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ひとりじゃない。

「ヒューガを応援してるのかい?一緒に応援していいかな」
振り向くと1500m決勝を走ったアメリカのジョシュ・トンプソンがいた。
「ヒューガとはバウワーマンで一緒にトレーニングしてたんだよ」

男子5000m予選。もっともトラックと客席が近くなる第三コーナー付近には、多くのトラックマニアたちが集まった。

レース直前まで練習パートナーとしてかわりばんこに遠藤日向が求めるハイスピードのインターバルをひっぱり続けた加藤淳、吉田圭太もここに集まった。第三コーナーは5000mのスタート位置からもっとも声援が届く場所。
「日向、お前はひとりじゃない」というメッセージを送りたかったからだ。

流しが終わり、スタートラインにならぶと隣には同じくバウワーマンに所属するウッディ・キンケイドが隣にたった。5000m12分台のランナー。キンケイドは遠藤の隣にくると背中を叩いて笑顔で声を交わした。

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こりゃ、いい。と思った。これまで世界大会で戦う日本人の大半は招集所からずっと海外選手とコミニケーションをとることもなく、傍からみても、かわいそうなくらい孤独であったからだ。極東の島国という地理条件もあるのだけれども、これまで海外で観る世界大会でなかなか日本人選手が結果を出せないのは、この孤独から来ているものだと感じていた。日本人の4人が一緒に行動する男子リレーの成績が良かったのも、そういうことだとも。パスの精度なんかよりも、ワイワイと話しする相手がいるだけで、普段どおりの力が発揮されそうな気がするのは、ぼくだけだろうか。

そういう意味で遠藤日向という選手が単身アメリカに渡って孤独と戦いつづけてきたひとつの収穫がスタートライン付近に集まった。普段どおりのちからが出せる環境が整ったと。

しかし、レースとは不運なもの。手の内もわかるキンケイドをターゲットにレースをすすめた遠藤日向であったが、こともあろうかキンケイドが3コーナーで大きく転倒。順位を大きく落とす。そして、キンケイドと近い距離で走っていた遠藤もそこで転倒にまきこまれてリズムを大きく崩した。キンケイドは全米選手権の10000mでも同じスタジアムの同じ場所で脚にトラブルが発生してレースを棄権している。なんと、運がないことか。さらに、その一瞬を見逃さなかったかのように、レースはそこで一気にうごきペースがあがった。その一瞬のペース変化に対応できた選手が後半の勝負に参加することができ、対応できなかった選手はそこで予選通過は難しくなった。

あの日向がついていけないなんて。。。
練習パートナーとして遠藤の凄さを知る加藤、吉田の二人がつぶやく。

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