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Dr.ヒロのおさらい心電図No.6

Q:波形な~んだ?

▶X/Twitterに公開:2023/10/11
https://twitter.com/ekagemaster/status/1711871734750781780

58歳,男性【おさらい心電図No.6】

R-R間隔は整で心拍数は93bpm,極性は洞性P波のようですから,(やや速めの)洞調律ということになると思います。

何と言っても“ニサンエフ”(II,III,aVF),別名「下壁誘導」に“ホッソリかつノッポ”(≥2.5mm)な尖鋭P波あり。これは「右房拡大」(right atrial enlargement)ないし正式には「右房異常」(right atrial abnormality)と診断できます。普通は「一番大きなP波」で条件を満たすか調べれば良いと思います。

本当に拡大があるかは心エコーをすれば判明しますが,実際にはハズレも多いです。電気的異常(伝導障害)を反映することもあるため,「右房異常」という言い方がより適切なのでしょう。しかし,これを“RAA”と略すると右心耳とややこしいため,表記に悩みます(「右房拡大」はRAEと略します)。

もともと心電図はサイズなど構造異常を検出するのには適していませんよね?・・・ご存知の通り基本は「不整脈」の検査ですから。

もし右心系負荷を疑うのなら,傍証を探します。IはP, QRS, Tと揃って小さく(lead I sign),よく見るとIが“トントン”(r≒s)なので「QRS電気軸90゜」も重要ですね。その目でエコー結果を考えることが重要です。


正解:右房拡大 Right atrial enlargement

【診断基準】
についてまとめました!

【診断基準ほか】右房拡大(右房異常)

“肺性P”(P pulmonale)という名前がとくに有名ですね。2.5という数字にコダワるよりは,まずは“見た目”が重要です。

頻度は下がりますが,右前胸部誘導(V1またはV2)でもツンッと立ったP波が見られることがあります。実例を一つお示ししておきましょう。ちなみに,この例では,II,III,aVFのP波は“ヒョロ・ノッポ”ですが,いずれも2.5mm基準には該当しません。

【診断基準ほか】V1から診断される右房異常

胸部誘導の診断基準上はAHA文献に従い「1.5mm」を採用していますが,個人的には「2mm」で区切っています。これを満たすとき“右房性P(波)”というアダ名もあるようですが,ボクはあまり使いません。

以上をイラストでまとめておきましょう。具体的な数字もさることながら,見た目・イメージが大切と強調しておきます。

右房異常(拡大)のイメージ

ところで,最後にプチ情報。国内の代表的なメーカーの心電計に搭載されている自動診断では,

「II,III,aVF,V1,V2いずれかのP波高≥2.5mm」

で「右房拡大」と表示するものが多いようです。

AHA recommendation/statementに従った「右房異常」と表記するメーカーは今のところ出会ったことがありません。皆さんは普段どうしてますか?


by えかげますたぁ|Dr.ヒロ|杉山裕章
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