タイムアウト② 青7番

ブザーの音が鳴り両チームの選手たちがベンチへ戻っていく。
選手たちは体中から汗が噴き出し、大きく肩で息をしている。

「いいぞ!よくやってる!ここまで順調そのものだ!」監督が戻ってくる選手たちに声を掛ける。
選手たちはベンチへと腰を下ろした。
「アキラ!お前の活躍のおかげだぞ!」
そう声を掛けられたのは青チームの7番の選手。

白チームの10番、エースと呼ばれる存在の活躍を阻止している。
この後の作戦について監督が話し始めた。声には勝者の余裕が混じっていた。
話を聞きながらアキラは別のことを考えていた。

まさかここまで当て勘が当たり続けるとは思わなかった。
当てが外れても仲間たちが上手いことカバー出来てるだけで、全然止められてる手応えはない。
監督は俺のおかげだなんて言ってくれたけど、ただの当て勘だってバレたら何言われるだろう。
はっきり言って白の10番めちゃくちゃ上手い。
フェイントに引っ掛かるのわかるから先に勘で動いてるけど、この先も勘が当たり続けるのか?
外れまくったらボコボコにやられるぞ……?

不安が少しだけ漏れ出ていたのだろう考え込んでいたら、チームメイトから声を掛けられた。
「自信もっていけよ、ここまで結構抑え込めてるんだから!」
アキラは自信が持てなかったが、自信のない発言は士気を下げかねない。
そう分かっているアキラは「あぁ!」と虚勢で答えた。

虚勢を張ってはみたがこの後どうしていいかわからない。
監督の余裕が混じったような声を聴いていると頭の中のもやがどんどん成長してくる。
勝っていない。試合は終わっていない。まだ、勝ってはいない。
焦りや不安がドンドン成長を続けているが、口にすることも憚られる。

不安を抱えながらベンチから立ち上がると、
「ぜってぇ!勝つぞ!」『おう!』と白チームから声が聞こえた。

青チームの監督および選手全員が白チームの方をみて確信した。
「この後白の10番は大活躍する」と

タイムアウトの時間が終わりを迎える間際、青チームの監督は焦りながら選手たちに声掛けをした。
さっきまでの通り青の10番を止めろと。

「アキラ!お前に任せたぞ!」アキラはコートに向かいながら監督から指示を受けた。
目の前のエース、不安な思考、監督やチームメイトたちからの期待。肩が落ちた気がする。

タイムアウトが終わりを迎え、試合が再開される。

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