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Dr.ヒロのおさらい心電図No.4

Q:波形な~んだ?

▶X/Twitterに公開:2023/9/30
https://x.com/ekagemaster/status/1707893081356501367?s=20

69歳,男性【おさらい心電図No.4】

QRS波形の「向き」(極性)が少しおかしい以外には異常所見のない心電図です。「向き」と言えば“ジク”,正確な表現では「(平均)QRS電気軸」〈mean QRS-axis (in the frontal plane)〉と呼ばれます。

QRSd電気軸をチェックする場合,I(0゚),II(+60゚),aVF(+90゚)の3つにご注目あれ。角度は,肢誘導(標準~,単極~)が乗っている前額断(面)で対応する方向になります。

正常(軸)では,I-II-aVFが順に“上-上-上”(すべて上向き=陽性)となりますが,今回の心電図では“上-上-下”とaVFだけ仲間外れになっています。

「下壁誘導」(いわゆるニ・サン・エフ)という呼称があるように,IIとaVFは普通は同じ向き(極性)となりますが,時にスプリットすることがあるんです。I:上向きの場合,基本的にはII:上向き,aVF:下向きというパターンしかなく(逆はない),このパターンは「軽度の左軸偏位」と呼びます。きちんと指摘できましたか?

その他,波形的にはどうでしょうか?
基本調律は(正常)洞調律・75bpm。もしかしたら,V1の「rSr'型」が気になった方もいるかもしれません。QRS幅は正常範囲で,いわゆる「室上稜パターン」(CSP:Crista supraventricularis pattern)という一種の正常亜型と見えなくもありません。


正解:「軽度の左軸偏位」“Mild” left(-ward) axis deviation

【診断方法】など
についてまとめました!

【診断基準ほか】軽度の左軸偏位

ちなみに,“軽度の”に対する英語表現は,AHA基準のmoderate(中等度),marked(高度)からボクが創作してみました。“slight”より“mild”の方が良いと思っていますが,皆さんはどう表記してますか?

数字としてはQRS電気軸が「ー30゜~0゜」に入るのも大事な特徴だとお思いますので,これも知っておきましょう。


オマケの参考資料です。AHA/ACCF/HRS Recommendations 2009からの抜粋です。

個人的には,色使いも含めて綺麗にまとめられていると思います(笑)
今回扱った「軽度の左軸偏位」(ー30゜~0゜)が正常範囲(Normal)に含まれていることに注目して下さい!

aVF:下向きを左軸偏位とした場合,通常は「0゜~ー90゜」(理解しやすいようにあえて逆に表現しています)ゾーンですが,II:上向きは「正常」と見なそう,というメッセージだと思います。

臨床的な意義としてはこれで良いと思いますが,心電図所見としては漏れなく指摘したいところですね。


by えかげますたぁ|Dr.ヒロ|杉山裕章
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