見出し画像

Dr.ヒロのおさらい心電図No.8

◇右冠動脈の復習してみよう!

▶X/Twitterに公開:2023/10/18
https://twitter.com/ekagemaster/status/1714408912152334459?s=20

右冠動脈のおおざっぱな理解【おさらい心電図No.8】

「下壁梗塞」の8~9割は右冠動脈(RCA)の閉塞により起こるとされています。微に入り細に入るような専門的な話は別にして,心電図を学ぶ上で基本的な解剖を知っておくことは重要です。

左図は心臓をほぼ正面から見たイメージです。ここでは,まず“エッジ”を意識して下さい。心尖方向から見た時の下縁に相当します。

右冠尖から起始,右房室間溝を下って,いよいよ“背面”(後側)の世界へ突入❗・・・という風な場所をアキュート・マージン(acute margin)と言います。日本語では,「鋭角(えいかく)部」または「鋭縁(えいえん)部」というそうです(この記載をボクはX/Twitterでミスったわけです)。

*X/Twitterでは「鈍縁(どんえん)部」と書いてしまったのは間違いです。

言い訳がましいですが,時間的な焦り,そして何より循環器医の大半は「Acute Margin」を日本語名で普段から意識してない・・・かな(笑)

そしてはじまり(起始部)からアキュート・マージン(日本語だとわかりにくいのであえてこう書きますね)までを二分して下さい。手前を近位部(proximal),後半が中間部(middle)になります。

心筋梗塞では,当然ながら近位部閉塞の方が病変として重症化しやすい傾向にあり,もちろん右冠動脈でも当てはまります。

近位部か――それとも“そっから先”か?
Prox(imal) or not prox (middle or distal)...It'a the problem !

このように考えておいて欲しいのですが,理由の一つでもありますが,近位部には右室枝(RV branches)が出ます。上図の右側でも近位/中間部の境界にフタマタの立派な枝が描かれています。右室梗塞を合併すると治療に難渋し,予後も不良というのはよく知られていると思います。

そんな右室枝を近位部のマーカーとして,アンギオ(血管造影)上は,メジャー(一番目立つ)右室枝までを近位部ととらえてもおおきな間違いはないと思います。

中間部のおわりはアキュート・マージンで(しつこいか),以後”逆Y字”のごとく後下行枝と後側壁枝に二分していくのが遠位部(distal)になります。


右冠動脈 Right coronary artery (RCA)の解剖

についてまとめました!

右冠動脈の走行とナンバリング

左が有名なAHA分類(1975)です。ボクも医学生,研修医のとき,「○番が…と格好よく言ってみたい!」と憧れた一人なわけです。でも今は,皆さん全員が循環器専門医になるわけでもなければ,覚えなくて良いのではと思っています。もちろん興味・余裕がある人はどうぞ。

 #1:近位部
 #2:中間部
 #3:遠位部(#4分岐まで)
 #4PD:後下行枝
 #4PL/AV:後側壁枝(または房室結節枝)

冠動脈の“番地”は,少なくとも(心筋梗塞の)心電図の世界では無関係です。下壁梗塞の場合でも,心電図所見から中間部と遠位部の区別は難しい(≒できない)ので,前述の通り“Prox or NOT-prox”的な理解で良いと思っています。

次に図の右側も見て下さい。これは冠動脈CTのSCCTガイドライン(2009)からの抜粋です。水平断面で見ると,右冠動脈が右室下壁そして後側壁(・後壁)を灌流する様子がきれいに描かれています。房室弁(三尖弁,僧帽弁)と右室・左室の存在をイメージしてみてね。


右冠動脈造影の基本

最後にオマケ。代表的な右冠動脈造影の様子を示します。症例は60代の女性で,最終診断は「たこつぼ型心筋症」となった方でした。

【右冠動脈造影】左=左前斜位像(LAO),右=右前斜位像(RAO)

赤二重マークまでが近位部ですかね。皆さんはもはや,近位部の右室枝(RV)もきちんと見抜くでしょう。

心臓のシルエットを想像し,鋭縁/角枝(AM)と呼ばれる分枝が“下辺縁”に平行に走る様子も右の造影でわかりやすいですね。

その他,“下壁枝”とも言うべき後下行枝(PDA:posterior discending artery)から櫛(くし)の歯状の細かい枝が出て下壁中隔が灌流される様子も映っています(右図)。このように冠動脈造影は多方向で観察することが非常に重要です。

近位部の右室枝以外はどうでしょう?
洞結節を含む心房枝とその前に円錐枝(Conal branch)という枝が出るんです。よく見るとこれも映ってます。円錐枝は右室流出路などを灌流します。さぁ,興味を持ったかたは,もう一度,解剖学の教科書を見直してみよう!


by えかげますたぁ|Dr.ヒロ|杉山裕章
 X/Twitter:https://twitter.com/ekagemaster
 note.com:https://note.com/ekagemaster_hiro
 List of My Works:https://note.com/ekagemaster_hiro/n/n3d55c7d6b22e

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?