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Dr.ヒロの心電図ワンポイント4

#とてワン 004 #ECG
何はともあれ次の心電図はどう診断しますか?

81歳,女性の心電図【とてワン004】

問題:81歳,女性の心電図診断として最も適切なものはどれか。

 a) 仮装脚ブロック(MBBB)
 b) 左脚ブロック(LBBB)
 c) 右脚ブロック(RBBB)
 d) いずれでもない(Others)


QRS幅がwide,V1誘導は「rS型」,V6は...あれ,「RS型」...?左脚かな,右脚かなぁ?そういう時は“イチエル”(I,aVL)を見れば良いはずだ!あ。あれ,aVLは「qR型」?どうしよう...

まず問題に関しては,
 a) 左脚ブロック(LBBB)
で良いと思います。V6誘導の形から右脚ブロックを選んだり,右脚でも左脚でもない“バッタモノ”として仮装~にした人もいたかもしれません。でもいずれも否。これは左脚ブロックと診断して良いと思います。
短時間でしたが,アンケートの様子を示します。

解答状況【とてワン004問題】

それでも,半分近い方が「左脚ブロック」を選択してくれていました。しかしながら波形としては非典型的であり,先に診断を述べておくと,

Dx: SR 60bpm, LAD(QRS-axis ー50°), atypical LBBB, prolonged PRi(1st deg AVB)

のようになるかと思います。ここでは非典型的(atypical)な左脚ブロックについて解説したいと思います。

皆さんは普段どのように「左脚ブロック」を診断していますか?
QRS幅:ワイド(≥120ms)かつ特徴的なV1,V6のQRS波形で診断する方が多いと思います。
多くの皆さんが参照しているであろう基準を示してみます(AHA 2009等,普段ここまで厳密にチェックしている人は少なそうですが)。


代表的な「左脚ブロック」の診断基準

今回の解説ポイントは以下の2点です。
 ◇変わったV6波形(右脚ブロックに似ている)
 ◇aVLにq波がある。

良く見ると書いてあるのですが,V5・V6誘導では時に「RS型」の波形を示すともあるようです。しかしながら,単純な右脚ブロックとはことは異なり,「R-peak time≥60msec」という基準も満たしています(左室が遅れて興奮することを反映する数値の一つと考えられ,逆にV1・2誘導では正常となっている)。

もう一つ,よく「LBBBでは側壁誘導でq/Q波が出ない」とされますが,aVL誘導だけ小さなQ波が出てもOKと明言されていますね。この特別ルールに関しても知っておくと良いでしょう。

以上を踏まえて,よく知られた典型的な波形ではないものの,左脚ブロックの波形であることには相違なく,「非典型的(な)左脚ブロック」(atypical LBBB[left bundle branch block])と呼ぶだけです。

脚ブロック波形として典型的かそうでないか――この話題は頻拍診断(SVT vs. VT)などにも使われるので押さえておきましょう。

まとめ:通常とは少し異なった「左脚ブロック」の波形が存在する(診断としては“atypical LBBB”と述べれば良い)


さいごに補足:
今回のような波形を「非特異的心室内伝導障害」と呼ぶ人もいるかもですね(Non-specific intraventricular conduction disturbance [IVCD])。「いずれでもない」を選んだ人の意向はコレかも?
もちろんそれも悪くないかもしれませんが,一応LBBBの定義として言及されているので,その流れで記載しました。


from えかげますたぁ|Dr.ヒロ @ekagemaster (on X/Twitter)

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