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箱根駅伝2022 学生新聞オンラインプレスセンター編集後記

「応援したいから応援にいかない」
箱根駅伝主催である関東学連から発せられたメッセージ。
箱根駅伝を走る学生たちに一番寄り添っていた大学新聞も2年にわたって現地での取材活動の自粛をよぎなくされました。そこで文化放送を中継基地として、関東10大学(明治 青山学院 中央 駒澤 法政 帝京 東海 東洋 専修 早稲田 )の学生新聞記者をZOOMでつなぎ、テレビ、ラジオ、新聞、雑誌では拾いきれない切り口の情報を一斉にツイート。母校のファンたちに箱根情報を送り続けるという学生新聞オンラインプレスセンターという企画を二日間にわたってお送りしました。

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二日間にわたってテレビを観ながら母校を応援するツイートをしつづけた学生記者たちの編集後記をお届けいたします。じっくりお読みくださいね。

明大スポーツ3年・入野祐太
まずは全校無事に途中棄権がなく、大きな問題がなく今大会を終えたことに安心した。明治大学に限れば2年連続、苦しい戦いに。私自身もまさかという言葉が最初によぎった。今年度は、昨年度の反省を活かして1、2区から明治が誇る二枚看板を投入。「1区が重要」という山本佑樹駅伝監督の言葉通り手嶋杏丞を(情コミ4=宮崎日大)起用した。持ち味の積極果敢な走りを見せるも区間13位と、実力を発揮できなかった。手嶋から襷を受けた鈴木聖人駅伝主将(政経4=水城)も、序盤からなかなか流れに乗れず。それでも、「自分なりには出し切れた」(手嶋)。明治の顔としてチームを支えた2人には本当に感動したし、社会人でも応援し続けたい。

往路17位出迎えた復路では、富田峻平(営3=八千代松陰)と橋本大輝(営4=須磨学園)の好走が光った。富田は昨年度の悔しさを晴らす、素晴らしい走りを。また個人的には橋本の走りに胸が高まった。一般入部として明治に入って4年。寮と一人暮らしということもあり、大きなギャップもあったと思う。本人も「馴染むのに苦労した」と、大きな苦しみもあったはずだ。またケガにも苦しみ、練習ができても試合で結果が出ない時期も長かった。それでも練習を積み重ねチームの主力に成長。10区の区間賞候補になるほどの力を付けて、見事周囲の期待に応える結果となった。最初で最後の箱根となったがファンの記憶に残る、心から応援してもらえるような選手であった。

来年度も予選会から出場となる明治。厳しい戦いになる可能性はあるが、今回出走した3年生を中心に来年度こそ箱根で結果を出したい。力のある新1年生も入学してくる。次こそは。明治の巻き返しに期待したい。
厳しい試合になりましたが最後まで前を追い続ける姿は、感動しました。そしてお疲れさまでした。皆さんを取材する時間は本当に楽しく、皆さんだからつらいことも頑張れました。本当に楽しく華やかな時間をありがとうございました。

「惜しくも届かなかった総合3位」
スポーツ東洋 水越里奈

鉄紺の「証明」。第98回箱根駅伝は、今年の東洋大が掲げたこのチームスローガンを存分に見せつけられたレースでした。
初出場にも関わらず序盤から積極的に前を追う選手や山の頂上まで部を率いた主将、表彰台に迫るまで脅威の追い上げをみせたアンカーなど、気迫のこもる勇姿が輝きました。その中でも、今年私が特に心打たれた選手がいます。
箱根3度目の出走、9区の前田義弘選手です。2年前にも、取材に伺い記事を書かせていただきました。1年生から箱根路で鉄紺を纏う前田選手のイメージは、積み上げた経験で確実にタスキを繋ぐ安定型。帝京大・東海大と並び9位で中継所を出た時は、「この2校をかわし、どうかシード権を…」と祈っていました。
しかし現実は想定外。並走する大学と牽制することなく、前に出たのです。さらに集団の前を走る創価大も仕留め、気づけば6位へ。革命的なここまでの「攻めの走り」に胸迫りますが、証明の追い打ちは続きます。後方から上がってきた国学大のエースに食らいつきました。前半で突っ込んでいるため厳しいか…という一瞬の不安も裏切って、5位が見える位置で粘りタスキを繋ぎました。OB・柏原竜二さんが「駅伝では抜かれた後の粘りが重要」と仰るように、この走りが復路2位の要であると個人的には感じます。なにより前田選手の自信と闘志が表情に、走りに溢れ出ていて、2年前からの成長に大変驚きました。「『『怯まず前へ』『その1秒をけずり出せ』の鉄紺スピリッツとはこういうことだ」と2日間で全部証明していただきました。惜しくも届かなかった総合3位以内に向けて、チームがどのように動き出すか。来シーズンも進化し続ける選手達の活躍を、次は後輩達が作り出す紙面を通して応援できる日が楽しみです。
最後に、今回は素敵な機会を設けていただき本当にありがとうございました。EKIDEN Newsさん・文化放送さんのご支援のもと、新たな様式での活動に色をつけることができました。また、入学式で拝見した偉大なOB・柏原さんと時に身を乗り出して母校を応援し、駅伝有識者の方々に解説いただきながら観戦する贅沢な時間は宝物です。ここ2年、取材は非対面のみ。素材は手に入らないし情報にも追いつくことができず、正直学生メディアを名乗って良いのか不安な日々でした。その中で暖かく手を差し伸べてくださった関係者の皆様、頼もしく支えてくれた後輩、大会を開催・運営してくださった皆様に心から感謝申し上げます。



第98回箱根駅伝 感想 東洋大学スポーツ新聞編集部 松本考史

ようやく動き始めることができた。東洋大学スポーツ新聞編集部では新型コロナウイルスの影響により2020年の春から紙面の発行が中止。活動もウェブ1本となり、自分が入部した時にはすでにオンライン取材が浸透している状態にあった。スポトウ記者となってからの活動はもっぱら家の中。東洋の駅伝ファンだった自分にとって、1番やりたかった長距離部門の取材ができないという状況、そして新聞が作れない新聞部の現状を前にしては、このまま在籍し続けるべきか否か、疑問が生じないわけにはいかなかった。
 しかしコロナが少しづつ落ち着きを見せた昨年の12月、大学の活動制限も引き下がり、スポトウは約2年ぶりとなる紙面発行を再開。そしてこの度、学生新聞オンラインプレスセンターに参戦し、他大学の新聞部さんたちとともに、S N Sを箱根一色に染め上げる勢いで箱根駅伝を盛り上げることができた。
 今年は「往路優勝」「総合3位以内」を目標にしていた東洋大。2区では松山和希選手が昨年同様の好走で区間日本人2位の活躍を見せ、レースは順調に運ぶかと見えた。しかし4区で大幅に順位を落とすと、続く5区の宮下隼人選手も思うような走りができず。往路優勝、そして自身が2年時に出した区間記録の更新を狙っていただけに、完全燃焼とはいかなかった。
 それでも最後まで主将らしい姿だった。ゴール後、宮下選手は5区のコースに向かって深々と一礼。3年連続で駆け抜けてきた5区に感謝の意を表した。
 迎えた復路、チームは宮下選手の雪辱を晴らすかのような勢いで1人、また1人と前を行く大学を追い抜くと、ラストはアンカー清野太雅選手が“1秒をけずり出す”走りで猛追。3つ順位を押し上げ、3位駒澤大とはわずか2秒差、総合4位で大手町へと飛び込んだ。惜しくも目標の3位以内には届かなかったものの、芦ノ湖9位から4位へと順位を押し上げる意地の走りで、鉄紺の強さを証明した。
 今年も選手たちの活躍を間近で見ることは叶わなかった。コロナ禍にあっては「仕方がない」と割り切るほかないのかもしれない。そういった中で、このオンラインプレスルームは我々にとって貴重な活躍の機会となった。しかし欲を言えば、やっぱり現地で取材がしたい。
自分がスポトウで活動できるのは残すところあと1年。来年こそは。
 
東洋大学スポーツ新聞編集部 陸上担当
東洋大学 文学部 哲学科 2年
松本考史

駒大陸上部「華の世代」、2学年。感じた苦しさは次への強さに

 コマスポの記者として、初めて迎えた箱根駅伝。私にとって、この1月2日と3日は「駒大陸上部への愛がさらに強く深まった2日間」となった。
 最終的な駒大の順位は3位。大会前、大八木監督は「今年度は故障者もいたので、確実に3番以内に入るのが目標。全員駅伝で戦い、結果として2連覇できれば」と話していた。結果だけ見れば、3番以内という目標は達成している。しかし、総合優勝と同時に大会記録更新を果たしたライバル・青学大とは大きなタイム差が開いていた。
 遠く届かなかった連覇。ファンとして、もちろん悔しさもある。それでも、箱根を終えて私が最初に感じた気持ちは、駒大陸上部への「感謝」であった。なぜなら、駒大の継走からは「チームとして1秒でも前でタスキをつなぐ」という、まさに執念とも言えるような熱い気持ちが伝わってきたからだ。最終10区、青柿響選手が歯を食いしばりながら3位でゴールした直後には自然と涙が出てきた。私は改めて駒大を応援できていることを心から幸せに思った。そして、コマスポの記者として、こんなにカッコいい駒大の選手たちの生の言葉を聞いて取材することのできる自分は本当に恵まれていると感じた。
 レースを振り返ると、想定外のことも多かったのだと思う。今大会では特に「華の世代」と呼ばれてきた2年生の選手たちが苦しんだ。全日本では2連覇に貢献する好走を見せた3区・安原太陽選手と4区・花尾恭輔選手がそれぞれ区間16位、区間9位。昨年度の箱根のリベンジを誓っていた白鳥哲汰選手は区間10位。故障明けで復帰後初レースとなった8区・鈴木芽吹選手は足を痛め、区間18位に沈んだ。チーム自体としても、万全なオーダーを組むことができない状況下にあった。
 多くのメンバーが「小さい頃からの憧れの舞台」と語っていた箱根。それだけ思い入れのある場所で、満足する走りをできなかったことに悔いは残るかもしれない。それでも、箱根は「夢の舞台」であると同時に「通過点」。この苦しさはきっと次のトラックシーズンに、出雲に、全日本に、箱根に、そして選手のこれからの人生に強さとなって変わるだろう。
10区・青柿響選手の好きな言葉をお借りすると「人間は失敗して当たり前」。その失敗をどう乗り越え、どのように自分の成長への糧にするか。2年生には負けず嫌いの選手が多い。「華の世代」が大輪の花を咲かせるのはこれからだ。藤色のタスキは、未来につながっている。

駒大スポーツ編集部 陸上班チーフ
グローバル・メディア・スタディーズ学部2年 清水呼春
山下りも速かった! 苦難を乗り切った“強い”4年生代表・佃康平
駒大スポーツ新聞編集部3年 黒岩美彩紀

 第98回箱根駅伝、駒大の6区は当日のエントリー変更で4年生の佃康平選手が起用された。今回も前回と同じく、箱根に出場した4年生は一人だけ。3位でスタートし、2位の帝京大を抜いて、追いついてきた順大も振り切って7区の白鳥哲汰選手につないだ。
 佃選手は前回の箱根で8区を走り、駒大記録タイのタイムを出した。登りを得意とする選手で、コマスポ箱根号を作る際にも希望区間は5区か8区と答えていたことから、今回も登りで活躍すると予想していた。それだけに、6区を走るとわかったときはとても驚いた。
 そんな驚きとは裏腹に、佃選手はまるで前から山下りの選手だったかのように淡々と前を追った。特に大平台の地点、ヘアピンカーブを使って帝京大を抜かしたのは鮮やかだった。さらに「4年間、泥臭い練習ばかりしてきたので最後の粘り強さは負けられない」の言葉通り、順大との2位争いにも競り勝った。麓で待つ後輩へ向かって勢いよく走る佃選手の姿に、同学年であり前回大会6区を務めた花崎悠紀選手の姿を重ねた駒大ファンの方も多かったのではないだろうか。
 昨年度も今年度も、駒大陸上部の強い選手といえば田澤廉選手をはじめ下級生の名前が挙がることが多かったと思う。しかし箱根当日においてチームに勢いを与えたのは、前回も今回も佃選手たちの学年だった。
佃選手は大学卒業後、陸上競技を引退する。「自分の限界に挑戦しよう」と入部してから、同期みんなで苦しいことをたくさん乗り切ってきた4年間だった。佃選手なら、どんな険しい道が現れても乗り越えられるに違いない。
「学生新聞オンラインプレスルーム」(2022年1月2日、3日)
 スポーツ東洋 青木智哉
リアルタイムで共有する
 今年も『#おうちで箱根駅伝』は欠かせなかったが、無事に新年を迎えた。スポーツ東洋としての箱根駅伝。今年こそはと期待していたものの、残念ながら、画面越しで見守るしかなかった。今年度、2年ぶりに大学三大駅伝(出雲駅伝、全日本大学駅伝、箱根駅伝)のすべてを開催できたとはいえ、各チームや選手、関係者の方々が受けた新型コロナの影響は計り知れない。そして我々、東洋大学スポーツ新聞編集部もまさに苦しい状況だった。長期にわたって対面での活動が禁止され、新聞の制作、発行はおろか、取材やインタビューも思うように行えない中、陸上競技部についての情報も手に入らなかった。
 前置きはこれくらいにして、今回、現地での取材は叶わなかったが、「学生新聞オンラインプレスルーム」に参加させていただいた。各大学の学生記者がオンライン上に集まり、レースを観つつ、実況、チームや選手の紹介をTwitterで発信するという企画だが、これが意外にも大変であった。まず、いま起きている状況を正確かつ簡潔、迅速に文字で伝えなければならない。そして何より、情報を収集しておく必要がある。初めての試みだったが、やはり苦戦を強いられた。
 一方、Twitterを通して発信することに多くの気づきもあった。とくに「リアルタイム」、「共有」といった点。たしかに現地に足を運ぶことで、雰囲気を感じることができれば、一瞬を写真に収め、チームや選手の声を耳にすることもできる。しかし、情報の発信ということに関し、リアルタイム性や共有性は生まれにくい。なかでも、その場にいない人とつながることは難しいように思える。その点、SNSを通した情報の発信は一つの手段として非常に面白い。コロナ禍で生まれた新たな取り組みである。
 話は2日間のレースに。東洋大は往路9位となり、復路の中盤までシード権争いに巻き込まれた。しかし、8区の蝦夷森(ラ4=愛知)選手と9区の前田(済3=東洋大牛久)選手の快走で7位に浮上すると、最終10区。清野(済3=喜多方)選手が、前を走る選手を次々と捉えた。最後には3位争いまで演じ、4位でフィニッシュ。目標の総合3位以内には2秒差で届かなかったものの、まさに「その1秒をけずり出せ」といった意地の走りだった。これには手が震えてしまい、実況ツイートもままならなかったほどである。
あっという間の箱根駅伝。来年こそ『#現地で箱根駅伝』をつけて応援したい。みなさん本当にお疲れ様でした。
帝京スポーツ諏訪部恭平
 帝京大学を応援する人にとっては、同じ年、同じ大会の前後半を見ているとはとても思えないほどに心情の変化が激しい2日間だったでしょう。まずは大学史上最長の5年連続シード権獲得を決めた、10人のランナー中心にこれまで鍛錬を続けた駅伝競走部に祝福と労いの言葉を送りたいと思います。おめでとうございます!
 出雲、全日本と1区でなかなか流れに乗れなかった小野隆一朗選手がしっかり先頭集団に残りながら粘っての区間8位。2区では留学生ランナーと張り合い、抜かれない走りを見せてくれた中村風馬選手が日本人4位のタイムで順位を5位へ。速報しながら、過去2つの駅伝との流れの違いを感じました。
そして3区では #湘南の神 こと遠藤大地選手が4度目の3区でも快走、悲願の区間賞とはならなかったものの3位まで順位を浮上させ、この時点でデータ放送の上位3校の欄に記される帝京大の文字を写真に撮ったりと大騒ぎしていました。
 しかしさらに面白かったのがここからで、4区の寺嶌渓一選手が猛追する創価大の嶋津選手を最後の最後で抜き返す執念を見せ、トップと2分50秒差でタスキリレー。待ち受けるは昨年5区区間賞の細谷翔馬選手。もしかしたら?と思わせてくれる流れをそのまま受け取るかのように、2年連続となる区間賞で芦ノ湖ではなんと2位!決して楽なコンディションではない中での好走に興奮させられました。
 一転して復路は常に耐えの駅伝になりました。北野開平選手・福島渉太選手がひたすら粘り、大きなロスが出ないようにタイムを重ねていきましたが、8区で主将の橋本尚斗選手の調子が明らかに上がらずに区間16位と苦しく、一気に遠のいた目標3位の背中のかわりにシード権争いの影が近づく形に。9区森田瑛介選手は途中まで区間順位でも上位に入りながら最後の7㎞ほどが苦しくなって10位に後退。次第に心配になり、何度も速報サイトの更新ボタンを連打していましたが…10区の西脇翔太選手がファイアーレッドのタスキをシード権外に落とすことなく粘り、9位で大手町のゴールテープを切った時には多くの人がほっとしたことだと思います。自分も何人もと安堵の連絡を取り合いました。
 応援している自分ほどの気持ちのブレは選手にはなかったのだと思います。高く掲げたチーム目標に着実に近づき、描いた理想が崩れかけたところを踏ん張り獲得したシード権。そのどれもが、必ず選手の糧になり今後の力となってくれるはずです。4年生を始め、それぞれの舞台での活躍に期待したいです。まずは選手の皆さん、関係者の方々…本当にお疲れさまでした。
第98回箱根駅伝コラム 早稲田スポーツ布村果暖
『流れ』
 1区から歴史的ハイペースとなった今回の箱根。2日間を終えての感想は『流れ』が大事だということ。開幕前も含めていかに流れを作り、勢いづけながら繋いでいくかが、最終的な結果に表れる。総合13位で終えた早稲田の優勝という目標は、決して高すぎるものではなかったと思う。だが各校戦力が拮抗する中での一区間ごとの僅かな差、それによって生じる流れが命運を分けたのかもしれない。
 ともあれ選手やスタッフが全力で立ち向かったことは紛れもない事実であり、それに何か評価をするような立場でもないので、ひとえに来年の復活を信じ、ここでは少し違う話をしようと思う。(もはや箱根のコラムでなくてすみません。)早スポとして過ごす中で感じた『時の流れ』を少し。まだ肌寒い3月に、早朝5時台の電車で赴いた早大競技会に始まり、出雲グランプリやホクレン・ディスタンスチャレンジ。この1年で全国を飛び回り、現地は30回、オンラインを含めると40回ほど競走部の取材をしてきた。入学直後、初々しさ溢れていた選手がエンジをまとって力強い走りを見せるようになったり、チームを引っ張る覚悟を口にしたり。取材のたびに変化を感じた。
 写真を見返しても、グラウンドの木々の変化から季節を感じ、思い出がよみがえる。ただ、意外にも『エンジ』の写真は少ないと気づいた。実はインカレや駅伝という『エンジに白のW』のユニホームをまとう大舞台は、コロナ禍の2年間、学生新聞として取材に入ることはほぼかなわずに終わっていたのだ。
 毎年部員が入れ替わり、なおかつ4年間のリミットがある学生スポーツは、メンバー入りが難しく、一回一回の出場にかなりの重みがあると思う。たとえ表彰台に届かなくてもだ。だからこそ、学生新聞として結果だけにとらわれず、一人一人にスポットライトを当てたいと思った。その手段の一つが、写真。しかし自分たちが取材に入れない時はどうしても限界があった。無観客で、初エンジや最後のエンジの姿がどこにも収められず、家族にすら届かずに終わってしまった大会もあった。「また来年」と取り戻せないその瞬間に対し、何もできなかった寂しさは消えない。
 それでも学内競技会などは沢山現地で取材させてもらえたこと、電話取材を調整してくれたスタッフや選手、協力してくれた方々への感謝はしてもしきれない。早稲田はここからリスタートとなるが、チーム一丸で流れをつくり、繋ぎ、強いエンジの姿を見せてほしい。レースは一瞬でも、驚くほどに濃くかけがえのない瞬間の連続だ。それがより多くの人に届き、応援されるチームであり続けることをひとえに願う。
古豪、完全復活へ
「中大スポーツ」新聞部2年 杉浦瑛俊
 第98回箱根駅伝は往復ともに選手層の厚さを見せた青学大が、後続を寄せ付けない“圧勝”を演じ、2年ぶり6度目の総合優勝で幕を閉じた。前回は主力のアクシデントから往路12位、総合4位と真価を発揮できなかった深緑の襷。3区で東国大を捕らえると、以降は圧巻の独走劇。最終的には2位に10分以上の差をつけ完全復活をアピールした。
 復活を誓っていたのは青学大だけではない。最多優勝を誇る名門の中大は、第88回大会以降は10月の予選会を経由しての出場。第93回大会では、それまで87回連続で出場していた本選へも出られなかった。だが、昨年の箱根駅伝では復路3位。全日本大学駅伝では10年ぶりのシード権となる8位と、この1年は実績で復活を見せつけてきた。
 チームの悲願は「総合5位」。2年後に迎える第100回大会での優勝を掲げる中大にとっては、ここで5位を獲得しておきたい。シード権は最低ラインであった。
 先頭を走った吉居選手は「1区の重要さ」を強く意識していた印象が強い。全日本では1区を走り、トップと秒差無しの2位で襷を繋いだ。大会後「1区の流れが8位、シード権につながった」と振り返り、1区で流れをつくる意識は確たるものになっていた。
 その思い通り、序盤から常に先頭に立ち、6キロ過ぎからは独走。「空前絶後」と言われた1区の区間記録を15年ぶりに塗り替えた。昨年との表情の違いに、見ていて安堵した人も多いだろう。世界を目指す吉居選手には、今後の活躍に楽しみしかない。
 学生の組織は難しい。毎年人が入れ替わるなかでどうチーム作りをしていくか。規模が違えど、新聞部でさえその難しさを感じる。その中で、チームを指揮する藤原監督が大会前に語っていた「4年生への思い」が強く印象に残っている。
 「入ってきた時は本当に弱いチームだった。彼らの努力があって4年間こうしていいチームを作ってくれた」(藤原監督)。今季、例年と変化させた点には4年生に任す領域を増やした事を挙げ「その点は4年生への信頼ともいえます」と振り返っていたのも印象深い。
 僭越ながら、弊部では毎年箱根駅伝特集号を発行し陸上競技部・長距離の選手に取材させていただいている。今季はこうしたバックグラウンドからも、4年生を取り上げたく三浦選手を一面にした。取材した記者から三浦選手の人柄や考え方を聞き、前述の信頼感に合点がいった。本選でも4人抜きでシード圏内に順位を押し上げた三浦選手。平塚で、監督車から「4年間よくやった、ありがとう」と掛けられた場面にはグッとくるものがあった。
 中大の結果は総合6位。目標には届かずも10年ぶりのシード権獲得は十分の成績。監督も「今回は選手と裏方全員100点だったと思います」と語った。来季は、今回の箱根駅伝で区間一桁順位を見せた選手が6人も残ることに加え、都大路1区を走った、洛南の溜池一太選手、仙台育英の吉居駿恭選手ら有力高校生ランナーのスポーツ推薦合格が発表されている。今後も楽しみしかない。そんなワクワク感があふれる箱根駅伝だった。
『感謝』
東海スポーツ編集部 柳内紀輝
  箱根駅伝を終えた今、悔しさよりも選手たちへの感謝の気持ちが1番大きいです。
 私が、初めて駅伝チームに関わることができたのが昨年9月。そこから4ヶ月間ほど駅伝チームに関わらせて頂いて、たくさんの悔しさを近くで見てきました。特に4年生の市村朋樹選手は、全日本大学駅伝終わりの取材で、「自分は箱根駅伝を走る存在ではない」と語るまで落ち込んでいました。それでも、箱根駅伝に向け、努力し続けてきたのを知っているからこそ、周りのどんな声にも負けずにひたすら応援し続けました。
 そして当日を迎え、1区区間3位の好走を見せたときの嬉しさは、関わらせて頂いた存在として本当に喜ばしいものがありました。これぞ東海大のエースとしての走りを見せてくれた市村選手に、まずは「お疲れ様でした」と伝えたいと思います。
 また、4区を走った本間敬大主将と最後アンカーを任された吉冨裕太選手にも、4年生として立派な走りを見せてくれました。どんな結果でも後輩たちは先輩たちの思いを背負って、来年度絶対にリベンジを果たしてくれると思います。まずは4年生含め選手の皆さま、そして関係者の皆さま、本当にお疲れ様でした。
  そして何より、駅伝チームの未来はとても明るいということを今回の箱根駅伝で示してくれました。5区を走った吉田響は、5区の1年生記録を更新する走りを見せ、今後3年間は山登りのスペシャリストとして活躍が期待できる存在に。7区の越陽汰は、区間3位の好走を見せたにも関わらず、「この結果に満足していない」と力強く語るほど前を見据えており、この1年生コンビがあと3年も見れることに楽しみでしかありません。
 他にも、エースの石原翔太郎や松尾昂来、喜早駿介など、今回エントリーに選ばれたメンバー以外にも強い選手がたくさんいます。また、新入生として強い選手が入ってくることも聞いており、そのような選手たちが来年度どのような成長を遂げ、強い東海大へと導いてくれるか、今からとてもワクワクしています。
  来年度は、全日本大学駅伝も箱根駅伝も、予選会から圧倒した力を見せてくれると信じています。私はもう1年、東海スポーツとして駅伝チームと関わることができる、そんな幸せな環境の中で、選手たちの成長、そして選手たちのリベンジに燃える姿に負けないよう、私自身も精進していきたいと思います。どうか東海スポーツを、そして東海大駅伝チームを今後とも応援よろしくお願い致します。

真の『東海ブルーの逆襲』ここからがスタートです!

来年の1月2日は大手町でみなさんとあいたいですね。

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