べにぞめひびき@しーな

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べにぞめひびき@しーな

気まぐれに文章リハビリちう。 pixiv→https://www.pixiv.net/users/1329140

最近の記事

お習字の先生

 すん、と記憶の中の墨の香りが鼻先をくすぐった。  読んでいたエッセイに硯の話が出て来たのと、先般実家に帰ったことの相乗効果であろう。  実家の斜め前に、いつ崩れ落ちてもおかしくないちいさな平屋が建っている。もう看板を下ろして長いが、そこがお習字の教室であった。  どんなに素晴らしい人でも、お世辞にも字が下手だと内心がっかりする。私好みの字を書く人には、臆面もなく「あなたの字が好きです」と言ってしまう(つい先日も得意先でやらかした)程の筆跡フェチになってしまったことにも関連し

    • 祥月命日

       今日の給食クリームシチューやったのに。  小学3年生の11月29日。3時間目に早退して家に着くなりそう言うと、母は呆れて、 「そんなんいつでも作ったるやん。さ、早よ、病院行くで」  急かされてすぐ家を出た。その日着ていたグレーのパーカーの柄まで覚えている。  電車で一駅移動してからバスに乗る。今なら家から車で割とすぐの病院は、その当時やけに遠く感じられた。  病室に入ると祖父は沢山の人と器械に囲まれていた。祖父に繋がった器械のひとつがほぼほぼ平坦な線を描いていたが、ずっと

      • COVID-19にやられた DAY2

        8月17日、人生で最高の誕生日ですげほげほ。 2日目。 5時半、37.7℃ ノドが痛くて2時間おきに目が覚める。 ロキソニン飲んでパピコ食う。逆ちゃう? 6時頃、朝食にアミノバイタル アミノ酸&クエン酸チャージを口にした。寝込んでるのに良さそうなものを選んだつもりだが、レモン味。 ノドに刺さる気がする……のは気の所為! と完食してちょっと後悔した。気の所為ではなかった。間違いなく、刺さる。 家にあるゼリー系は熱中症対策で悉く塩レモンなどの酸っぱい系。あかんがな。 結果

        • COVID-19にやられた DAY1

          タイトル通りのエントリである。 世界にこのウィルスが蔓延してしてもう4年。 医療関係の業界にいるだけあって、そりゃあもう人一倍用心して過ごしてきたさ。元来引きこもりは得意とするところではあったし、常にマスク必須、呑み会・ライブ・フェス・旅行も自粛。 5月8日以降の5類移行は個人的に勘弁してくれと思っていたし、声出し解禁になったライブはますます行けなくなったと諦め、海外に行けるようになるのはいつになることやら、と嘆息する日々を送っていた。 出掛けるにしても基本一人で、隠密活

          沖縄滞在24時間以下

           なんと沖縄の地を踏むのは高校の修学旅行以来である。  今でも思い出す。  ホテルにチェックインした後、クラスの陽キャ達は早速夕焼けに染まる海辺でビーチバレーに興じ、私はそれを涼しい部屋から「青春ですなあ」と冷ややかに見下ろしていたこと。  ガマの中でガイドさんが「それでは明かりを消してください」と皆の懐中電灯を消させる強制イベントを発動し、「……さあ、何が聞こえますか」と怪談めいた展開に持って行こうとして女子が悲鳴を上げたこと。  国際通りの酒屋さんにて試飲した上で泡盛とパ

          沖縄滞在24時間以下

          キッチンの照明が切れた。

           キッチンの照明が切れた。  あーあ。  丸椅子に乗ってカバーを取ってみたらまあるい蛍光灯がふたつ。内側は完全に沈黙しており、外側のがじりじりと明滅を繰り返していた。  今住んでいる家の天井は古いマンションにしては高く、引っ越してきた当初は視界が広くていいなあと思うと同時に明かり切れたらめちゃくちゃめんどくさいやつやんこれ、という懸念が去来していた。そして遂にそのときは来た。越して来て2年半と2ヶ月が経過していた。  私が決して長身ではない所為もあるがこのままでは手が届かない

          キッチンの照明が切れた。

          KENZOといえば。

           先日高田賢三氏の訃報に接した。その名前を聞いてぱっと脳内に思い浮かんだのが原色の赤と緑、そして鮮やかな花柄。次に思い出したのが、人生で初めて手にした眼鏡だった。  気がつけばよく本を読む子供だった。  今度生まれるみっつ下の弟が双子だと知って、当時の記憶はあまりないけれど、長子たる者しっかりせねばならない、これから大変になるであろう親に迷惑をかけてはいけないという意識はこの頃から芽生えていたように思う。大人しく家にある絵本を片っ端から読んではすぐに暇を持て余してしまう私に

          センチメンタル新御堂筋

           元より一旦感傷に浸ると必要以上に沈み込んでしまう性質ではある。  例えばペットロスは干支一周を超えても尚健在で未だにあの日の早朝を思い出しては涙し、折に触れ小学生の頃に亡くした父方の祖父を思い出してはめそめそする程度には後ろ向きな性格を自分でも持て余す。  そんな自分が5年の東京勤務を経て大阪に帰って来たはいいけれど、ブランクを経て何だか余計にダメージを受けている。ような気がする。そんな話である。  何がというと新御堂の所為である。  新御堂。しんみ、とも呼ぶ。大阪北部を

          センチメンタル新御堂筋

          煙草の思い出。

           煙草くさ。  席に着くなり、ニオイが鼻についた。見ると二方向、正面と右手のテーブルに今となっては少数派な紙巻き煙草を手にする客が観測出来た。  自分も吸ってたのになあ。身勝手な自分にびっくりしながらレモンハイをオーダーして文庫本を開く。  ……あかん、気になる。  いつまでも煙が躍っている店内だから余計にそう思うのかも知れない。待ち合わせしている友人が仕事で遅れると連絡があったので本を片手にお先に失礼して喉を湿しながらのんびり待っているだけなのに、どうにもこの煙とニ

          寒空善哉

           東京に桜の開花宣言が出て雪が降っている今日、大阪の私はごろごろと本を読みながらソシャゲのデイリーをこなしTwitterを覗いている。  17時になんなんとするところ、いつもなら早い晩酌の用意をする「小腹が空いた」タイム。何故か次に思ったのは「甘いものが、食べたい」だった(「孤独のグルメ」調で)  うちの食糧備蓄には常に井村屋のゆであずき缶がストックされている。人間いつ何時あんこを欲するかわからないからである。そして今日今この時がザッツライト。  餅もある。去年のが。繰

          何十年か振りに納豆と対峙した話。

          ※以降、納豆ラバーの方には不快な表現が含まれますのでご了承ください。 突然だが、納豆が嫌いである。 大阪人らしいテンプレだと笑う勿れ、実家では納豆が溶き卵と共に食卓にのぼっていた。私は一口食べてノーサンキュー、他の家族は普通に食べていた。 のっけから余談だが、朝食では唯一のコメ派(家族はトーストとコーヒー)、コーヒーが好きではない、トマトが食えない等々「わしよその子とちゃうか」と思わざるを得ないレベルで家族と嗜好の壁が多々あるが、それはさておき。 納豆である

          何十年か振りに納豆と対峙した話。

          ずりとしめじの和風アヒージョ。

          和風とか、よろしおすなあ。 唐突に私の中の京都人が囁いた。 昨日の買い出し中、久々にアヒージョにしようと思い立ってずりとエリンギを買っておいた。 で、今日、ずりを切っていたら京都人が扇子片手に現れたのである。いきなり何やのんな、今晩が大文字やからか? 私の思考回路は極めてシンプルなので和風と言えばごま油、である。 しかしごま油でアヒージョ……どないやろか。暫し黙考。 ごま油自身のポテンシャル高いしな。合わせるのは醤油やないな、鶏ガラでもないし、塩だけでいける

          ずりとしめじの和風アヒージョ。

          認識されない。

          今夜の仕事の会場は、正面玄関に自動ドアが二枚。 弁当が届いたので迎えに出ようとエレベーターに乗ったら、途中のクリニック階で学生さんぽい娘さんと母親が乗って来た。何やらスマホ片手に次にここに来る日の話をしている。 一階に着き、先に二人を下ろし、しかし早足で追い抜く。ドアの前に立ったのは私が先だった。 開かぬ。 ん? 接触が悪いのか、少し身じろぎしてみる。びくともしない。まさかもう表が閉まる時間? スマホを取り出すが当然まだそんな時間ではない。続く親子も「あれ? 故障?」と言いな

          あんバターに絡め取られる月曜の朝。

          4月9日の朝ごはん。 装束の世界に片足を突っ込んだ副産物として歌舞伎鑑賞が趣味になって久しい。贔屓は尾上菊五郎丈である。親父さまの方な。 関東に転勤になって良かったことのひとつが菊五郎を観る機会が増えたことで、今年も四月五月六月と通わなければならない。 桜もすっかり散ってしまった日曜日、四月大歌舞伎昼の部を堪能した後何かと用事があって銀座をぶらぶら……あれこれと事件が起きたけれどここでは置いといて。 銀座木村屋のビルが目に入り、久々に美味しいあんぱんが食べたくなってふら

          あんバターに絡め取られる月曜の朝。

          暑い日には南国メシを。

          2018年5月16日のお昼ごはん。 先日Twitterで見かけたロイヤルホストのさくらんぼフェアが気になって公式を覗いてみたんですよ。 現行のいちごフェアも良いなあ、ブリュレパフェ美味そう……とスイーツに思いを馳せていると視界にちらつく「シンガポールフェア」の文字。ほうほう、と釣られるままに移動する。 ま、シンガポールチキンライスは基本ですよねー。 その次に鎮座ましますメニューの存在感に目を奪われる。 ビーフ・海老・チキンのブラックピラフ ~黒醤油風味~ ほ

          暑い日には南国メシを。

          何やねんチーズタッカルビ。

          2018年2月23日のお昼ごはん。 プレミアムフライデー? そんなものはない。 最近ちょいちょい見かけるこの文字列。 チーズはわかる。 赤いから辛いのもわかる。 ……で、タッカルビて何やねん。カルビの親戚か? いや、牛肉でもないし、どうやら焼肉のカルビは関係ないらしい。 だから何やねん、と日々を過ごすうちに「使う肉はトリ」「コチュジャン使って甘め?」という情報も入ってきた。 自作してみようにも正解を知らないので判断つかんなと思っていたが、今日やっとこさ某◯屋に行くことが

          何やねんチーズタッカルビ。