日系アメリカ人の強制収容問題を音楽と共に考えるイマーシブイベント『Swingposium』

2020年8月は、現地時間で毎週末にイマーシブ関係のオンラインカンファレンス『This Immersive Globe』が行われていました。日本時間では月曜日の早朝4時からという過酷な時間ゆえ、なかなか起きることができないのですが、それでもまったく知らないイマーシブイベントの話とかが飛び出してくるので、毎週眠い目をこすりながら翻訳ソフト片手に視聴していました(けっこう寝坊もしたけど)
その中でも一番インパクトあったのは第二次世界大戦での日系アメリカ人の強制収容問題を音楽と共に考えるイマーシブイベント『Swingposium: An Immersive Tribute to Big Band Music and Dance from Camp』でしょうか。

「第二次大戦で日系アメリカ人が強制収容を受けていた時代に、甘い音楽とダンスがいかに日系アメリカ人の希望の源となったか、あまり語られることのない物語を紹介します。」
「観客は、俳優やミュージシャンに囲まれた収容所内の架空の食堂からダンスフロアに入り、物語が展開していきます。この体験に観客が積極的な役割を果たすことで、移民の人種的権利と特権や帰属意識についての現在の議論とコンテンツを結びつけることができるのではないかと私たちは考えました。」
「ショーの特定のエリアでは太鼓が出てきます。抑留所の中では、太鼓が象徴的に出てきて、日系アメリカ人の精神と粘り強さを表しています。」
(『This Immersive Globe』での講演より)

物語はジョージという青年とエイミーという若い女性との間に芽生えた愛を中心に描かれます。ジョージは実在の抑留者でバンドリーダーのジョージ・イガワにちなんで名づけられたとのこと。
ジョージは戦争に行くべきかどうか悩んでいます。「なぜ正当な手続きなしに家族や自分自身を監禁している国のために戦わなければならないのか?」そして逆に「アメリカ人としての自分を証明したい」とも思っています。
制作者は第二次大戦における日系アメリカ人の複雑な立場と心情を描くことで、アメリカ国内ですらあまり知られていない日系アメリカ人の投獄の歴史を掘り起こすと共に、現在のアメリカにおける人種問題への投げかけも意図しているようです。

テーマの重さはさておき、太鼓とジャズダンスの組み合わせはなかなかユニークで楽しいパフォーマンス。かみ合うの?と思った方は公式がアップしているこのセッション動画をぜひご覧ください。

パフォーマンスがあまりにも楽しそうで、逆に設定とのギャップを感じて泣けてきます。(歳を取ると涙もろくなるのです)

以下のレビュー記事もこのプロジェクトの概要を伝えてくれます。

なお、『This Immersive Globe』での話では、当初、2020年中に東京でも『Swingposium』を上演する予定があったが、コロナ問題で中止になったとのこと。落ち着いたらぜひ日本での上演が実現してほしいものです。

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