DCモーターの選定方法
はじめに
対戦形式のロボットの大会では、優位な試合運びの為に、パワーのあるモーターを求めるのは論理的です。
重量や大きさに制限があれば、コンパクトで出力の大きい高性能モーターが選択肢に挙がるのも当然です。
ここではDCモーターの性能を示す、無負荷回転数、無負荷電流、停動トルク、停動電流の4つの値からロボットに最適なモーターを探す方法について説明します。
モーター性能線図
トルクを横軸としたトルク基準方式のモーター性能線図がイメージし易いと思います。
無負荷回転数はモーターのシャフトに何も付けずに空回りさせた時の回転数で、この時にモーターが消費する電流が無負荷電流です。
停動トルクはシャフトに半径1cmのプーリを取り付けて、重りを付けた糸を巻き上げた時に重さに耐えられなくなって回転が停止した時にの重さで、回転が停止した状態でモーターが消費する電流が停動電流です。
この4点をグラフにすると以下ようになります。
重りを持ち上げる仕事をモーターにさせると考えた時に、無負荷回転数では重りを持っていないので仕事を全くしていません。
停動トルクでは最大の重さの重りを持ってはいますが、持ち上げない(全く移動させない)ので、やはり仕事は全くしていません。
最も仕事をしているのは2つの直線が交わる所になります。
ここがモーターの出力になります。
モーターの出力
使用中のモーターが熱くなることは、ご存じかと思います。
この熱によるモーターの温度上昇が故障に至らない条件を連続定格(連続出力、連続運転範囲など種々の表現があります)と言います。
先ほどの2つの直線が交わる所は最大出力であって、連続出力ではありません。
この点の認識不足が”モーターが焼けた”という事態に繋がります。
高性能モーターとして大人気のマクソンRE16を例題に性能線図を作成しました。
最大出力は12.5 W(6,950 rpm、175 g・cm)ですが、データシートの連続運転範囲は4.5Wです。この4.5Wは最大効率でもあります。
DCモーターの負荷を最大効率になるように設計するのは基本のひとつです。
短期間運転範囲は連続運転範囲である4.5Wで使用していて、時々短い時間なら超えて良いのではありません。
一定パターンで繰り返し運転をする場合に、1サイクルの運転で平均4.5W以下なら一時的に4.5Wを超えても良いとするものです。
これに対して電動ラジコンカー用のモーターは最大出力での連続運転が可能です。マブチRK-370SD-2870を例題に性能線図を作成しました。
Ni-MH7.2Vバッテリーとの組合せで15.7Wを連続で出力することができます。
ギヤ比
モーターへの負荷を適正値にするためにギヤを用います。
ロボットの設計では仕様策定で必要駆動力を算出して、モーターとギヤの選定を行います。
仮に1,000 g・cmを必要駆動力とすると、マクソンRE16とプラネタリギアヘッドGP16A 19:1の組合せでは、1000÷19≒52.6 g・cm(ギヤの効率はここでは無視します)性能線図から6.4Wとなり、焼損の可能性があります。
19:1の次は84:1になるのでギヤでの最適化は難しいですね。
必要トルクの算出にタイヤ直径46mmとしているので、タイヤ直径を32mmにするのも設計としてはありです。
サッカーロボットは車両型ですので、車両設計のセオリーに従って計算ができます。最高速度と最高速度までの加速時間から駆動力を求める方法で調べて下さい。
レスキューロボットの場合は以下の記事で概略計算ができます。
ロボカップジュニア レスキューロボットの駆動力計算(簡易版)|あるちざんラボ (note.com)
モーター性能線図作成エクセルシート
この記事でモーター性能線図を作成するのに使用したエクセルシートは下図の様に無負荷回転数、無負荷電流、停動トルク、停動電流の4つの値と定格電圧を赤枠の部分に入力すると性能線図が自動的に作図されます。
必要駆動力を満たすモーターやギヤ比の検討に便利な計算シートです。
計算式をうっかり書き換えないように水色のセル以外は保護されています。
出典:
マクソン RE 16 16 mm, グラファイトブラシ, 4.5 Watt データシート
※返金不可設定になっておりますので、ご注意ください。
有料部分では、モーター性能線図作成エクセルシート” DCモーター性能線図.xlsx ”がダウンロードできます。
タミヤ遊星ギヤボックスセット付属のRC-260、RK-370SD、マクソンRE16が計算済みとなっています。水色セルを上書きして御使用下さい。
※最高速度と加速時間から必要駆動力算出に使用したエクセルシートは付属しません。
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