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最強の社民王国 マルタ

ヨーロッパ政治において極右の台頭と並んでよく言われるのが「社民の衰退」です。ドイツSPD、フランス社会党、イタリア民主党、オランダ労働党などがその例です。これらの政党はいずれも直近の選挙で大きく議席を減らしました。以下にこれらの政党の前々回の選挙における得票率と前回(つまり直近)の選挙における得票率を示しました。

ドイツSPD
2013年 25.7% → 2017年 20.5%

フランス社会党
2012年 29.4% → 2017年 9.5%

イタリア民主党
2013年 25.4% → 2018年 18.8%

オランダ労働党
2013年 24.8% → 2017年 5.7%

※フランス社会党は第一回投票における得票率を示している

これを見ると社民政党が得票率を大きく減らしていることが一目瞭然です。フランスやドイツ、イタリアといった主要なヨーロッパの国で社民が衰退したというインパクトの大きさのためか、「ヨーロッパにおける社民の衰退」は「ヨーロッパにおける極右の台頭」と並んで近年のヨーロッパ政治における一つの潮流のように捉えられており、日本でも社民の衰退について取り上げたニュース記事をたまに目にします。(ただ、実際には社民が勢力を維持しているヨーロッパの国も多々あり、私は「社民の衰退」と簡単に片付けてしまうことに懐疑的です。それについては今後またnoteに載せる予定です。)

さて、そんな中で社民政党が圧倒的な勢力を保っている国があります。それが「マルタ」です。私はマルタという国を選挙に関心を持ってから初めて知りました。

マルタは地中海に浮かぶ小さな島国で、イタリアのシチリア島の南に位置します。

以下は外務省のホームページ(https://www.mofa.go.jp/mofaj/area/malta/data.html)に掲載されているマルタの基礎データです。

面積:316平方キロメートル(淡路島の半分)
人口:約43万人(2016年)
首都:バレッタ
言語:マルタ語、英語
宗教:カトリック

さて、マルタにおける直近の選挙結果を見てみましょう。マルタの直近の選挙は2017年です。

労働党(中道左派) 55.0%  37議席
国民党(中道右派) 43.7%  30議席
民主オルタナティブ(中道左派) 0.8%  0議席
※過半数は34議席

労働党が過半数の票を得ていることが分かります。また、マルタが今時のヨーロッパでは珍しい完全な二大政党制であることも分かります。マルタと同じく小さな国であるにも関わらず政党が乱立しているアイスランドとは対照的です。

この選挙結果によって労働党は選挙前に引き続き与党の座を維持することができました。社民政党である労働党が55%もの票を得ていることも驚きなのですが、それ以上に驚くべきは直近の世論調査です。以下はMaltaTodayによって今年11月5日〜8日にかけて行われた政党支持率世論調査の結果です。

労働党(中道左派) 68.8%
国民党(中道右派) 29.1%
民主党(中道左派) 1.0%
民主オルタナティブ(中道左派) 1.0%

労働党の圧倒的な支持率の高さが分かります。支持率2位の国民党を約40ポイントも突き離しています。直近の選挙では労働党は第2党の国民党に11ポイント差をつけて勝利しましたが、選挙から1年が経ってさらに両党の差が広がったということになります。ある特定の政党の支持率が7割近くに達するというのはヨーロッパのみならず世界各国でもほとんど例がないでしょう。ハンガリーで圧倒的な支持率を誇るフィデスも支持率は50%前後です。マルタに次いで社民政党の支持率が高いイギリス(労働党)でも支持率は40%程度にとどまっていることを考えると社民政党がいかにマルタが支持されているかわかると思います。

今回は社民政党が圧倒的な支持を得ている国、マルタについて紹介しました。マルタは小さな国であり、なかなか注目されることはありませんが、選挙結果や支持率調査を見る限り「ヨーロッパ最強の社民王国」と言っても過言ではないでしょう。社民政党を支持している方はマルタの政治にも注目してみることをお勧めします。




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