村上春樹さんの『猫を棄てる 父親について語るとき』
この本の父親というのは、私の予備校時代に古典を担任されていた、村上千秋先生のことです。
自分の知っている人物が本になるのは、不思議な感じがしました。
村上先生は京都の御公家さんのような雰囲気で、受験技術を教える予備校では異色の存在でした。時折、全く授業とは関係のない話をされることもありました。
印象に残っているのは蓴菜の話です。知人から美味しい食べ物があると、蓴菜の採れる沼に連れて行って貰ったことがあったそうです。採れたての蓴菜は美味しかったと、食べる仕草をしながら話さ