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水たまりの世界

今日の雨上がり
わたしは冷たい水の中に
自分がいるのを見つけた。
水面のわたしは笑っていた。
さっきから雨に濡れて
嫌な顔してるのに
笑顔
なんで…
なんでなんだろう?

もしかして違う世界があったりして?
水たまりの世界…
面白そうじゃん。
そう思い、
手を伸ばし
水に触れてみた。
その手を吸い込むように指、手、腕と
身体ごと
水たまりの中へと入っていった
『わーー。』
  
ストン…
『もぉ〜水たまりの上に着地なのー。
少し濡れたけど、まっいいか。』
水たまりの世界に入ってしまったわたしは、
ブルブルした後
周りを見渡した。
『へーここが水たまりの世界かぁ』
そこは空気が澄みわたっているけれど
どことなく寂しさを感じた。
とりあえず、猫はいなそうだし、
人を探してみることにした。

すこし歩くと子供たちを見つけた。
子供たちは、おもちゃの取り合いしているようすなのに、笑顔。
人間の言葉はわからないけれど
それを止めに入った親も笑っていた。
なんか変な世界…
そう思いながら、
また、しばらく歩いた。

次は、白ネコとぶちネコ見つけた。
やはり毛を立てて、餌の取り合いをしているのに
朗らかな優しい顔…

ネコたちに聞いてみた。
この世界は、なんでみんな笑っているの?

そうしたら、白ネコが
『この世界は、笑顔しかない世界、
誰もがニコニコ、喧嘩してもニコニコ
みんながどんな時も優しい笑顔でいいでしょ?』って答えた。

私は『感情はないわけ?喧嘩して笑えるの?
笑顔だけなんて…辛くても悲しくても笑えるの?気持ち悪い。
笑顔の世界って本当には笑ってないじゃん。
笑顔は心から楽しいから笑えるんだよ。』
白ネコは、ポカンと口を開いていた。
なんだか、わからない様子だった。

『不思議な世界に来てしまったな…』
とても怖くなり、
わたしは最初に来た時の水たまりを探した。
必死で探した。
しかし、見つからなかった。

いつもケンカしてしまう恋人や言い合う友達…
怒られてばかりのお母さんやお父さん
会いたいよー。わーん。
泣いて泣いて
今までにないくらい泣いた。
そしたら、自分のまわり全体が水たまりになり
すとんと…
吸い込まれた。

また、水たまりをみている自分がいた。
映り込んだ自分は、目を腫らしたホッとした
顔をしていた。
『やっと戻れた。あー、良かった!』
いつもは、
笑ってるから楽しくてスキ
怒ってるからキライ
見た感じで判断してることもあったけれど
そうじゃない。
その感情のらうらには
色々な気持ちが潜んでること。
泣いたり笑ったり怒ったり
感情を表したり
言ったり
気持ちのままが好き。
自分のままの
この世界が好き。

雨上がりの水たまりには優しい光と共に
心からの笑顔が映っていた。

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