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ただの「デジタル・トランスフォーメーション」では負けである。

 米国では、オリンピック競技を観るのに、ストリーミング動画が利用されているという(https://news.yahoo.co.jp/articles/6fefa3c36057cc2cd69a41ba34a92872a2cfaf81)。日本では、あまりストリーミング動画では中継されていないようである。やっているのは、「見逃し配信」だろう。なぜ、米国では、ストリーミング配信が利用されて、日本では、あまり利用されないのか。それは、人口の規模の問題だろう。

 ストリーミング配信の一般的な1人当たりの費用は、1時間当たり1円である。米国で人口の20%の6000万人が見れば、その1時間の中継は、6000万円の売り上げとなる。これなら、オリンピックの競技の放映権を買えそうである。しかし、日本で、ストリーミング動画は、人口の20%が観ても2000万人だろう。2000万円だ。これでは、放映権を買いにくい。こういうわけだから、日本では、オリンピック競技のストリーミング配信がなされないということだ。中国で、人口の20%が観ても、2億人だから、2億円。だから、中国でもストリーミング配信ができるだろう。

 これは、ITサービス、つまり、SNSやウェブベースドアプリケーションにも言える。ビジネス用語では、「スケール」の問題である。つまり、顧客が多い方が、より安く、より高機能なサービスを展開できるわけだ。米国の人口は3億人程度だが、他の国の英語が使える人に向けてもサーブされる。その数は10億人を超えるだろう。だから、10億円の費用で映画を作っても、十分に元が取れる。中国人もやはり、10億人を超える顧客を持っている(中国国内にいる。)。だから、10億円を使って映画が撮れる。だが残念ながら、日本人は、1億円以上の映画は、ここでの単価を増やさずには撮れない。

 要するに、日本人だけを相手にする日本のITサービスは、高いし、質が良くなくなるのである。これで、国際競争をやれば、必ず負けるだろう。「デジタル・トランスフォーメーション」をしようなどという人がいる。要するに、デジタル化を進めようということだ。しかし、上に述べたように、それで競争すれば、日本人は、だいたい負ける。それなら、日本でそういうサービスを開発しなくて良いのではないかとなる。そのうち、その会社が買収されたり、なくなってしまうからだ。

 今、米国と中国は、どちらが標準を取れるか、より顧客を集められるかで競っている。その2者には日本は及ぼない。日本人は、そのどちらかを選ぶ方法もあるし、高くて、質が劣る日本のサービスを使ってもよい。しかし、できれば、10億人の顧客に向けてサービスできる、グローバルIT企業がでてきてほしいと思う。ただの「デジタル・トランスフォーメーション」では負けである。

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