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ジミー・ペイジはギターが上手いか下手か

 ジミー・ペイジは果たしてギターが上手いのか、ちょいちょい目にする話題だ。確かに下手だとする理由は挙げようと思えば挙げれる。「Heartbreaker」のギターソロが一番揚げ足を取りやすいので、まずは揚げ足を取ってみよう。岡本太郎の揚げ足すら取る男だ、私は。

ジミー・ペイジの粗

 簡単に言うとあのソロではジミー・ペイジは弦を鳴らす時に弦をしっかり押さえられておらず、右手と左手のタイミングがバラバラになっている。左手の指を速く動かして、右手もとりあえず速くピッキング、という事をやると「Heartbreaker」のギターソロの速弾きのようにペタペタして途切れ途切れな感じになってしまうのだ。
 メタリカのカーク・ハメットもああいう弾き方をするところがあるが、彼の場合は粗が見えにくい。その理由はギターの歪み方の違いで演奏技術的なものではない。ちゃんと押さえれてなかったり右手と左手のタイミングがズレていても歪み方によっては途切れないように誤魔化してくれるのだ。しかし、ジミー・ペイジの場合はそこまで歪ませていなかったのか、それとも歪みの種類の問題なのか(多分後者かな)右手と左手のズレがシビアに出てしまったのだ。
 ちなみにこの「なんちゃって速弾き」は疾走感を出したい時に有効だと思うので私は嫌いじゃない。アルフィーのたかみーもやってたね。なんにせよ、ジミー・ペイジの腕に疑問視する意見の主な着眼点はここにある。

「精度」ありきの「速さ」の時代

 今の時代のギタリスト達のテクニックの高さも相まって彼の背中が小さく見えるという事もあるかもしれない。最近の人はとても速く正確なプレイを見せる人が多い。そして、「精度」という点は昔より重視されている。「精度」あっての「速さ」だ。メトロノームが一定のリズムを刻み、如何にしてそこに正確に埋め込むか、という視点からそういう方向に向かったのではないだろうか。また、いいドラマーは勿論あらゆるパートに正確さの求められる時代になっている。音楽の作り方がデジタルになって来て、それに対応する技術が求められている。個人的にはちょっと粗めの演奏に焚き付けられるものを感じるが。
 そんな「精度」と「速さ」が重視される風潮が強くなるとジミー・ペイジはひとたまりもない。じゃあジミー・ペイジってやっぱ下手なんだと思いましたか。否。彼の最大の魅力はそこじゃない。ここで、作曲能力とか別の話で彼のメンツを立てるつもりもない。あくまで「ギターが上手いのかどうか」の話だ。

ジミー・ペイジの伝家の宝刀

 ここで個人的な経験談に入る。レッド・ツェッペリンの、つまりジミー・ペイジのギターソロをコピーした時の話だ。
 正直弾いていてそこまで難しくはない。脱初心者から中級者くらいでコピーできるレベルの難易度だ。しかし、ここで致命的な違いに気付く。自分のギターの音にはジミー・ペイジ程の迫力がない。
 これは機材のせいではない。ミスなく弾いてるが、何か違う。完コピなのに本家のようなカッコよさがない。これは優れているギタリストのコピーをしたときにありがちな現象だ。例えば、「Stairway to heaven」のソロ、一発目のチョーキングで差が歴然。チョップ奏法とか小手先の話じゃない。圧倒的に足りてなかったのは「弦を鳴らす技術」だった。
 弦を鳴らすのにはある程度パワーがいると思う。ただ力だけで弾けばいいもんじゃないのが難しい。ピックで如何にして弦に力強い振動を、そしてギターから迫力ある音を生み出すか。そういう技術だ。

鳴らす技術と手の大きさ


 この辺はちょっと手の大きさとかも関係あるのかなと思うところである。持って生まれた握力とか。スポーツカーが100キロで走るのと軽自動車が100キロで走るのとでは速さは同じでも質が違う。それは余裕の有無だ。
 速弾きもBPM180が限界の人が180で弾くのと200が限界の人が180で弾くのでは余裕がある分後者の方が音が綺麗に聴こえる。そんなイメージ。
 じゃあ「手が大きくない人は無理なのか」と問われたら「そうでもない」と答える。手が大きい人は自然と迫力ある音を出したりするけど(もちろん練習はしている)、手が大きくなくても意識すれば変えれるということを強調しておきたい。
 実際ジミー・ペイジがこの技術を身に着けたのはブルース的なアプローチをしていたからだろう。チョーキングビブラートとかやっていると結構鍛えられます。あとハンマリングとプリングで指の速さは鍛えられます。

話をまとめにかかる

 鳴らすのが上手いギタリストといえば他には、レイヴォーンやイングヴェイが分かりやすい。あと最近の人でもやっぱり一線級の人は速さと精度だけではない。
 そして、ジミー・ペイジ。彼のギターの魅力は「鳴らす技術」によるものだ。そこに気付いてから自分自身意識するようになったし、実際意識して練習してから変わった。ジミー・ペイジが教えてくれたようなものだ。
 ただし、ちゃんと押さえれていないときはどんなに上手くピッキングしようが鳴らないものは鳴らない。それが悪く出ると下手に聴こえるのだ。ジミー・ペイジの泣き所。黄金の右手はタダ働き。

結論


 ジミー・ペイジは「弦を押さえるのは下手だが、弦を鳴らすのは上手い」というのが私の結論だ。おこがましいがジミー・ペイジを愛して止まない方々が枕を高くして眠れる夜を祈る。


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