見出し画像

【アークナイツ雑談】8章のストーリーで散らばっているネタとそのモチーフ

 コシチェイについて2本翻訳して、コシチェイだけでもないなって思って散らばっているものについても何か書こうって思って、多分8章についてエルの仕事はこれで最後だと思います。とある1点についての深堀ではなく、単純に「ここのこれがこうではないか」の雑談なので、少しお付き合いいただければ嬉しいです。

一、石棺までの距離--1,453m

M8‐2
ケルシー:偵察オペレーター、ここから石棺までの直線距離を計算できるか?私の送る波形から位置を判定してくれ。
ケルシー:……1.4キロメートルか。精確な数値は出せるか?
ケルシー:1,453メートルだな。
ケルシー:……私の計算ミスでなければ、レユニオンの部隊とサルカズの特殊感染者が衝突した位置が、シティホールからちょうど1.4キロ前後の地点だったはずだ。

 1453年5月29日、通称コンスタンティノープルの陥落。この事件により東ローマ帝国は滅亡した。同年、トヴェリの僧侶Foma (Thomas)が『The Eulogy of the Pious Grand Prince Boris Alexandrovich』を執筆し、トヴェリが第三のローマだと主張した。
 1454年、トヴェリ大公は自分の娘マリアを、後にモスクワ大公になるイヴァン(イヴァン3世)と結婚させ、マリアは1458年に一人の息子イヴァンを産んで、1467年に亡くなられた。
 コンスタンティノープルの陥落後、東方正教圏ではモスクワを「第三のローマ」にする動きが出始め、1469年、ローマ教皇パウルス2世のおすすめの下でロシア・ツァーリ国のイヴァン3世は、ビザンツ皇帝コンスタンティノス11世パレオロゴスの姪であるゾイ・パレオロギナと結婚した(*パレオロゴス王朝は東ローマ帝国最後の王朝とされている)。 

画像4

神聖ローマ帝国の紋章(双頭の鷲)

画像2

パレオロゴス王朝の紋章(双頭の鷲)

画像3

ロシア帝国の紋章もまた双頭の鷲

画像5

そしてウルサスの紋章

 これは、ウルサスの精神的な源はローマにありという象徴であろうか。それとも歴史の繰り返しを語っているであろうか。

ニ、悲劇の種族ティカズ(サルカズ)と三度大火

M8‐2
ケルシー:カズデルに生を受けた、悲劇の種族サルカズ……どこにいても道具として利用される運命なのか。

ケルシー:しかし、故郷を失ったティカズ人は、今では根無し草のサルカズ人となっている。

 サルカズは「サルカズ」という蔑称と「ティカズ」というまたの名がある。

JT8-2 戦闘後
タルラ?:カズデルは三度大火に滅んだ。幾度となく再建され、幾千万の新たな血を手に入れ、朝廷によって統治された。しかし、古き住民は皆灰と化し、風と共に去った。

在りし日の風を求めて・マドロック編
カズデルへの道のりは長い。
かつて見たその景色を忘れてしまうほどに。
カズデルは荒れ果てた不毛の地だが、かつての戦争で廃墟になった場所に流浪者たちが町を作り、まずまず栄えている。
サルカズには贅沢な城を持つことなど許されていない。私はただ、長く続く闘争の中でも一息つける静かな場所が欲しいだけだ。

 ティカズについて話す前に、まずはサルカズという種族のモチーフから話しますと、この間書いたイベリアの考察の内容と同じですが、少し抜粋させていただきます。

 わたしは、あなたとの間に、また後に続く子孫との間に契約を立て、それを永遠の契約とする。そして、あなたとあなたの子孫の神となる。わたしは、あなたが滞在しているこのカナンのすべての土地を、あなたとその子孫に、永久の所有地として与える。わたしは彼らの神となる。
                    ーー『創世記』17章1‐14節

 ユダヤ教の神話的始祖アブラハム一族は神に導かれてカナーン(現パレスチナあたり)に移動した。アブラハムが神から、カナーンの地をアブラハムとその子孫に与えるという啓示を受けた。
 この時以来、カナーンはユダヤ民族にとっての「約束の地」となり、紀元前928年~紀元前63年の間、約束の地を巡って色んな侵略と奪還を経て、紀元前63年にユダヤ地域がローマの属国となった。
 132年、ユダヤ人反乱。鎮圧された後に属州「ユダヤ」は「シリア・パレスチナ」に改称され、ユダヤ人のパレスチナへの立ち入りが禁止された。これがディアスポラの始まりと呼ばれ、135年~1948年、イスラエル建国以来、ユダヤ人は長きわたり、自分の国を持っていなかった(イスラエルとパレスチナの話になるとまた複雑になるので省略します)。
 サルカズは、「煌めき輝く城を持つことは許されない」モチーフはここから来たのではないかと思う。
 そして三度大火は、エルサレム神殿の話がモチーフだと考える。
 ソロモン王時期(紀元前967~紀元前928)に建てられたエルサレム第一神殿、そのあとの紀元前515年に出来上がった第二神殿(今エルサレムにある「嘆きの壁」は第二神殿の壁とされる)、紀元前20年にヘロデ大王によって完全改築された第三神殿は最終的にすべて破壊された。
 では、ユダヤ人というヒントを頭に入れて、サルカズとディカズの呼称について見てみよう。

【七章プロローグ】
W「別に魔族って呼んで構わないのよ。サルカズなんて呼ぶのは、心優しき善人を装うお偉いさん方くらいなものよ。あたしたち傭兵は、自分たちがどんな種類のクズなのかちゃんとわかってるし。」
タルラ「冗談だろう?魔族とは「駆逐すべき劣等種」。お前たち傭兵は、そのような定義を決して受け入れない。ましてやそれを誇りに思うはずがない。」

 歴史において、全く同じような言葉を口にした人がいた。そう。ヒトラー。ヒトラーの著書『我が闘争』において、ユダヤ人種劣等論を展開し、その後、1939年の演説の中でユダヤ人の抹殺を宣言した。これが私たちの知っているホロコーストである。タルラに憑いているコシチェイの言論はナチズムの要素が色濃く出ており、詳しくは昨日アップした『コシチェイの哲学』の考察にご参照ください。
 ここの「駆逐すべき劣等種」のモチーフはヒトラーの発言から因んだもの以外、「ヘブライ人」という歴史的呼称の要素も取り入れられていると考える。
 イスラエル民族を「ヘブライ人」という単語を使って呼ぶのは、「移民や奴隷などの例外的で不安定な状況にあるイスラエル人」を指し、特にエジプトで奴隷生活を送っている時代のユダヤ人はヘブライ人と言われたらしい。
 ユダヤ人の自称は「イスラエル人」で、「イスラエル」とは、神がイスラエル民族の祖先であるヤコブに与えた名だと言われている。

「あなたの名は、もうヤコブとは呼ばれない。イスラエルだ。あなたは神と戦い、人と戦って、勝ったからだ」
ーー創世記32:28

 サルカズという呼び方は「ヘブライ人」由来で、ティカズは、「ユダヤ人」あるいは「イスラエル人」から来たのではないかと考え、個人的に前者のほうだと考え、カズデルの再興が果たした後に「カズデル人」とか他の呼び方こそが後者かもしれないと勝手に思っている。

三、ウルサスが滅ぼしたガリア

 8章の中でウルサスによって滅ぼされたガリアについて、実はローグライクのアイテム紹介にも出ていた。

画像1

ローグライク・アイテム図鑑No.103
・「ロイヤル・リキュール」
 既に滅亡した国「ガリア」の高級酒。今はコレクターしか持っていないレア物で、価値が非常に高い。産地は現リターニア地方。製作法は既に失われている。

 ストーリーの中で、アークナイツのガリアはかなり強い国であったとわかるが、最終的にウルサスに滅ぼされ、ウルサスのモチーフがロシアと思ったら、ガリアのことは恐らくフランスで、この戦争のことは恐らく1812年、ナポレオン1世によるロシア帝国への侵攻はナポレオン戦争の転換点である、ロシア戦役がモチーフであろう。
 なぜフランスなのか、他のところにも色々ヒントがあると思う。(テンニンカ嬢の白旗を置いといて)まずはガリアという名前はガリア起源説が由来ではないかと考え、ガリア起源説はフランス人が自分達のルーツを古代ガリア人に求めることを指す。この説は近代になっても利用され、フランス人=ガリア人というイメージが作り上げられた。
 少し先のオペレーター・レコードの話をしますが、設定でも先行情報が無理の方はこの部分をスルーしてください。
 アーススピリットのオペレーター・レコードで、アーススピリットはエイヤフィヤトラに、とあるガリア語タイトルのピアノの曲を教えていて、そのタイトル名は中国語で『月光曲』と書かれている。
 ピアノ、月の光と言ったら、すぐ思いつくのがベートーヴェンの『月光ソナタ』か、クロード・ドビュッシー『ベルガマスク組曲』第3曲「月の光」かという2曲。前者はウォルモンドの時に考察した通り、ベートーヴェンはアークナイツの世界でリターニア人とされ、ならばアーススピリットがエイヤフィヤトラに教えたピアノの曲はドビュッシーの「月の光」のはずで、タイトルはフランス語「clair de lune」、アークナイツ世界のガリア≒現実世界のフランスと言えるであろう。
 現実世界と異なる点として、アークナイツのロシア戦役は、フランス(ガリア)がロシア(ウルサス)に侵攻し、敗北、退却しただけではなく、国ごと潰されたという結末を迎えた。

四、ヒッポグリフの統治

END8‐1
イスラーム・ヴィッテ:我々がヒッポグリフの支配を覆してから、すでに千年近くが経とうとしています。ウルサスの民の強靭さは、老いぼれた怪物の一匹や二匹ではどうすることもできませんよ。

R8-5 戦闘後
コシチェイ:サルカズとサンクタが上手くやっていけるか? カジミエーシュ人とウルサス人ならどうだ? 一生懸命苦労を重ねてきた熊が、傲慢で無能なヒッポグリフと共存できると思うか
コシチェイ:お前がその方法を教える? 何という傲慢な考えだ、我が娘よ! まさかその格好と身分を利用して彼らを統率するとでもいうのか?
コシチェイ:おっと、もちろんわかっているさ。お前ならできる。
コシチェイ:タルラ、元より統治される定めの者たちを、お前はいずれ治めることになるだろう。黒蛇の知識を継承し、赤龍の血を宿し、熊の国土を踏みしめながらヒッポグリフの歴史を読み解く――

 ウルサスは、今の熊の支配以前は、ヒッポグリフによって統治されていた時期があった。そしてコシチェイの言葉の中のヒッポグリフは、傲慢で無能だと言われている。
 政権や統治の話だけで見ればロシアの歴史はそれほど複雑なものではなく、(大公国とか複雑な部分を省略して)単純化して解釈すれば東ローマ帝国の文化とスラヴ文化を統合したキエフ大公国⇒モンゴル帝国の侵攻・統治⇒ロシア帝国、ヒッポグリフは何を指しているのか、少なくともモンゴル帝国の要素はモチーフにあると考える。

JT8-3 戦闘前
「不死の黒蛇」:何万ものルーシの勇士の、鼓膜を突くほどの艦砲射撃音を聞いたことがあるか?横暴なガリアたちが、血と泥の中で粉々にされる様子を見たことがあるか?

 ルーシの勇士はまさにモンゴルのルーシ侵攻を指しているのではないかと考える。これは、1223年のカルカ河畔の戦いに始まり、1236年のバトゥの西征で本格化する、ルーシ諸国に対するモンゴル帝国の征服戦争である。コシチェイはルーシの戦士たちを「勇士」と呼び、ルーシ=ウルサス側で、艦砲を使用したこともカルカ河畔という地理的な要素に結びつくことができると思う。

画像6

 余談で今のモンゴル国の国章を見てみると「ヒーモリ」という馬が書かれていて、鷹狩りの文化を加えて考えれば「鷹+馬」、ヒッポグリフに似ていると言っちゃ似ているね…。周知の通りへラグのモチーフはヒッポグリフ由来だと言われていて、2周年コーデの「斥候を好む」発言とスピード重視の戦術は遊牧民族に似ている要素もあるかもしれない。(となればへラグは統治階級のヒッポグリフの血を引いている可能性も?)

四、ウルサスの先皇と現役皇帝--フョードル

 この章と次の五章は、主に参考資料にある大陸の考察を読んだ上でその内容をまとめて、個人の理解を加えたものであることを予め説明させていただく。
 8章のストーリーからも、へラグのプロファイルからも、7章ボジョカスティ最後の言葉からも、ウルサスの先帝は対外的に戦争を頻繁に起こし、征服事業に成功している方で、内政面は絶対君主制と専制政治の色が濃いと考える。
 現役皇帝はEnd8‐1のストーリーから見れば、あまり自分の意見を持たない人で、名前は「フョードル」だと。上記先帝に関する情報と結び付けて、ウルサスの現役皇帝は恐らくロシア史上のフョードル1世で、先帝、つまりフョードル1世のお父さんはイヴァン4世(イヴァン雷帝)だと推測できる。イヴァン4世の対内的政策を調べてみると、ウルサスの政策と似ているところがたくさんあり、ここでは特にピックアップしない。
 イヴァン4世がなくなられてから、遺言書で5人の重臣を摂政に指名していたが、この摂政団は熾烈な権力闘争を展開した。ここの権力闘争は大反乱の旧貴族と新貴族の闘争に対応すると考える。

五、チェルノボーグで起きていること

 今回チェルノボーグの裏で動いているウルサスの第三、第四集団軍は皇帝の利刃と同じ、黒蛇の理念に従い、黒蛇は先皇が残っている影響力と旧貴族を利用して炎国との戦争を起こそうとしていた。
 ウルサスの子供たち、ロサのストーリーで一部チェルノボーグの官僚は事件が起きる前に既にチェルノボーグから逃げたと述べて、この一部の人は黒蛇の計画の中での「仲間」、ウルサス旧貴族である可能性が高い
(*ロサ自身は新貴族で、ボジョカスティに殺された市長ボリスも、お金や産業の力で官位を手に入れた新貴族の代表で、彼らはみんな逃げられなかった事実があるため、上記はこの事実を元にした推測である)。
 この行動は、皇帝に知られてはならない。新貴族の統治が無能だからその配下にある感染者たちは暴動を起こしたという「事実」を作るためにも、この一連の行動は密かに行わなければならない。レユニオンはこの計画の中の捨て駒でしかない。
 これもMantraチームのエリジウムとホックがウルサス軍の装備を見つけた時に、例の会話が指していることで、旧貴族と第三、第四集団軍は裏で、炎国(ロンメン)との戦争が起きるその一瞬を待っている。
 

参考資料

ユダヤ人、ヘブライ人、イスラエル人の呼び方について
http://seishonyumon.com/question/3044/
現役ウルサス皇帝についての考察
https://ngabbs.com/read.php?tid=24006849&rand=235
チェルノボーグ事件の裏にある権力闘争
https://bbs.nga.cn/read.php?tid=26036615&_fp=12&rand=479


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?