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演劇指向のイマーシブシアター『パンドオラ ー秘密のショウタイー』

2021年10月2日に山口市で見た劇団シバイヌさん の「参加型」演劇『パンドオラ -秘密のショウタイ-』がとてもイマーシブシアターで良かったので、その感想を。参加感を損なうような直接のネタバレは書きませんが、周辺的な部分には触れるので、もし今後再演などあったときに真っ白で参加したいという方はご注意ください。

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『パンドオラ』がどういうお芝居かチラシに書かれている範囲で話しますと、“パンドオラ商隊”と呼ばれる商隊が、会場となる菜香亭に立ち寄って数日間お店を広げるという招待状が参加者に送られてくる(実際に手元に届きます)所から物語が始まります。
参加者は招待された日時に菜香亭に出向き、“パンドオラ商隊”に眠る秘密の箱とそれを開けた女性、さらには箱を開けたことで蔓延したと言われている病について、演劇に参加しながら体験することになります。
ちょっとだけ雰囲気が分かる動画はこちら↓

主催側では「参加型」演劇と言ってますが、石川的にはイマーシブシアターと言っていい内容ではないかと思いました。
1回の参加者は5人。常に一緒に行動します。観る順番は『ホテル・アルバート』や『Shadows of the Flower』のように誘導される固定形です。
ただ、それぞれの部屋(商隊のお店という設定です)では、商隊の人と直接会話したり、返事したり、場合によっては商品を(あくまでもお芝居の中でですが)買ったりすることができます。
ですので、参加者毎に体験感は異なりますし、同じ回の参加者の方も誰が誰と会話するかとか、どのようなリアクションを取るかによって個々で体験感が変わるので、イマーシブシアターと呼んでも差し支えないかなと。

まず、とても良かったのは、この作品がエンタメ系やダンス系ではなく、一般的な演劇を指向したイマーシブシアターだったということでした。石川的にはどの方向も大好きではあるのですが、演劇指向のイマーシブシアターは日本ではまだまだ貴重なので嬉しかったです。

会場となっているのは山口市菜香亭。井上馨が命名し、木戸孝允なども通ったという歴史ある料亭の移築施設です。

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今回は旅の商隊が菜香亭に立ち寄って店を開いたという設定なので、それぞれの部屋がお店に見立てられてお芝居が進んでも違和感がありません。
部屋毎にそれぞれのお店が扱う商品に合わせて飾り付けられていて、それが古めかしい菜香亭の雰囲気にとても合います。
飾り付けも本当にそこで本当に商いをしているのではないかと思わせるような凝ったディスプレイで、没入感が高まります。
だからといって、菜香亭じゃないと絶対ダメというような借景依存の演劇にはなっていないので、雰囲気さえ合えば、他の場所でも上演できそうです。

また、いろいろなアイテムが(店の商品も含め)出てきたり、手に入ったりするのですが、それらが物語の謎に直結していたり、物語の細かいパターン分岐を生み出したりしていて、そのあたりも非常に没入感に繋がっていました。
どういうパターンがあるのか知りたくて、思わず脚本も買ってしまいました(笑)

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自分がイマーシブシアターとか体験型イベントに参加した時に、とても気に入ったかどうかの指針が1つあります。
それは、またその場所に訪れたら同じ事が起こるんじゃないか、と記憶に刻み込まれるかどうかです。
『パンドオラ』は、菜香亭に行けば“パンドオラ商隊”にまた会えるんじゃないか、と思わせてくれた作品でした。

ということで、長々と書いてきましたが、とにかく『パンドオラ -秘密のショウタイ-』良かったです。
チケットも2000円という格安!でしたが、この内容なら倍以上の価値があると思います、ホントに。
今回は5人×13公演=最大65人しか体験できていないのが非常にもったいなあと思いました。ぜひ再演&他の場所でも公演してもらえると嬉しいです。(劇団シバイヌさんは山口の劇団なのでなかなか大変だとは思いますが)


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