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ペースメーカー

「選手は一度戻ってください」
と、審判からの声がかかったとき「ああ。終わった」と思った。
木南記念GP男子800m3組目のスタート前のこと。

春先から中距離選手たちに話を聞くたびに
どの選手も「木南で狙います」と合言葉のように最後に加えた。
木南記念はグランプリグレード1で
コンチネンタルツアーブロンズ扱いとなるレースで
ここで順位と記録を出せば高いポイントがつく。

雨が降ったこと、役者が揃わなかったことで記録がそれほど伸びなかった
男子1500mのレースを見届けたあと、TWOLAPS横田真人コーチは
「やっぱやるしかないかな」とつぶやいたあとアップに向かった。
GP800m3組目のペースメーカーとして走るのだ。

金栗記念1500m、兵庫リレーカーニバル1500m、
そして木南記念では本職であった800mをペースメーカーとして走る。
横田さんがペースメーカーとして依頼されるレースは
中距離選手にとって「外せない」レースである。

グランプリシリーズにはグレード1〜3まであるけれども、
横田真人がペースメークをするレースは特Aレースと、
勝手にランク付けしている。
レース前のムード作り、そして招集所での緊張感、
百戦錬磨の経験をもつからこそ、身を委ねることができる
圧倒的な安定感をもつペースメイク。

この前日、横田コーチは日体大記録会を回避して大阪に入った。
日体大で800m日本選手権参加標準1分49秒突破を狙っていたのだ。
しかし、関東は強風が吹き荒れ、タイムが出ないと判断した横田コーチは
日体大を走らず、脚を温存したまま木南記念に現れた。
木南記念では600mまでのペースメーカー。
日本記録更新ペースを期待されている。

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