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新しいMさんのこと。

「お話をしたいことがあって、織田フィールドにうかがっていいですか」
川内優輝のモノマネ芸人として知られるM高史さんからメールが届いた。
いつも必要以上にへりくだるMさんなのだが、文面のはしばしからただならぬ緊張感を感じた。
この日は学生スポーツ新聞11大学が集まって、本来なら箱根駅伝の期間中、大手町やコースで配りたかった号外を人々の邪魔にならないよう織田フィールドを貸し切って行うというイベントの日。みんな楽しみにしている日だけに、Mさんの妙に神妙な空気が気になった。
「せっかく織田フィールド貸し切ってるんだから、走りにやってきたら?」
と、返事をした。
最近、前触れもなく、突然坊主頭にしたくらいだからなにかあったのだろう。
たぶん、大事な話があるんだろうが、ついでに。
くらいの軽い気持ちで来ればいいと思ったからだ。

学生スポーツ新聞をもらうために集まった長蛇の列の向こうからMさんが現れた。
ちょっと離れたところで話を聞くことにした。
「これまでものまねアスリート芸人という肩書でやってきましたが
 それをやめることにしました」という。

Mさんが川内優輝のものまねアスリート芸人を始めたことで、同じようなスタイルの人たちが増えていった。最初のころは、Mさんが先輩として「こういうことに気をつけて」と、ある種、マニュアル的なことを伝えたり、これまで彼がつちかった人脈を紹介したりして、自分だけが売れるのではなく、「同じ志をもつ、みんなで盛り上げよう」としたのがMさんらしい。

しかし、近年、Mさんがケアできないところでも、いろんな人達が似たスタイルで活動するようになり、Mさんとは全く関係ないことがクレームとしてMさんに伝わるようになってきたことも。Mさんは「ご本人様」である川内優輝さんを気遣い、彼が現われるレースは避けて活動してきた。本人に迷惑がかかるような紛らわしい行動を避けてきたのだ。そのスタイルはポップライン萩原さんらにも受け継がれていった。

で、どうするの?
「芸人という看板をやめて、応援団でありたいと思いました。つきましては、応援団というコンセプトをいただいた西本さんに報告すべきかと」と。
今年の夏にMさんとホクレンディスタンスの会場移動のロングドライブ最中にずっと話しながら思ったのが、「Mさんは芸人というよりも、松岡修造さんのようなアスリート応援団なのではないか?」ということ。面白さから離れて、応援するということに絞ったほうがいいのではないか?たしかに、そのような話をした。

そうなのだ。Mさんという人は「とてもいい人ではあるが、おもしろおかしい人」ではないのだ。いや、面白いんだけど、面白さの質が違う。興味深い人なのだ。筆者は吉本興業出身。たくさんの芸人さんたちと接してきたのだが、Mさんのマインドは芸人らしくないのだ。そして「芸人」という名前があるがゆえに「なにかおかしいこと」をすることをどうしても、もとめられてしまう。今のMさんは宗教家にもよく似てる。「現状打破」と念仏を唱えながら、みんなを元気づけるという宗教だ。

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