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070824 あちゃんのこと

朝、起きたのに、ギリギリになるまでベッドにいて、スマホから世界を覗いていた。
遅刻しそうになって慌てて支度をし出し、朝食は駅前のパンカフェで何か買おうと、あちゃんに持って行くお見舞いだけバックパックに詰めた。
日本に行ったときに mont-bellで買ったくすんだ黄色の軽量登山用のバックパックなのだが、とてもすき。
買うときに店員さんに「この色だと汚れが目立ちますかね」といったら「こういうのは汚れてなんぼだとおもいますね。その汚れが勲章になるみたいな」というような返事が返ってきて、確かに、とおもい買った。
所望されたフルーツジュースを見繕って、子ども用のパックのが4つずつ入った箱ふたつ。違うフレーバーのその2箱と、サンセバスティアンで買った老舗のお菓子屋さんのビスケットの詰め合わせと、ぽるてぃさんの東北の旅行記をお見舞いの品にした。

電車に乗る前に駅前のカフェでパンオショコラを買って、歩きながら、ホームで電車を待ちながら、たべる。

早く着きすぎたので、病院近所にあるMielに飛び込んであちゃんがすきだといった林檎のパイを買う。自分の分も買った。その横のHoney & Co で自分のお昼ごはんも調達した。

あちゃんの入院しているところは巨大病院の13階だ。
迷いながら行くと、わたしが病室はどこかと尋ねた人との会話を聞いていたお掃除のおじさんや看護師さんが、わたしは何もいわないのにあちゃんのところまで導いてくれて、看護師さんがカーテンを捲るとそこにあちゃんがいた。
楳図かずおの名前が胸のところに書いてある、赤と白の縞のパジャマを着ていた。スリッパはキティちゃんだった。枕元には長い年月をおもわせるちょっとボロい、でも大切にされているらしい猫の縫いぐるみがいた。
ちょうどお昼で、ジャケットポテトに何かをかけていた。シュレッドチーズは見えた。
「新宿の高野で会った以来だね」といって笑う。
今年の春だ。約束もしていないのに偶然会った奇跡から、わたしはあちゃんとは不思議な運命で繋がっていると信じるようになって、あちゃんのお姉さんのように、もしかしたら妹のように、何か親身になりたいとおもう。
実はこれ以外にもあちゃんとは不思議な結びつきがあって、両親も他界して兄弟もいないあちゃんの、在外邦人同士の、頼れる何かになりたいとおもう気持ちがある。
あちゃんには最愛の英国人配偶者がいて、彼がすべてをやっているんだけど、わたしも参加したく、できる範囲で、とおもってる。
あちゃんとは前の職場でも今の職場でも同僚で、その間いろいろお互いを助け合って働いてきた。
実はこれを書いている今も、あちゃんから病室から見える夜景写真がLINEで送られてきて手を止めたところ。
あちゃんのことを考えていると向こうから連絡が来る、その反対も双方で体験しているので、高野の偶然の前に、もうすでにテレパシーみたいで不思議だねっていっていたんだった。
まあ仲がいいって話だけど。

4時過ぎまで話し続け、その間あちゃんは薬剤の点滴、何度も何度も検温、血圧チェックが入る。
病棟で一輪の可憐な花のようなあちゃんは、楳図かずおを知らない看護師さんたちに人気のようだ。
知っていたならもっと人気者になっただろう。

わたしと入れ替わりに配偶者ダ氏が来るので、疲れさせたくないとおもい帰る。
点滴の薬剤で痛みや熱が出てかなり苦しむことがあるといっていたので、全ての不快が起こらないようにと念じるしかわたしにはできない。

また来週行く。
病院のごはんが非常に質素だったので、お弁当を作って行こうと今からおもってる。





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