死を悼む動物たち
自然人類学者の著書『死を悼む動物たち』(2018、草思社文庫、バーバラ・J・キング著/秋山 勝訳)はヤギ、ニワトリ、犬、猫、クマ、ゴリラ、イルカを始め、さまざまな動物の観察記録が記されている。電子書籍はあまり好みではないが、検索機能など調べ物には重宝する。この本は動物たちが総出演しているので、電子版書籍(2011年刊行)を入手。
どの動物たちも親子や仲間の死に出会うと、悲しみの表情や行動を表すそうだ。動物の中でもゾウが仲間を悼む様子は、大好きな物や枝や草を捧げたり、さながら儀式のようだ。
母ゾウを失った子ゾウの様子については、人の悲しむ姿となんら変わらず。死んでも離れ難い様子が観察記録として書かれている。人と違って、ゾウは鼻が手の代わり。鼻で死体をさするらしい。『ゾウがすすり泣くとき』(2010、河出書房新社、ジェフリー・M・マッソン、S・マッカーシー著、小梨直訳)にも詳しく記されている。共に、どんな動物の感情も、人の心にも響くことが記されている。
現代はペットを飼っておられる方が多いので、彼らの気持ちがよ〜くわかるだろう。しかし、学問の世界では、動物に気持ち(感情)があるというのは擬人化だとご法度。1990年代では、女性の動物学者は感情移入しやすいからダメだという評価があったらしい。そんな壁を壊そうとしたひとりが、バーバラ・J・キング博士である。
今でこそアニマル・ライツという言葉も知られるようになったけれど、「動物は人間より劣っている」という大前提がある。しかし、果たしてそうなのだろうか?