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DCモーターは電圧が高いとパワーがある?

はじめに
モーターに乾電池1本(1.5V)繋げた時より、2本直列(3.0V)に繋げた方がパワーがあるのは間違いありません。
このイメージから定格電圧の高いモーターはパワーがあると錯覚している方が多いように感じます。
前の記事のマブチRK-370を例に定格電圧が高いモーターが必ずしもパワーがあるとは限らない事を示します。

マブチRK-370モーター
RK-370は様々な製品に使われている汎用モーターで、定格電圧違いが存在します。
マブチモーターの機種表示にて、”R”はハウジングが丸形、”K”はカーボンブラシ、"370"はハウジングの直径を表すコード番号・ハウジングの長さを表すコード番号・ローターの溝数を表すコード番号を意味し、Φ24.4mm×30.8mm・3溝を示します。
さらにローター巻き線の直径やスロット当たりの巻き数などの仕様が続きます。
ここでは、定格電圧7.2V:RK-370SD-2870、12V:RK-370CA-081050、24V:RK-370CA-081050のパワー比較を単位” W ”で行います。
※出力計算は 前回記事の " DCモーター性能線図.xlsx " を使用。

定格電圧違い出力比較

モーターの仕様はユーザー要望によって決められます。
この3種のRK-370については電源電圧が12V、24Vのユーザーは少ない電流で回るモーターを要望し、ホビーメーカーが電動ラジコンカーのNi-MH7.2Vの大電流供給能力を使って可能な限り高出力なモーターを要望した結果であって、この比較結果から電圧が低い方がパワーがあるという法則でもありません。
マブチモーターのRK-370の仕様では ” OUTPUT 0.5W-24W ”  と明記されており、様々な仕様が存在(個人で購入可能な品種は限られますが)し、型式の全て " RK-370xx-xxxxx " を確認して検討・購入しましょう!

コラム
理論的にはどうなのか?
1.5tの重量をモーターで走らせるEVの世界では駆動電圧が400Vに達します。また800V化の動きも活発化しています。
モーターのパワーの源である電磁石を作るには、巻き線が欠かせません。
この電磁石の磁力は、巻き線に流す電流と巻き数に比例し”AT”(アンペアターン)が問題になります。
限られた容積に強力な電磁石を作るにはAT最大にする必要があります。
サイズが規定されている場合、巻き数を多くすると巻き線の直径を小さくする必要があり、線抵抗が大きくなります。
線抵抗により電流が小さくなるので、極端に巻き数の多いモーターはATとしては小さくなってしまします。
巻き線の直径を大きくして行くと、線と線の間にできる隙間が大きくなり、巻き線の容積が小さくなりますので効率的ではありません。
つまり、最大出力を得る適切な巻き線直径と巻き数の組合せがあります。
そこで、巻き線を多く巻いてかつ電流を流す手段として高電圧が必要となります。
電磁石が電流の増減に抗う性質を持つことへの対応も含めて ” 高電圧なモーターは高出力 ” は理論上正しいと言えます。
しかしながら、高効率の鎬を削る100,000W級のモーターの話であって、10W級のモーターで個人で購入可能なモーターは、市場要求によって仕様が決まっている事のほうが支配的です。
プリンターやコピー機に使用されるモーターは電源電圧が12V or 24Vで定格電流の小さいFETでドライブでき、細い配線で構成できるRK-370CA-081050の様なモーターが要望されます。
みなさんの ” 強力なモーター ” に答える製品で入手性を考えれば、電動ラジコンカー用のモーターとなりますので定格電圧6V~7.2Vのモーターを探すことをお勧めします。

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あるちざんラボ
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