如何に早くコンストラクトを作るか

多くの実験はコンスト作りから始まります。
でもここでつまずいてしまうと、後の実験が何一つ前に進まない。
スピードが大切なのは言わずもがな、ですね。

最近の分子生物学では、制限酵素はほぼ使われません。
制限酵素の組み合わせで使用するべきバッファーを
カタログのappendixの表から調べていた時代が懐かしい・・・。

1日目:プライマー設計・注文

さて、とりあえず、新しくコンストを作るぞ!となったら
まずはプライマーを注文しましょう。1にも2にもプライマー。
設計のコツは流儀色々ありますが、

1)Tm値を60℃あたりに揃える
2)極端なGC含量にしない
3)長さは20~40bpほどに
4)Hisタグのような繰り返し配列は避ける

Tm値は揃えてしまえば、
PCRの条件検討をほぼしなくて良いので楽チンです。
当日の間にプライマーだけは注文してしまいましょう。

cDNAなどから遺伝子を釣って来る時は、長さや元々の発現量によって
すごく大変な事もあるので、そこそこ覚悟をしておくように。

金に糸目をつけなければ、合成してもらうのも手です。
人生捗ります。

2日目:PCR、DpnI処理

プライマーが届いたら早速PCRをかけましょう。
終わったらゲル泳動でバンドチェックをして、
残りの全量をDpnI処理しましょう。
37℃ O/Nがおすすめですが、5時間とかでも良いです。

3日目:精製、大腸菌へTF

DpnIが終わったPCR液からDNAを抽出して、
SLiCEしたり、目的に合わせてライゲーションしたら、
大腸菌にトラフォしましょう。37℃ O/N。

4日目:コロニーチェック、ミニプレ培養

5日目:ミニプレップ、シーケンスへ


これで一週間かかりますね。
でももう少し急ぐにはどうしたら良いでしょうか。

1日目:プライマー設計、注文
2日目:PCR、DpnI処理、精製、大腸菌へTF
3日目:コロニーチェック、ミニプレ培養、ミニプレップ、シーケンスへ

これなら3日で出来ます。

ポイントは、2、3日目の実験をとにかく早い時間から始める事。

DpnI処理5時間はもちろんのこと、
ミニプレ培養は8時間もやれば基本的に十分です。
シーケンスの締め切りは午後のことが多いので、
逆算して培養開始してください。


TIPS1:顕微鏡でコロニーのぞいてつつくのもあり

基本的に新しく作ったコンストをトラフォした場合、
コロニーが出来るのは翌日以降ですが、
既に出来ているプラスミドをトラフォする場合は、
5〜8時間ぐらいでも、双眼実体顕微鏡で覗けば
コロニーが見えることがあります。

顕微鏡でのぞいて、つついて、ミニプレに持ち込みましょう。

TIPS2:シーケンス結果を待っている間に先に進めよう

DpnI処理をしっかりするようになってから、
外れコロニーの出現頻度は激減しました。
そこで、続けてタンパク質発現を行いたい場合には、
シーケンス結果を待たずに、発現用大腸菌にトラフォして、
発現準備をしてしまうのがオススメです。

上で言う3日目に、候補2〜4つぐらい、そのまま発現用大腸菌へトラフォ、
LBプレートと、
ゴリ押しですが、トラフォ液をLBに投入して前培養も同時に開始します。
翌朝にはシーケンス結果が出て来るので、
アタリのプラスミド分だけ先に進めて本培養に持ち込みましょう。
(トラフォ液を投入した前培養はミスる事もあるので、
 LBプレートへの塗布も忘れずに、失敗しても遅れはとりません)
早ければ4日目には菌体が回収出来ますね。

シーケンス結果を待っていると、
4日目に発現用大腸菌へトラフォ、
5日目にプレートから前培養、
6日目に本培養、となるので、

時短法でやれば、更に2日間は節約出来ます。

コンスト作製から考えると、計4日間の節約。
余った時間はあなたの自由です。

休暇を取っても良いし、次の実験を開始しても良い。
この1日、1日の積み重ねが、研究をしながら、
自分の時間を確保するコツです。


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