲ばかりらしい。サイケデリックポップだというウワサの次作も気になるところだけれど、まずはこのPaint it whiteを聴いてみよう。

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【M1"AIDARO"】勢いに乗ったホーンセクションとゴキゲンなドラム。いつになく気取ったElekibassの面々が繰り広げる賑やかなスウィング。ドライブするオルガンがバンドを煽る。ショウのはじまりにピッタリの曲だ。

【M2"Parade"】続くこの曲は1960'sと1980'sの英国マナーが入り混じるロック。テーマの切ないメロディーの滑らかさと骨太なブリッジのコントラストが素敵だ。力強いギター、ドラム。そしてXTC、、XTC?!、まったく贅沢な曲だ。

【M3"Melody"】Motownのブレイクビーツを思わせるリズムを華やかに彩るクラビとホーン。一体どうしたことだろう、今回のアルバム、冒頭のストレートな3曲。ああ、私はこのアルバムの触れ幅の大きさにようやく気付く。それでも飄々としたヴォーカルはいつもどおり。Awesome, Elekibass!なるほど、エンターテイナーたる所以だ。

【M4"austoraia"】彼らのショウに足を運んだ事のある米国の熱心なファンなら全員知っているこの曲。小柄な彼らが(いや彼らに言わせれば我々が大きすぎるのだ)飛び跳ねて動き回って、手を振り、満面の笑顔で歌う姿を観ていると本当に幸せな気分になる。きっととてもハッピーな歌詞なんだろうと思う。

【M5"showbiz"】これは実に愛らしい曲だ。ストレートなメロディー。得意のシャッフルをゆったりと奏でるこの曲は短くも突然に幕切れになる。しかしそこで曲は終わらない。リコーダーの何ともいえないソロの登場。こんな遊び心が私はとても好きだ。

【M6"Koinomichi"】いつもショウではアッパーに演奏するこの曲がまるで映画の回想シーンのようにゆったりと響く。これには驚いたね。Casper & the Cookiesも演奏に参加してるって? 実に素敵。この中盤の3曲はElekibassのショウを知っている私たちにとってはまったくお馴染みの曲だ。だからこそアルバムで聴けることがとても嬉しい。

【M7"matikogarete"】端整なミドルテンポ、キレイなコードを刻むピアノ、可愛らしいヴォーカル、これはきっとラブソングに違いない。それも相当不器用なタイプの。意外なまでの整った曲は、むしろ照れ隠しかも。

【M8 koino】この曲のメロウな雰囲気は、1960'sサイケデリックポップの要素や電子音、ギターのカッティング、メロディーを大事に歌うヴォーカル、ポップスのあらゆる要素を織り込んだ曲。こんな曲を作れるようになった彼らの密かな成長振りは驚き。

【M9 Like a Springgirl】最後に切ない切ないメロディーでとっておきの1曲が登場する。ここにトリックは何も無い。ただただ誠実なメロディー。ポップスを愛してやまない彼らが本当に真剣に取り組んだ1曲。こうしてアルバム後半3曲はメロウに誠実に締めくくられる。


どうだろう、Paint it white、気に入ってもらえただろうか?
彼らのようやく、やっと、ついに、待ちに待ったこの新譜。ロックンロール。万歳!
Tom Richmond, 15min records (訳: Like This Parade)
「エレキベースの新譜を紹介できるなんてとても光栄だよ。」(2008.11)

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ELEKIBASSは、2020年10月24日に、全14曲が収録された新作EP「Tiger on the freeway」をリリースしました(アナログLPと配信にて)。

そして、2020年11月3日(レコードの日)に三枚目のフルアルバム「PAINT IT WHITE」(2009年4月1日発売)が12インチアナログになって再発です。

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