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まさかの事件と、まさかの上から目線、そしてわたしは遠い目で回顧する

姉さん事件です。(「ホテル」の赤川一平風で)

それは朝っぱらから起こった。

いつもの通り、洗い終わりホヤホヤの洗濯物を取り出そうと洗濯機の扉を開けた。その瞬間、信じられないものが目に飛び込んできた。

洗濯機の中に…

ゼリー?

透明のゼリーが洗濯物にビッシリへばりついているではないか!

キレイ……     そうじゃなくて…

何これ?

よく見ると奥の方にひときわビッシリゼリーをまとっている塊がある。次男のズボンだ。

嫌な予感しかしない…

ゼリーだらけの次男のズボンを持ち上げる。すると、ボトリと何かが落ちた。

オムツ!?パンツ型オムツじゃんッ!


…やっちまった。

ゼリーの正体はオムツのポリマー。

おしっこを漏らさず吸収してくれるありがたいポリマー様だ。

いつもは本当に助かってる。助かってるんだけど!今はわたしを絶望のどん底に落とし入れる悪魔でしかない。 

洗濯機の中で、パンパンに膨れあがった紙おむつ。破れた所から溢れ出すポリマー。それに侵された洗濯物の山。

悪夢か?これは。

呆然とポリマーだらけの洗濯物に手を伸ばす。

ヌチョリ…

嫌な感触…

とにかくポリマーを洗濯物から取らなきゃ…と触る。すると悪魔のポリマーは手につき、床につき…どんどん周りをゼリーで侵食していく。

なんなのよ!これ!

それでも、いつものわたしだったら、「失敗しちゃった!てへッ♡」で済んでいた。しかしこの時のわたしはダメだった。

毎日毎日、朝から晩まで4歳と1歳の男の子2人の育児。それを1人でやっていた。

ダンナは仕事で忙しいし、わたしが1人で頑張るしかない!

必死だった。

ヘトヘトだった。

とにかく疲れてた。

そこへ、このポリマー事件である。

まさにトドメの一撃。

「なんで…オムツが洗濯機に入ってんのぉ?」

震える声で、そう口に出した途端、

ブチッ…

わたしの何かがキレた。

うーーーーわあああああああああ!!!!

わあああああああああああああああ!!!


朝の静寂を切り裂く大号泣。しかも大人の大号泣である。

そんなに大声で泣くッ!?わたしの中のリトルナカムラがドン引きしてる。でも止まらない!止まらないんだよ。涙が後から後から溢れ出てくる。 

うわああああああああああああああ!!!


目の端に息子達の姿がうつった。ビックリした顔をして固まっている。そりゃそーだ。

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洗濯機の前で座り込み、ポリマーだらけの破れたオムツを握り締めながら大声で泣くママ。

カオスだろ…

長男の横にTシャツ姿に紙おむつの次男が立ってる。そう、あんたがまさに今はいている紙おむつだよ!それのせいなんだよ!

驚いた顔で固まったまま、わたしを見ている次男。なんて可愛いんだ!ちくしょう!てか、なんで紙おむつ一丁なんだ!ちゃんとズボンをはけ!

ビックリして固まってる息子達の姿を見たら少し落ち着いてきた。

ハァ〜〜…

なんか声を出して大泣きしたら、妙にスッキリしたわ。

「さぁ〜片付けますか」と気を取り直すことができた。大泣きの効果は絶大だわ。

…て、

赤川一平風に、冒頭で言っていた"事件"はこのポリマーの事ではない。

ポリマー事件から15年後の話である。

その日もわたしはいつもの通り、洗い終わりホヤホヤの洗濯物を取り出そうと洗濯機の扉を開けていた。その瞬間、次男の姿が目の端に入った。16歳になっている次男である。

次男「なんかさぁ〜マミーがそうしてると思い出すよね〜」

わたし「何が」

次男「オレが小さい時さ〜オムツ洗濯しちゃって…マミー、洗濯機の前で大声で泣いてじゃん」

「は!?」


固まるわたし。

わたし「あんた覚えてんの!?だって1歳くらいの時だよ!?」

次男「覚えてるよ。オレ、ビックリしたもん。オレがズボンと一緒に洗濯機に入れちゃったんだよね〜」

ウソでしょ!?そんな小さい頃の事覚えてるの!?

あ…

わたしには1つ、気になっていた事がある。

驚いた顔で固まったまま、わたしを見ていた次男。あの時、何を考えていたのか気になっていたのだ。

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Tシャツ姿に紙おむつの可愛いあの姿で何を考えていたのか…? きっと、わたしの事を心配していたんだろうな…と思いつつ聞いた。

わたし「あの時、あんた何考えてたの?」

次男「ん?」

わたし「固まってこっち見てたじゃん」

次男「ああ…」

  「やべえ」


わたし「え…やべえ?」

Tシャツ姿に紙おむつのあの可愛い姿で考えてたのは「ママ、大丈夫?」でもなく、「オムツを洗濯機に入れちゃってごめんなさい」でもなく


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「やべえ」かよッ!

ガク〜〜

なんか力抜けた。

次男「でもさ〜…」

小さい頃の思い出を懐かしむ様に、遠い目をして薄ら笑いを浮かべ、そして次男は言った。

次男「マミーの偉いとこはオレのこと怒らなかった事だよね。」

わたし「え…」

次男「あれは偉いよ。マジで。うん。」

ギャフン

15年後、まさか上から目線でお褒めに預かるとは…

15年前のわたしに教えてあげたいよ…15年後、やらかした犯人に褒められてるよ…と。

どーゆーこっちゃ…

今、

まさに、今現在。

小さい子と日々過ごしているママ、パパ、おじーちゃん、おばーちゃん、おじちゃん、おばちゃん、全ての人に。

子供の記憶力、半端ないスよ…


覚えてますよ。   マジで。


15年後、子供に上から目線で当時の育児についてジャッジを下されないように今からご注意下さい。

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「やべえ」じゃねーよ!


現場からは以上です。






















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