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世界のどこを見ているか?

「俺もユージーンに行きたいんだよ」

出雲駅伝の翌日。空港での手荷物預けの列の最後尾につくと、駒澤大学の大八木監督が真後ろに並んだ。

昨日はどうも。と、出雲駅伝後に行われたタイムトライアル、もうひとつの出雲駅伝についてひとしきり話したあと、「いつも午前中に走られているんですか?」と聞かれた。「ええ。来年春に世界陸上のマラソンコースのロケハンも兼ねて、ユージーンマラソンにエントリーをしてるんです。だから走っておかないと」

午前中、ひとしきりメールの返事を終えたりして、砧公園に走りにいくと、駒澤大の午前練にでくわす。午前中の公園は人もまばらだから、スピードを出して公園内を走っても、迷惑にもならない。駒澤大はそういうところに、とても気遣って練習をしている。そして近隣の人たちが夕食の準備に入る夕方にまた坂を登って砧公園までやってくる。大八木監督も最近はコースを走っている姿をみかけるようになった。たまに抜いたり、抜き返したりしてるから、近所のジョギング仲間のように大八木監督は接してくれる。

「俺もユージーンに行きたいんだよ」
と、大八木監督は言った。
「そのためには27分28秒を切らなくちゃ」
と、続けた。

27分28秒とは世界陸上ユージーンへの10000m参加標準記録のこと。田澤廉と鈴木芽吹の2枚看板が、この参加標準記録に手が届きそうなところにある。いまの時点でこの参加標準記録をもっている日本人男子選手はいない。世界陸上行きの切符を手にするためには、まずは年内のうちに参加標準を突破しておき、年明けはじっくり駅伝の疲労をぬき、春先に向けてクロカン、トラックへと移行。5月のGGPあたりを目標にキレを磨きながら、6月の日本選手権はタイムではなく勝負に徹し、7月の世界陸上にピークをもっていく。

参加標準記録をどこで出すか?これは悩みどころであったようだ。「八王子ロングディスタンスは競技場が法政から上柚木に移転してから風が強くて記録が出にくい」と御大は言う。12月の日体大だと箱根にも合わせづらい。11月の頭だと全日本大学駅伝にも重なる。そのため、全日本大学駅伝(各地域の実業団駅伝も)と正月との間である11月第3週から4週あたりしか、年内は好記録を狙えるタイミングはない。

パリオリンピックに出場するだけでなく、戦える状態にまでもっていくには、ユージーン、その後のブタペストにも連続で出場しておく必要がある。ここの常連になっていないと、いくらレースに出てもお客さま状態であるのだ。わかってはいても、難しいのが、年末にこのタイムを出してしまうと、疲労が抜けきれないまま元旦の駅伝を迎えることになってしまう。まだ距離の短い区間もあるニューイヤー駅伝では対応も可能かもしれない。しかし、ハーフマラソン強の距離はごまかしがきかない。箱根駅伝ランナーはここで27分台を狙ってしまうと、箱根でピークを迎えることが難しい。そのため、八王子を走る学生ランナーはどっちつかずな印象があった。

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