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『スパイは3度、ベルを鳴らす』は王道的イマーシブシアターの傑作

2020/10/3(土)に参加したego:pressionのイマーシブシアター『スパイは3度、ベルを鳴らす』ですが、とてもよかったので、まとめようとおもいます。

雰囲気は上の公式トレーラーでだいたい伝わるのではないかと。基本は家族中心に経営されている昭和の工場での、セリフがほとんどないダンス型のイマーシブシアター。ダンス中心ということもあって、物語は凝りすぎていない、シンプルなハッピーエンドもの。でも、家族や従業員の悩みがそれぞれ設定されているので、物語が平坦になりすぎることもない、ちょうどいい感じ。

観客から働きかけたり触れたりする要素はほとんどないけど、それはまったく不満にならないし、むしろ不要なノイズにならずによい。工場の1F、2F、そして家の母屋内と各役者が細かく動くので、それを追いかけているだけで十分楽しい。

「働きかけたり触れたりする要素はほとんどない」と言ったけど、イマーシブシアターならではの、小さなONE ON ONE(自分にだけ何か役者が働きかけてくれること)はあり。これで「自分ならではの体験感」が増幅されます。自分はフラスコに薬品入れる手伝いと、名刺をもらいました!

そしてなんといっても一番良かったのは3回ループにしたこと。イマーシブシアターは何度も参加することでその楽しさが分かる場合が多いのに、日本では公演期間やチケット数が限られていてその楽しさが伝わらない場合が多いので、『Sleep No More』のように、1回の公演で3ループ観れるようにしたのがとても良かった!
また、同じシーンでも2ループ目、3ループ目に演出や細部を変えているシーンもあって、飽きにくい工夫もあり。(しかも、変わる理由がちゃんと設定されている)
この3ループというのは、全体の概要はだいたい理解できて不満感じないけど、細部では観れていないシーンや場所が出てくる(もう一度見たくなる)ちょうどいい回数だと思います。他のイマーシブシアターでもぜひ採用してほしい!

夜に同じ日の違う回に参加したメンバー(それぞれが体験型エンタメ作っている)と合流して飲み会したのだけど、評価はおおむね高くて、「こういうイマーシブシアターがもっと増えてほしい」という意見が多かったです。ぜひ再演や新作も期待したいところ。

egopressionの公式Instagramには公演の写真やコメントもたくさん載っているので、ぜひそちらもご覧下さい。

あ、そうだ、1つだけ謎があって、ナレーションで伝えられたタイムトラベルした年代と、劇中で出てくる手紙関係に書かれている年代(これは自分は気づいていなかったけど別の回に行った人が発見)、そして小道具のTVで流れる映像の年代が微妙に違うのですが、あれは何か意図があってのことなのか、それともそこまで厳密に設定していなかったのかがちょっと気になっています。

今年は『サクラヒメ』『泊まれる演劇 STRANGE NIGHT』『スパイは3度、ベルを鳴らす』と、自分にとって国産イマーシブシアターの当たり年というか、日本でも本格的に立ち上がってきた感があります。(これでコロナ問題がなければもっとあったのだろうけど)
この後も期待作がいろいろ控えているようなので、嬉しい悲鳴状態です。(福岡から行くのはなかなか大変です)


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